顔の可愛さで戦闘力が決まる世界。可愛い男の娘が最強じゃね?
その世界では、戦闘力は剣でも魔法でもなく――「顔面値」で決まっていた。
人々はそれをこう呼ぶ。
“フェイス・コンバット・システム”
生まれ持った顔立ち、表情の魅力、仕草の愛らしさ、それらがそのまま“攻撃力”と“防御力”になる世界。
そして戦場では、こういう現象が起きる。
・可愛い者ほど相手の戦意を削ぐ
・整いすぎた美貌は精神耐性すら破壊する
・逆に「怖い顔」は威圧力として防御に転用される
つまり、この世界では「可愛い=強い」。
そんな世界に、一人の少年が現れる。
小柄で、整った顔立ち。中性的で、どこか儚い雰囲気。
戦場に立った瞬間、敵軍の前線に異変が起きた。
「……なんだあれ」 「見てはいけない気がする」 「かわいい……いや、集中できない……!」
敵兵の戦意ゲージが、音もなく崩壊していく。
彼の名はまだ知られていない。
ただ戦場ではこう呼ばれ始める。
――“魅了の災厄”
一方、軍司令部では分析が行われていた。
「あの少年のフェイス値は異常だ」 「通常のSランクを超えている」 「戦略兵器級だぞ」
しかし問題はもう一つあった。
その少年本人は、自覚がなかった。
「え、僕そんなに強いの?」
ただ普通に立っているだけで、周囲の兵士が次々と膝をつく。
敵味方関係なく士気が崩れるため、戦場そのものが成立しない。
そしてある日、ついに最悪の事態が起きる。
最強国家の最終兵器、“顔面災害級将軍”が出撃してきたのだ。
その男が一歩前に出るだけで、大地が震える。
「これが……戦争か」
彼がそう呟いた瞬間――
戦場の空気が静止した。
なぜなら、その将軍は見た目だけで“敵軍の士気を完全に消し飛ばすレベルの美形”だったからだ。
しかし。
少年は一歩も引かない。
風が吹く。
視線が交わる。
その瞬間――
両軍全員の頭の中に同じ結論が浮かんだ。
「……これ、戦争してる場合じゃないのでは?」
結果、その戦場は史上最も平和な結末を迎える。
戦いは起きなかった。
起きたのはただ一つ。
「顔面値の高すぎる者同士による、無言の理解」
そしてその世界では、こう言われるようになる。
「最強とは、戦って勝つ者ではない。
戦わずに終わらせてしまう者だ」と。




