変身ヒーローの主人公は可愛い男の娘。小説を書いて下さい!
朝の通学路は、いつも通り退屈だった。
主人公・ユウは、制服のリボンを少しだけ整えながら歩いていた。柔らかな髪と中性的な顔立ちは、よく「可愛い」と言われるけれど、本人にとってはただの“自分の形”でしかない。
特別になりたいわけじゃない。
目立ちたいわけでもない。
ただ、普通に今日を終えられればそれでいい――そう思っていた。
その日までは。
放課後、ユウはいつもの帰り道を外れ、遠回りしていた。
すると、誰も使わなくなった古い神社の裏で、それを見つけた。
黒い箱。
金属でも木でもない、不思議な質感。
「……なんだこれ」
触れた瞬間、箱が開いた。
中にあったのは、腕輪のような装置。
そして、声がした。
『適合者、確認』
「え?」
誰もいないはずの場所で、声ははっきりと響いた。
『変身システム、起動可能』
ユウは思わず腕輪を落としそうになった。
「ちょ、ちょっと待って……何それ」
しかし次の瞬間、遠くから地鳴りのような音がした。
空気が歪む。
神社の鳥居の向こうに、“それ”が現れた。
人間ではない。
影と金属が混ざったような異形。
「……また出たか、適合者」
低い声が響く。
ユウは息を呑んだ。
逃げなきゃいけない。
そう思ったのに、足が動かない。
『装着してください』
再び声。
腕輪が淡く光る。
「……冗談でしょ」
そう呟きながらも、ユウはそれを手首にはめてしまっていた。
カチリ、と音が鳴る。
世界が一瞬だけ静止する。
そして――光。
「っ……!」
視界が白に染まる。
身体が変わる感覚ではない。
“重ねられる”感覚。
もう一つの自分が、上から重なっていく。
光が収まったとき、そこに立っていたのは――変身したユウだった。
流れるような装甲。
柔らかなシルエットを残したまま、それでも確かな戦闘用の姿。
「……これが、変身……?」
自分の声が少し響いている。
異形が一歩踏み出した。
戦いは、もう始まっている。
ユウは反射的に構えた。
戦い方なんて知らない。
でも、身体が“分かっている”ような気がした。
一歩。
もう一歩。
踏み出すたびに、恐怖よりも別の感覚が勝っていく。
「う、わ……!」
攻撃が来る。
避ける。
次は反撃。
気づけば、身体が勝手に動いていた。
「僕、こんなこと……できるの?」
戸惑いながらも、拳を握る。
そして気づく。
怖いのに、逃げたいのに――
それでも、前に出ている自分がいる。
「……だったら!」
ユウは駆けた。
変身した身体は、軽く、速く、強い。
一撃。
二撃。
異形がひるむ。
その瞬間、ユウの中で何かが繋がった。
――これは力だ。
守るための力。
倒すためじゃなく、“終わらせるための力”。
「もう、やめて!」
渾身の一撃。
光が弾け、異形が崩れ落ちる。
静寂。
変身が解けると、ユウはその場に座り込んだ。
息が荒い。
手が震えている。
でも――立っていた。
確かに、自分の足で。
「……なんなんだよ、これ」
空を見上げる。
いつもの夕焼け。
でも、もう同じ世界には見えない。
遠くで、何かがまた動き出す気配がする。
ユウはゆっくりと手首を見る。
そこにはまだ、あの腕輪があった。
『次の適合者としての行動を待機中』
小さく光るそれを見つめながら、ユウは小さく息を吐いた。
「……普通の生活、無理そうだな」
少しだけ苦笑する。
でも、その目はもう逸らしていなかった。
変身ヒーローとしての物語は、静かに始まったばかりだった。




