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作家を志望する人はいない

作者: ヤナギ
掲載日:2026/06/25

「部室、部室」

呟きながら僕は部室へ向かう。

早歩き、なぜなら廊下だから。


「さよなら、先生」

と挨拶をし、また落胆。

この先生も僕の挨拶を返してくれなかった。てか、目すら合わしてくれなかった。


ぼっちの宿命、この中学校に入り約3年、『あの幼なじみ』しか返してくれない。

生徒に挨拶はしない、多分したことないと思う。なんとなくしない。


「いいもんねーだ」


そして、着く部室。

ドアは開いている。


「こんにちは」

「うん、こんにちは。

2人きりの文芸部をはじめよう」

笑顔で幼なじみの生徒会長は返してくれる。

だから、僕も笑顔になり、そしてホッとする。




「うーん。

作家になりたい、なれてないまま夏休みかー」

「そうだね、あと何日か経ったら夏休みだね。中学校生活最後の夏休み」

僕は机にうなだれる。隣に座る幼なじみでもあり会長でもある少女、ユウさんはうなずく。本から目を離さないまま。


「夏休みも部活したいなー」

「面倒臭いなぁ」

「だって、作家になってないじゃん、僕」

「それはキミの都合だろ? 私は作家目指してないから」

「冷たいなあ」

「そんなになりたいの? 作家に」

「うん。理由は…」

思い出せない。

「何かあるよ、とにかく僕は作家になりたいんだよ、作家に」


絶対突っ込まれるだろう。

でも、全く突っ込まれない。

まあ、いいんだけど。突っ込まれなかった、それだけだろ?


「夏休みも部室で部活」

ようやくこちらに顔を向け、

「そもそも、2人だけなんだけど。同好会じゃない?」

「部活は部活だよ。少ないんだったら人数増やしてよ、会長だろ?」

「それは、どうだろうね。うん、どうだろう」

どうだろう、と何かを考える。


放課後、2人きりの部室。

セミもたくさん鳴く、田舎の夏。

緩く、今日も本を読んだり書いたりした。


そして、下校のチャイムが鳴る。




「…帰るか」

口にし、私は本を閉じる。


『僕、中学生になったら作家になる! 中学校を卒業するまでに作家になる! 理由はね…』


『なーんだ、こんな所で1人きり読書して。

じゃあ、僕と2人きりで部活しよ! 書いたり読んだりする部活!』


中学生になり、私が気付いたこと。


放課後にだけ姿を見せる『あの無邪気な死人』は、親友の私にしか見えない。


中学校を卒業すると成仏するだろう。

私は、それまで、緩く部活できたらいいな。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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