【リコッタの壁画/アンプリファイアの石像】
リコッタの壁画/アンプリファイアの石像
★
【まえがたり】
魔女のリコッタ・ボロネーゼは当時の法都において比類なき美貌の持ち主であった。
法都領内の貴族や騎士のみならず、近隣諸国の王族たちも、誰もが競い合うようにリコッタに恋を申し入れた。だが、彼女は勲高く誉れある男たちの、誰からの恋も受け取らなかった。既に恋を許した男が居たからだ。
リコッタの恋を得た男は、その名をアンプリファイア・トランヂスタといった。
アンプリファイアは王族でも貴族でもない。さりとて庶民でもない。かれは、万人から蔑まれる身分の機械工であった。
リコッタとアンプリファイアの恋は誰にも見咎められることなく、路地裏に慎ましく咲く野ばらのように、小さくも豊かに育まれていった。
しかし、リコッタとアンプリファイアの平穏な恋は長く続かなかった。あまりにも突然に踏みにじられることになる。
風下から野兎にひっそりと忍び寄る狐の如く、リコッタの弱味を握らんと、彼女を粛々と付け狙うものがいたのだ。その者は魔女のハイウィンドウといい、彼女はリコッタの美しさに妬みを抱いていた。
リコッタとアンプリファイアの秘密を知り得たハイウィンドゥは、リコッタを亡き者とするために、高額の報酬と引き換えに、2人の恋を法都の伯爵アルマイトに告白した。
アルマイトは幾度となくリコッタに恋を申し入れ、しかしリコッタから恋の許しを得られぬ貴族のひとりであった。
悪魔の囁きは、思惑通りに、アルマイトを激怒させた。かれの怒りはアンプリファイアのみならず、リコッタにも向けられた。
アルマイトはただちに2人に追っ手を飛ばした。アンプリファイアを亡き者にし、そしてアンプリファイアに取って代わり、リコッタの恋を手に入れようと画策した。
リコッタとアンプリファイアは執拗に追いくるアルマイトの嫉妬の刃を、友人たちの助けを得ながら紙一重にかわし続け、各地を転々と、からがらに逃げおおせた。
だがそれも、長く続くことはなかった。
遂に追い詰められたリコッタとアンプリファイアは、法都郊外の棄てられた教会に逃げ込んだ。教会には1つのろうそくの明かりもなく、空には月の姿もなかった。
冷たく闇深い礼拝堂の、朽ち果てた祭壇のそばで、リコッタとアンプリファイアはアルマイトの率いる数十の兵によって、無慈悲に取り囲まれるのであった。
【了】
★
アルマイトの配下たちが手に持つ探照灯は、闇の中から2人の男女の姿を、のっぺりと浮かび上がらせる。
壁を背にして怯えた姿のリコッタと、まばゆい光から彼女をかばうように立ちはだかるアンプリファイアの姿。
2人はアルマイトの配下たちによって、逃げ場なく包囲されている。
アルマイトの配下たち各々は、抜身の刃物を握りしめ、探照灯の光でギラギラと輝く切っ先を、2人の心臓に目掛けている。獰猛な肉食獣が、追い詰めた獲物に飛びかかる直前の目つきと同義の、容赦のないまばゆさである。
アンプリファイア
「(目の眩む探照灯の光を、額へと掲げた右腕で遮る。左腕でリコッタの身を自分の背後へと押しやり、彼女を守る。)
くっ、これまでか……!」
リコッタ
「(恐怖で小刻みに震える体で、アンプリファイアの背中をひしと抱きしめ、離さない。)
アンプリファイア! 貴方だけならば、私の魔法でここからずっと遠くへ逃がすことができる。わたしに構わず、貴方だけでも」
アンプリファイア
「(リコッタの言葉に首を横に振る。)
馬鹿な! 例えこの世のどこへ逃げおおせたとしても、君が傍にいなければ、僕の心は抜け殻と同じ。生きている意味はない」
リコッタ
「(恋人の言葉に胸を打たれて目を見開く。が、やるせなく開いた小さな唇から、憂いを含む溜息を吐き出す。)
ああ、アンプリファイア。けれど」
アルマイト
「(白い手袋をはめた両手で、くぐもった拍手を打ち鳴らしながら、配下の脇をすり抜け、追い詰めた2人の前に踊り出る。2人から10メートルほどまで近づいて立ち止まり、腰に手を当て、上体を乗り出し気味に。)
はいはいはーい。2人ともぅ、だいぶ手間を掛けさせてくれたようだが、これでお仕舞い。もう逃がしませぇん。
ぅリコッタァ! 俺はすっごく頭にきてる。君が、この俺の申し出をずっと拒みながら、その隣のクソみたいな男と、俺の知らない所でキャッキャウフフって乳繰り合ってたことにだっ! 俺は、傷ついた! すっごく傷ついたっ! 爪の先に小汚い機械くずのつまった、廃油まみれの茶色い指が、君の白い体をベタベタまさぐっていたかと思うと! ハッ! ヘドが出る! ヘドが出るよ! 豚の脂の塊を胃に詰め込まれた気分だ! 胸が悪い、最悪の気分だ! ……お、おぅ。うぇ、おえっぷ」
アンプリファイア
「(熊に挑む猟犬の勇敢さで、アルマイトに歯を剥き出す。)
黙れ、アルマイト! 貴族の皮をかぶった悪魔め!」
アルマイト
「(両手を胸に当て、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をつくる。配下の者たちに振り返りながら)
おおぅ。悪魔? この俺が? おっ、おう?」
アルマイトの配下
(口々に「とんでもない!」といったような驚きの声を上げながら、アルマイトに対して首を横に振ってみせる。)
アルマイト
「(突如激高する。唇の端から唾泡の白い汚れを吐き散らしながら。)
悪魔はテメェだ、アンプリファイア! 腐れ機械工ふぜいが自分の身の程もわきまえず、魔女に恋をうそぶいて、たぶらかしやがって! お前は何も考えない家畜みてぇに! 汚物を垂らしながら! くっせぇ泥にまみれてネジや歯車をほじり出す繰り返しを! 一生! 一生、死ぬまでやってりゃいいんだよォ! 無垢なリコッタの魔女という立場を利用して、のし上がろうだなんて企てやがって! 汚らわしいぞッ!」
アンプリファイア
「(直前のアルマイトの台詞を塗りつぶすような、ほとんど怒号といった声量で。)
ふざけるな! 俺の恋を侮辱するなッ! 貴様とは違う! 俺を貴様のような下衆と同列に語るな! 俺は、リコッタを魔女ではなく、人として、1人の女性として尊敬している!」
アルマイト
「(盛大に吹き出す。)
教養もないブタ野郎が、吹かしてんじゃねぇ! お前はどうせ、一発ブッ込みてぇだけなんだろ? 相手がリコッタじゃなくっちゃならねぇ道理なんてねぇんだろう? なぁ、そうなんだろ、おいッ! 道端の石っころほどの価値もない、社会の底辺の底辺の最底辺のお前がよぉ、普通じゃ触れられもしねぇ、間近に見ることもできねぇ、高貴な身分の魔女に足跡つけたいだけなんだろ! お前みたいなクズに、可哀想にも騙されちまったリコッタの純粋な優しさを、擦り切れるまで利用したいだけなんだろうがっ! ああぁ!? そうなんだろッ!」
アンプリファイア
「(リコッタの手を強く握りしめる。)
暴言は許さんぞ! アルマイト!」
アルマイト
「(芝居じみた大げさな溜息をつき、首を振る。リコッタを指差しながら、鋭い視線を向け。)
リコッタ、どうして分からない? リコッタァ! お前は騙されてるんだよ、そのオンボロに! 社会の底でモソモソ蠢いている、家畜の糞に湧くウジみてぇな男が語るお飾り言葉の戯れ言に、騙されちまってんだよ! お前がそいつに感じてる心は、恋じゃない! 同情だ! 誰にも尊敬されないし、誰にも見返られることもない、可哀想な病気の赤犬を哀れんで、餌をやってる女の子と同じなんだよ! 真実の目で見ろ! その男は、お前の女神様みたいな純粋な哀れみを、したり顔で食い散らかす下衆な野郎だ! 【魔女の赤い目】で、そいつを見てみろよ! はっきりさせろ! 今すぐに確かめろォ! すぐに分かるッ!」
リコッタ
「(肩を小刻みに震わせながらも、しっかりとした大きな声でアルマイトに応える。)
アルマイトさん、貴方は間違っています! 貴方は何も理解していません。私がアンプリファイアを哀れんでなどいないことを、貴方は理解できないでしょう。アンプリファイアの純粋な心と、純粋な恋も。私は彼が、アンプリファイアが、世界の誰よりも素晴らしい人だと思っています。私は彼に恋しています。彼のようにまっすぐに、私を私として受け止めて、恋してくれる男性は、彼をおいてこの世界に誰ひとりいません。彼は誰よりもかけがえのない人です。アルマイトさん、私は貴方を軽蔑します。私を騙そうとしているのは、貴方のほうです。私を利用しようと企んでいるのは貴方です。私は貴方に恋することは決してありません。アンプリファイアでなければ、誰も相応しくありません」
アルマイト
「(徹夜明けの疲れきったリーサラのオッサンの動作で、肩を落とし、眉根をグリグリと揉む。)
だろうと思った。そういうと思ったよ。判ってた。だろうねぇ。もうダメだわ、リコッタ。お前は心底、そのブタ野郎に騙されちまってる。つまんねぇ劇とおんなじだわ。起承転結の何もかもが見え透いてて、くだらねぇ。お前はそいつに騙されてることに気がつくまで、ずっと騙されちまったまんまだよ。魔女のくせに情けねぇ。そのつまんねぇ野郎にインチキな魔法を掛けられちまってることに気が付けてないんだ。心底、不愉快だ。はぁあ」
アルマイト
(首だけ背後に振り返り、掲げた右手の人差し指をクイクイと曲げ伸ばしして、誰かを呼び寄せるジェスチャーをする。)
アルマイト
「(徹夜明けの疲れきったリーサラのオッサンの動作で、襟元のボタンを1つ外して指を引っ掛け、ぐいぐいと広げながら。)
最悪だが、きっとこんなことになるんじゃないかって、俺は想像していたわけだ。ムカつくがな。リコッタ、もうお前は俺の説得じゃあ、正気を取り戻せないんだろう。だが、はいそ~ですかって、お前ら2人を行かせることは、できない。俺はお前らを否定する。つーわけで、この俺も三文小説にありがちな、スマートな方法を取ることにするぜ」
アルマイト
「(眉尻と口角をハの字に下げ、筒状に形作った両手を口元に当て、芝居がかった悲壮な声で、首を左右に振り振り、助けを呼ぶ。)
センセー、センセェ! 出番でがすぅ。たのんますよぉ!」
(昭和の大衆キャバレーを連想する古臭く間の抜けたファンファーレがどこからか響き渡り、礼拝堂内に反響する。)
(BGMに併せ、フード付きの黒いマントを羽織った何者かが、足元のおぼつかないクルクル回転でアルマイトの配下の連中をすり抜け、アルマイトの隣まで踊り出てくる。)
(マントを翻してもなお、場違いなまでの小さな影。)
(フードの端にキラキラした金色の光がまたたいている。)
(魔女のキッシュ・マカロニアが登場する。)
キッシュ
「(NHK教育ちゃんねるで放送可能な程度に明るいロリータボイスの導入で。)
ハロー、ハロー! 呼ばれて飛び出て、こんばんわー!
(アルマイトを指しながら)積み上げられた札束のためなら、
(リコッタを指しながら)可愛い後輩の恋路も邪魔する金の亡者、
(ダブルピースの腕を胸元で交差させながら)キッシュ・マカロニア!
(両手に立てた人指し指をドリル様にして、頬をえぐりながら)かわいらしく、とーじょー!」
アルマイトとその配下
(腕を振り上げてやんややんやと喝采を上げる。無数のクラッカーが打ち鳴らされ、色とりどりの紙吹雪が乱れ飛ぶ。)
(アンプリファイアとリコッタを照らしていた探照灯は、たった一つだけを彼らに残す。残りの全てはキッシュの小さな魔女にあてられ、まばゆいばかりに照らし上げる。)
キッシュ
(両腕を頭上に持ち上げてフリフリ振りながら、それと同時に生々しく腰を揺り動かす。可愛らしいロリータ・スマイルを惜しげもなく振りまく。)
アルマイトとその配下
(一層熱を帯びる歓声。)
キッシュ
(アルマイトをはじめとする取り巻きたちの歓声に、ハイ・ヴォルテージに向かう恍惚で頬を桃色に染めつつ、振り上げた腕を口元に持って行くと数回投げキッスをする。)
アルマイトとその配下
(最高潮に盛り上がり、絶叫を上げ、中には失神するものも出る始末。)
アンプリファイアとリコッタ
(口を開けてポカンとする。)
キッシュ
(頭に被っていたフードを取り払う。と、フードに隠されていたかわいい金髪の三つ編みおさげが、キッシュの肩上にピョコピョコと跳ねる。)
アルマイトとその配下
(示し合わせたタイミングで「カワイー!」の歓声を一斉に上げる。)
キッシュ
(腰に手を当てて、当然といったようにフフンと鼻息を荒げる。)
アルマイトとその配下
(拍手喝采の嵐。アルマイトは手袋をはめたまま、必死に指笛を吹こうして顔を真っ赤にする。)
アンプリファイアとリコッタ
(口を開けてポカンとしたまま、金縛りにあう。)
アルマイト
(ファンファーレが鳴り止んだのを確認し、改めて背筋を真っ直ぐに伸ばす。未だ小さく歓声を上げている配下の者たちを一瞥をする。)
アルマイトの配下
(アルマイトの視線に気が付いて、ハッと姿勢を正す。事前の打ち合わせ通りに、手にした探照灯の半分をアルマイトとリコッタへ、もう半分をキッシュに向ける。)
アルマイト
「(一瞬キッシュと目を合わせて、ひとつ神妙な咳払いをする。視線をリコッタに向ける。)
リコッタ、君も知っているだろう。法都きってのプリティー・ロリロリ・ウィッチ!
キッシュ・マカロニア大先生だっ! 今夜は俺様のために、わざわざご足労をいただきましたっ!
いよっ! キッシュたん!」
アルマイトの配下
(再度巻き起こるキッシュへの嬌声と拍手の雨あられ。)
「本当に来たのか!」
「かわいい! かわいい!」
「来た、キッシュたん来た!」
「これで勝つる!」
キッシュ
(ニヤニヤしながら両手を上げ、手をヘコヘコ上下させるジェスチャーでオーディエンスどもに興奮を抑制する意味合いの指示をおくる。彼女の瞳が『あんたたち。嬉しいのは分かるわ。分かってる。あたしも自分のカワイらしさがあんたたちを絶叫させるほどだってことを知ってるわ。でもちょっとお黙り』と、語っている。)
アルマイトとその配下
(歓声と拍手をピタリと止める。)
アンプリファイアとリコッタ
(口を閉じることを忘れたまま、呆然とする。)
(一瞬の間。)
キッシュ
「(芝居がかった動きでマントを翻し、右手の人差し指をびしっと伸ばしてリコッタを指す。)
久しぶりね、リコッタ!
大学の卒業式以来かしら。あんた、あの時から薄幸そうな顔してたけど、ほんとに運がないっていうか、バカね。どうしようもないくらい大バカ。魔女のくせに分かってないんだから。道端に吐き捨てられたガムみたいな男に惚れちゃうなんて、とっても悲惨よ。犬のウンコか、誰かの吐いたゲロを踏んづけたほうがまだましよ。どっちも洗えば簡単に綺麗になるもの。でもガムは靴の裏にこびりついて、簡単には落ちないのよ。つまんない男にまとわりつかれちゃって。
(肩をすくめて)
まったく、だからあれほどたくさん恋をしろと教えてやったのに」
リコッタ
「(やるせない表情をキッシュに向け、悲壮な声を振り絞り。)
姉さん、どうして!」
アンプリファイア
「(驚愕の表情でリコッタに振り返る。)
姉さん!? 彼女は、君の姉なのか?」
リコッタ
「(頭を横に振り、キッシュから視線を反らすようにして、アンプリファイアの肩に顔をうずめる。)
ううん、本当の姉さんではないの。いつか、孤児院の話をしたことがあったでしょう。キッシュ姉さんと私は、孤児院で一緒に育ったの」
リコッタ
「(顔を上げ、訴えかけるような視線をキッシュに向ける。)
姉さん! なぜです? なぜ、どうして! どうしてアルマイトさんと、一緒に居るのです!」
キッシュ
「(リコッタの問いかけに、前歯を剥き出しに笑うチェシャー猫の表情をつくる。)
なぜ? どうしてって? うふふ。当然よ、そんなのあなたを愛しているからに、きまっているじゃないの。うふ」
リコッタ
「(顔面をサッと青ざめさせ。)
そんな。キッシュ姉さん」
キッシュ
「(リコッタに向け、小さな赤い舌をペロッと出す。)
にゃはっ。同じ孤児院育ちのよしみを出そうって? ダメダメ。同情なんてしないっつーの。
(大きく腕を広げて、その場でくるりと回ってみせながら。)
魔女になるとさぁ、世界がいろいろ変わってくんのよね。今回のことも、そのうちの1つってワケ。孤児院で一緒に育ったことなんて、取るに足らない平凡なことでしょ? だからまぁ、説明する必要なんてないの、分かるでしょう? ねぇ、あんたの生きかたにちょっかい出して、変えちゃうことなんて、容易いことなのよねっ!
つーわけで、感動の再開の余韻もソコソコだけど、さっさと終わらせちゃうんだからね。これが終わったあと、クラブのイベントがあるの。そっちに顔出さないといけないしさぁ。あたし主賓のディスコパーティがあるのね」
キッシュ
「(アルマイトと配下の者たちに振り返り、両腕を高く上げて左右に振りながら)
そうだ。みんなも来てね! アルマイトさんからの紹介っつーことで、チャージとワンドリンクはサービスしてあげるわよ」
アルマイト
「(握りこぶしを頭上まで振り上げるジェスチャーのあと、配下のものどもに振り返りながら。)
いよっしゃー! 聞いたか、お前ら! キッシュたんのディスコパーティに参加する権利を与えられたぞ!」
アルマイトの配下
(怒号にも似た声量で奏でるキッシュへの歓声と、拍手の雨あられ。)
「きた! キッシュたんからディスコダンスのお誘いきた!」
「かわいい! かわいい!」
「キッシュたんと一緒に踊れるチャンスきたッ!」
「これで勝つる!」
キッシュ
「(回れ右してリコッタとアンプリファイアに向き直る。雄叫びのようなアルマイトの配下の嬌声を背中に受け、フフンと鼻息を荒げる。射幸心を満タンにしたものが浮かべる満足気な笑みで。)
今晩かぎりの特別サービスだかんね」
リコッタ
「(悲痛な表情でキッシュに訴えかける。)
姉さん! 考えをお改めてください! どうかお願いします、私達を、助けて」
キッシュ
「(立てた親指を下に向ける。)
バーカ。
同情なんかしないって言ったでしょ。同情は腐って、くっさい汚物を撒き散らすだけなのよ、リコッタ。
(呆れと哀れみを半々に、小さな子供に言い聞かせるように。)
孤児院で、あんなに教えてあげたでしょ?」
キッシュ
「(鼻先で両手を合わせると、ブッと息を吹きかける。掌が離れた間隙から、キッシュの目前にバレーボール大の茶色い塊が出現する。球の表面には可愛らしい柴犬のイラストが描かれている。)
【愛玩動物魔法・豆柴】! アンプリファイアはモフモフのシバイヌになっちゃえーっ!」
(【愛玩動物魔法・豆柴】は、ボールに当たったものを、可愛らしいもふもふの柴犬に変身させてしまう、恐ろしい呪いである。)
茶色のバレーボール
「(イラストの柴犬がペロペロと舌を出して鼻先を舐めると、宙に浮遊したままクルクルと回転を始める。キッシュが振りかぶった手でスパイクすると、豆柴球は空気を切り裂く凄い速さで、アンプリファイアに向かって一直線に爆進する。)
わんわん、わぉーん!」
アンプリファイア
「(引きつった顔で叫ぶ。)
うわあああ! ま、豆柴が!?」
リコッタ
「(アンプリファイアをかばうように、彼の前へ踊り出る。拳を握った両手を合わせ、伸ばした両腕を体の前に突き出して、バレーのレシーブよろしく、迫り来る豆柴球を前腕の内側で、ポヨンと跳ね返す。)
コートの外でも、平気です!」
豆柴のバレーボール
「(リコッタの腕に魔力を吸収され、ふわりと空中に跳ね上がる。豆柴球のイラストがさみしげな表情に変わり、心細く鼻を鳴らしながら、煙のように消えていく。)
クウーン、キュウウーン」
キッシュ
「(リコッタを指してケラケラと笑う。)
相変わらずバカ正直なのねぇ、リコッタったら! ガキの頃にやってた排球遊びじゃないのよ! あんたの後ろの愛しい人のざまを、ご覧なさいよ!」
リコッタ
「(キッシュの言葉にハッとして振り返る。)
ああっ!? アンプリファイアっ!」
アンプリファイア
「(首に絡みついた黒紫色の蛇のような生物の締め上げに、苦痛で顔を歪めている。蛇のような生き物を両手で掴み、必死に首から引き剥がそうとしている。)
ぐ、あっ! かはあっ」
蛇のような生き物
「(万力のような強力な締め上げで、アンプリファイアの首元にグイグイとめり込んでいく。)
ぐうるるるるるる」
アンプリファイア
「(よろめいて地面に膝を付く。)
い、いき、が。リコ、ッタ……」
リコッタ
「(アンプリファイアの首に絡みつく生物を、細い指で握り、ぐっと力を込めて引っ張る。しかし締め付けは少しも緩まない。)
アンプリファイア! ああ、アンプリファイア!」
キッシュ
「(嘲笑しながら肩をすくめる。)
そんなんで外れると本気で思ってるの? 【ケルベロスの首輪】は、被術者の首が引きちぎれるまで、収縮するのを止めないわよ。ねえリコッタ、『飼うならイヌよりもネコ派』のあんたが、恋人の首が完全に締め付けられるまでの短い時間で、あたしのケルベロスを解法するなんて、できゃしないわ。
(ため息を付きながら腕を組み)
だけど、まぁね。……あたしもそこまで【魔女】じゃないわ。
血が繋がっていないとはいえ、可愛い妹の恋する人を、目の前でチョッパーしてやるほど残酷な気分には、なれそうもない。
(全開の瞳孔のなかに、底の見えない深淵の闇をはためかせて)
そんなことしたら、高感度ガガガガッと下がっちゃうしさぁああああァーッ!」
リコッタ
(一瞬、恐怖に支配されて怯み、胸の前で左手をギュッと握りしめる)
キッシュ
「(両手を腰に当てて上体を乗り出す。第一子が他の兄弟に対して潜在的に抱く支配欲を粘つかせた口調で。)
いーいことぉ、リコッタぁ。お姉ちゃんの言うことを、よぉく聞きなさい。
(打って変わり、はっきりした屈従を相手に求める力強い口調で。)
今、ここで、アンプリファイアへの恋を諦めなさい。
そしてアルマイトさんの恋を心から受け入れるのよ。膝まづいて恋を許しなさい。
アルマイトさんはあんたの恋さえ得られれば、それでいいって言うんだし。ねぇ? そうでしょ?」
アルマイト
「(キッシュの魔術を目の当たりにし、興奮に鼻息を荒らげて、手袋をはめたままのくぐもった拍手を打ち鳴らす。)
あぁ、そう。そうだ、その通りだとも。リコッタ、君が私の恋を許してくれさえすれば、そんなつまらない男のことなんて、どうでもいい。忘れてやっていいんだ。君次第でな。分かるだろう、リコッタ? 君がどうするべきなのかが」
アンプリファイア
「(血の流れが滞った真っ赤な顔面を、パンパンに膨らませる。唇の端と耳たぶに、うっすら紫色が浮かんでいる。)
がっ、り、りご」
リコッタ
「(苦しむ恋人を目の前にして何をすることも叶わず、大粒の涙を流す。)
ああ、アンプリファイア……」
キッシュ
「(退屈そうな半開きの瞳をリコッタに向ける。)
で? どうすんの? 早くしてくんない? ケルベロスの締め付けがそれ以上強くならないように魔力を抑制してんだけど、これって疲れるし、なによりケルベロスはあたしに不忠で、血を見るのがとっても好きなの。気の良い田舎のバスの運転手みたく、いつまでも待ってちゃくれないわよ」
アルマイト
「(苛立たしげに叫ぶ。)
リコッタ! 早く心を決めるんだ、リコッタ! 俺だって、君と同じなんだ。そいつの血なんて、これっぽっちも見たくないんだよ! それに、ああ、そうだ、縁起が悪い! 廃墟とはいえ、ここは教会の、礼拝堂だ。神聖な場所なんだ。そうさ! 小汚いゴミ虫のような存在の血が、祭壇を汚しでもしたら、縁起が悪いじゃないか! 俺と君の未来に、悪いものを運んでくるに違いない! そうに決まってる! さあ早く、そんな奴は捨てて、俺の恋を受け入れるんだっ! リコッタァッ!」
アンプリファイア
「(顔全体が紫色に染まる。充血した白目を剥き出しに、半開きの唇から舌が突き出て、泡を吹きながら。)
……。……」
リコッタ
「(アンプリファイアを抱きしめる。)
アンプリファイア……」
リコッタ
(キッシュの瞳孔にゆらぐそれと酷似した、漆黒の闇を燃え上がらせた瞳で。)
(アンプリファイアの唇へ、いとおしげに口づけする。)
アルマイト
「(顎が外れるほどに口を大きく開け、顔面蒼白で絶望の呻きを上げる。)
リリリリリ、リコッタ!? おっおっ、お前は、一体何を、なにを、かんがえているんだっ!? 自分が何をしているのか、分かっているのか!」
アルマイトの配下
(一様にどよめきを上げる。)
「あきらめたのか……?」
「どうするつもりなのだ……?」
「来た……、最後のキッスきた……」
「これで勝つる……のか?」
キッシュ
「(渋い顔で小指を耳に突っ込み、掘り当てた耳くそに息を吹きかけて飛ばす。)
ったく。ほんとにどうしようもないバカなんだから。脳みそにおめでたい紅白色のカビでも生えてんのかしら。
ねぇアルマイトさん。あたし疲れちゃった。もういい? ケルベロスで、首をブチッと」
アルマイト
「(青色の顔を全力で左右に振る。)
ダメだ! ダメに決まってるだろ! 縁起が悪い! 礼拝堂で血を見るなんで、絶対ダメだ! バチが当たる! 悪いことが起こる! そんなのはダメだ! 縁起が悪いじゃないか!」
キッシュ
「(吐きそうにうんざりした顔で。)
あいつらをここに追い詰めたのは、あんたでしょ?」
リコッタ
「(両手でアンプリファイアの頬を包み込む。)
ごめんなさい、アンプリファイア。わたしのせいで、こんなにつらい目に遭わせてしまって。でも、私は貴方以外に恋を許すことができないわ。私は貴方を誰よりもいとおしい。愛している。アンプリファイア。私を信じてくれる?」
アンプリファイア
「(苦悶に見開かれたまぶたを小刻みに震わせながら、剥き出した白目をゆっくりと押し戻す茶色の瞳で、力強くリコッタを見つめ返す。アンプリファイアの両手が、リコッタの頬を包むと、リコッタの頬に流れた涙の跡を優しく拭う。鉱物油のにおいがリコッタを包み込んだ)
……」
リコッタ
「(肩を震わせ、顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくる。)
ああ、アンプリファイア。ありがとう。本当に。貴方と一緒なら、私はいつまでも、たとえ永遠にだって、耐えることができます」
リコッタ
(アンプリファイアから身を離す。)
キッシュ
(リコッタの魔力を察し、驚きに目を見開き、背筋をビクッとさせる。)
キッシュ
「(リコッタの魔術を打ち消すタイミングを逃してしまったことに、まぶたを細めて悔しそうに舌打ちする。)
チッ。あのクソッタレが」
アルマイト
「(呆けた表情でキッシュに視線を向ける。)
えっ」
(礼拝堂内に潜んでいた暗闇が、蠢く虫の群れのような俊敏な動きで、地面をサアッと這うように、アンプリファイアのもとに詰め寄る。暗闇はアンプリファイアを中心に周回しながら長い帯状に変化する。帯状の闇はかれの体に包帯のように巻きつき、隅々まで覆い尽くすと、ギュッと収縮する。)
(アンプリファイアは【ケルベロスの首輪】ごと、リコッタの魔法によって石化した。かれらの全身は、夜闇のような暗黒色の石と化した。)
リコッタ
(アンプリファイアを石化させた直後、彼女は礼拝堂の石造りの壁の中へ飛び込んだ。魔術により、自らの身を壁と同化させた。)
(リコッタと同化した礼拝堂の壁の表面に、不自然な染みが浮かび上がる。染みはたちまち形状を変え、リコッタの姿を模った。)
その場に居合わせた者たち
(しばし呆然と立ち尽くす。)
☆ 超時空ロリロリ魔女 【キッシュ・マカロニア】 ☆
キッシュ
「(リコッタを模る壁の染みを睨みつける。)
やってくれたじゃないの、リコッタ。自分と恋人を無機物の世界へ逃がすなんて。一見無防備に見えるけど、こいつは……ゲロ吐きたくなるほどお手上げの鉄壁じゃない。
……クソッたれ! あたしを出し抜きやがって!」
キッシュ
「(硬い革靴の先でリコッタの壁を何度も蹴りつける。)
クソッタレ! クソ、クソッ! このドグソが!
(おさげを両手で握りしめ、目元に (><) をつくりながら地団駄を踏む。)
畜生! このあたしが、まんまと出し抜かれた! 悔しい!
(かろうじてまだ外面の良い可愛らしさを残した金切り声を振りまきながら。)
ムキーッ! ムッキキーッ!」
アルマイト
「(壁の染みに成り果てたリコッタの足元に追いすがり、わんわんと泣きじゃくりながら壁に頬ずりを繰り返す。)
うわあああん。リコッタちゃあん。リコッタちゃああああん、どうして、どうして、ボクの恋よりも、こんな、こんなぁぁ。うわああん」
キッシュ
「(親指の爪をガリガリと噛みながら、苛立たしげにアルマイトへ振り返り、かれの脇腹を硬い革靴の爪先で容赦なく蹴り上げる。)
うるせェ!
(ぶっ飛んだアルマイトを小走りに追い詰め、さらに追い打ちで2,3発蹴りながら)
集中できねぇだろ! ダボが! 黙ってろッ!」
アルマイトの配下
(心配げにアルマイトへ駆け寄り、壊れた消火栓の勢いにゲロを撒き散らすアルマイトの背中やおなかをさすりつつ、檻から放たれた猛獣のように獰猛なキッシュを、怯えきった様子で見つめて)
「キ、キッシュたんが。俺たちのキッシュたんが……」
「あ、あんな、魔界の沸騰した釜の底から這い上がってきた悪魔みたいな、あんな凄味のある少女が、ぼくらのキッシュたんのはずがないよ……。ちがうよ……ちがう……」
「ママより怖い、ロリ少女……」
「これでは勝てない……」
キッシュ
「(厳寒のなかで縮こまった男性特有のおいなりさんよりも小さく萎縮した配下の者たちに目もくれず。アンプリファイアの石像の懐にしゃがみ込み、それしかプログラムされていない機械のように、ひたすらに石化の解法手順を導こうと試みる。)
クソ、なんなんだ! こんなの見たことねぇぞ、一体どうなっていやがる? あたしのケルベロスまで、芯から石化しちまってる。法都の魔術構築法じゃ、こうはいかねぇ。こいつは、くっ、リコッタ! あの野郎、とんだ猫っかぶりのドスケベめ! 清純そうな顔に、まんまと騙されたぜ。とんでもないビッチじゃねぇか……!
(しかし突然に、初恋の先輩を遠目に見つけた処女の女子学生のように頬を紅潮させる)
だけど、スゲェ……。スゲェぜ! 全然見当が付かないところが、すごい! こんなの、こんなのは初めてっ! ああっ、なんなのかしら。なんだか体が熱くなってきた! おなかの下のほうからキュンキュンって、なんか信号が出てきてるカンジ! なにこれすごい! 興奮してきた! なんてこと、こんな魔法に心を奪われるなんて! ヤバいわ、マジヤバいわ!」
キッシュ
「(眉尻をだらしなく下げ、紫色の瞳を極度の興奮でグルグルとぐろに巻き、鼻の両穴から垂れる鼻血で洋服の襟元に斑紋をつくる。二股に割れた冷血動物の舌先で唇をチラチラとねぶりながら)
ずっと忘れていた感覚を、久しぶりに思い出した新鮮な気持ち! 初めて魔術を使ったときみたいな、世の中の秘密を手に入れたような感激! 解決の糸口がまったく見えない難問にぶち当たった時のような! そしてそれを突破した時の快感! 心を決めて立ち向かい、乗り越えなくては前に進めない、これは、試練ね! そう、試練だわ! 栄光に通じる未来への道を明るく照らし、浮かび上がらせるための! これはあたしのための試練だっ! あたしはこの試練に挑戦して、そして乗り越えてみせる! 国境を隔てる壁をブッ壊すみたいにッ! いいぞっ、燃えてきたっ!
リコッタ! アンプリファイア! お前らの生身を取り戻してやる! やってやるぜぇ!」
キッシュ
(天に向けて咆哮する。)
(配下の者の探照灯でスポットライトに照らし出されるキッシュ。リコッタのしみがついた壁の隣で、体長5メートルを越すグリズリーが立ち上がり、威嚇する光景に酷似する影絵の姿が浮かびあがる。)
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おしまい
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登場人物ほか 紹介
☆リコッタ・ボロネーゼ☆
魔女。当時めちゃくちゃ美人で有名だった。後世の法都3大美女に数えられる。
学生時代は義姉のキッシュ・マカロニアをいつでも追従する犬のように従順な娘で、主体性に欠けたと評されている。
☆アンプリファイア・トランヂスタ☆
機械工。当時の法都では、機械を触るものは不浄のものとして蔑まれていた。
リコッタをナンパしたら案外簡単にいったので、気を良くし、そのあと存外にのめり込んでしまい、本気になった。
☆アルマイト伯爵☆
イケメン。しかも金持ち。
噂ではキッシュ・マカロニアとできていたらしいが真偽不明の与太話。
リコッタの壁画及びアンプリファイアの石像の保存活動について、高い評価を得ている。
☆キッシュ・マカロニア☆
魔女。法都史上2人しかいない複数称号持ちの魔女。【柴犬の魔女】、【解法の魔女】。
空前絶後のプリティー・ロリ・ウィッチ。彼女の以前にロリータはおらず、また彼女の以後にもロリータはいない。
毎年発行される柴犬を抱いたカレンダーは、需要に対する供給がスズメの涙にも満たず、手に入れられなかったものたちが闇オークションで高値の応酬をするのが恒例。
☆配下の者たち☆
キッシュのファンが多数を占める。リコッタの事件後、キッシュのファンクラブを立ち上げて、メンバーを爆発的に増やし、法都の一大勢力にまで成り上がったド変態ども。
唯一の小さな貢献といえば、リコッタとアンプリファイアの恋の物語を恋詩にしてうたい、法都じゅうに広めた物好きが居たくらいだろう。
☆
【リコッタの壁画】
当初は壁の染みが偶然にも人の形を模しているかのようなあやふやな描画だったが、年月を重ねるごとに人らしい輪郭を帯び、やがて繊細な陰影を付けたデッサン画のような模様に落ち着いた。壁画のリコッタの表情には陰鬱さや悲壮さは少しもなく、たおやかな微笑みを讃えている。リコッタの視線の先にはアンプリファイアの石像が鎮座している。
【アンプリファイアの石像】
石化後から現在まで、大きく見開かれた目と、歯を剥き出して食いしばる表情に違いはないが、100余年を経過した頃から苦悶の表情が和らぎつつあるようだ。
アンプリファイアの石像は、リコッタを手に入れることが叶わなくなったアルマイトの怒りにより、リコッタの壁画から引き剥がされ、法都中心街の都市公園に晒された。
が、その後、アルマイトの身に数多の不幸が重なる。高名な魔女の占いにより、その由来が、リコッタとアンプリファイアを別離させたことにあると指摘される。アルマイトは魔女の忠言に従い、アンプリファイアの石像を元のとおり、リコッタの壁画の傍らへと戻した。すると、アルマイトには二度と不幸が訪れなかった。石像と壁に成り果ててなお、心を通わせる2人の恋に胸打たれたアルマイトは、ようやくリコッタへの恋を諦めた。
アルマイトは死没の直前、2人のおかれた礼拝堂を保全するための財団を設立した。
その後、礼拝堂は恋のパワースポットとして有名となる。世界中から、恋愛成就を企てる婦女子たちや、永遠の愛を叶えたいカップルたちが、連日のように訪れている。
【魔犬・ケルベロスの首輪】
アンプリファイアの首に絡みつくワンコ。アンプリファイアのうなじに犬の顔があり、首を一周した自分の胴体を飲み込んでいる。自分を食べることで円環の径を狭めてゆき、巻きついた者を絞め殺す魔術。
アンプリファイアと共に石化したケルベロスの表情は、主人に叱られた犬のように情けなく、見るものに哀れをもよおさせる。
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