作家を志望する人はいない
「部室、部室」
呟きながら僕は部室へ向かう。
早歩き、なぜなら廊下だから。
「さよなら、先生」
と挨拶をし、また落胆。
この先生も僕の挨拶を返してくれなかった。てか、目すら合わしてくれなかった。
ぼっちの宿命、この中学校に入り約3年、『あの幼なじみ』しか返してくれない。
生徒に挨拶はしない、多分したことないと思う。なんとなくしない。
「いいもんねーだ」
そして、着く部室。
ドアは開いている。
「こんにちは」
「うん、こんにちは。
2人きりの文芸部をはじめよう」
笑顔で幼なじみの生徒会長は返してくれる。
だから、僕も笑顔になり、そしてホッとする。
「うーん。
作家になりたい、なれてないまま夏休みかー」
「そうだね、あと何日か経ったら夏休みだね。中学校生活最後の夏休み」
僕は机にうなだれる。隣に座る幼なじみでもあり会長でもある少女、ユウさんはうなずく。本から目を離さないまま。
「夏休みも部活したいなー」
「面倒臭いなぁ」
「だって、作家になってないじゃん、僕」
「それはキミの都合だろ? 私は作家目指してないから」
「冷たいなあ」
「そんなになりたいの? 作家に」
「うん。理由は…」
思い出せない。
「何かあるよ、とにかく僕は作家になりたいんだよ、作家に」
絶対突っ込まれるだろう。
でも、全く突っ込まれない。
まあ、いいんだけど。突っ込まれなかった、それだけだろ?
「夏休みも部室で部活」
ようやくこちらに顔を向け、
「そもそも、2人だけなんだけど。同好会じゃない?」
「部活は部活だよ。少ないんだったら人数増やしてよ、会長だろ?」
「それは、どうだろうね。うん、どうだろう」
どうだろう、と何かを考える。
放課後、2人きりの部室。
セミもたくさん鳴く、田舎の夏。
緩く、今日も本を読んだり書いたりした。
そして、下校のチャイムが鳴る。
「…帰るか」
口にし、私は本を閉じる。
『僕、中学生になったら作家になる! 中学校を卒業するまでに作家になる! 理由はね…』
『なーんだ、こんな所で1人きり読書して。
じゃあ、僕と2人きりで部活しよ! 書いたり読んだりする部活!』
中学生になり、私が気付いたこと。
放課後にだけ姿を見せる『あの無邪気な死人』は、親友の私にしか見えない。
中学校を卒業すると成仏するだろう。
私は、それまで、緩く部活できたらいいな。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




