ウフアラネージュ・バニーホップ【未完】
【雑記】スーパー・ハイパー・バニーホッパー・うー
うーは先天性兎人参化症候群のキャリアを抱えるナチュラル=バニーガールだ。うーはまごうことなく人間の両親から生まれたのだが、うーの頭には1対のウサミミがあり、腰のあたりからは丸い尻尾が生えている。全身は一般ホモサピエンス並みだが、耳と尻尾の表皮だけには白くて長い体毛が密生している。冬はすごくあったかそうなので、みんなからちょっと羨ましがられたりする。反対に夏は相当暑っ苦しくてうざったい。すれ違う知らない人からもよく舌打ちされるので、うーは夏が好きじゃない。
うーは要領が悪かった。行動や喋りかたが他の人よりも、ちょっともたついていた。初等部1年生のときにクラスのリーダー格の女の子から「うーはきっと脳みそもウサギみたいにちっちゃいの。だからバカなのよ」って言われた。うーはとても悲しかったけど、きっと言われた通りなんだろうなぁって思った。それからというもの、うーの通知表の評点はだいたい2か1になった。うーはなにをするにしても、なにを考えても、うまくいかなくなった。
学校を卒業したあと、うーは無職だった。数えきれないくらいの採用試験や面接に行ったけど、合格の知らせは1つもこなかった。どの企業にも外見的な物珍しさだけでうーを雇うようなチャレンジャブルな採用担当や広報担当はいなかった。それにうーの頭の悪さは底の見えない井戸のように深くて致命的で、試験官たちを心底うんざりさせた。ウサギの耳や尻尾が生えている頭の悪いうーを雇いたいと手を挙げたのはコスプレ売春宿のオーナーくらいだった。でもうーは身体を売るほどポップでチャーミングな女子ではなかったので、働き先が見つからないことを市役所に相談しに行った。
市役所を訪れたうーの対応をしたのは新卒採用っぽい茶髪のおねえさんだった。おねえさんはうーの耳を見て怪訝なしかめっ面をしたけど、うーの耳が飾り物じゃなくて本物だと解ると、表情をたちまち入れ替えて、好奇心をくすぐられた少年のようになった。うーは頭に生えている耳のせいで定職に付けないことを説明した。頭が悪いことも付け加えようかなって思ったけど、うーの話を聞いているおねえさんの目つきがギラギラしていてすごく怖かったのでうーはなんだか言い出せなかった。でも市役所のおねえさんは、うーのちぐはぐな会話のしかたや舌っ足らずな喋りかたやうーの呆けた表情から、うーの頭が悪いことをちゃんと理解していた。うーのつたない説明のあと、おねえさんは理由も言わずにとりあえずどこの銀行でもいいから口座を作ってこいとうーに命令した。うーはおねえさんの言葉以外にどうしていいか思いつかなかったし、きっと市役所で働くくらいえらい人が言うことなんだからそうするのが一番なんだろうって思って言われたとおりに銀行に行った。
ニコニコした銀行員がどうして口座を開設したいのかって聞いてきたので、うーは数十分ほど時間を掛けてちぐはぐな説明をした。銀行員がげんなりした顔になって席を立ち30分ほど戻ってこなかったので、うーはどうしたんだろうなぁって思ったけどキョロキョロせずにじっと待っていた。やっと戻ってきた銀行員は手に持っていた真新しい預金通帳をうーに向かって捨てるように投げ渡し、一切の説明をせずにうーを椅子から追いやって、次の人を窓口に呼び寄せるとニコニコしながら会話を始めた。うーはどうしたらいいのか分からず、通帳を抱えたまましばらく棒のように突っ立っていたが、銀行員に睨まれて舌打ちされたので市役所に引き返した。
もらったばかりの通帳を市役所のおねえさんに渡すと、おねえさんはうーを残して奥に引っ込み、しばらくしてからなんだか難しい単語がたくさん書かれた書類を持ってきて、理由もなにも言わずに、ここにはこう書け、こう書け、とうーに命令した。うーがおねえさんに言われたとおりの箇所へ言われたとおりの言葉を、汚い文字で全部書き終えると、おねえさんはうーから書類をひったくって、うーに通帳を返した。おねえさんがこのまま家に帰って数週間待ってろって言ったので、うーはそのとおりにした。
うーは3週間ほど冬のナマズみたいに家でじっとしていたけど、なにも起こりそうな気配がなかったので、おねえさんに会いに市役所へ行ってみた。するとおねえさんの髪型が変わっていたので、うーは別の人が出てきたのだと思って混乱した。人見知りの激しいうーがもたもたしていると、髪型を変えたおねえさんはプリプリと怒って、銀行で通帳の書き換えをして貰いなさいと、それだけ言ってすぐにうーを帰した。言われたとおりに銀行に行って通帳を書き換えてもらうと、なぜかすごい金額のお金が振り込まれていた。振り込まれていたのは法都から給付される生活保護金だったし、普通の人ならさほど驚くような金額ではなかったのだが、普通ではないうーにとっては理解できる範疇をはるかに超えていた。うーは通帳の内容にびっくりして銀行員に何かの間違いじゃないかって聞いてみた。銀行員はうーの言葉にうんざりした顔で、間違いはありません。ちゃんと振り込まれてますって言って、うーの次に待っていた人の相手をニコニコの笑顔でやり始めた。うーは通帳の金額をじっと見つめながら棒のように突っ立っていたが、誰もうーの相手をしてくれないので、ためらいつつもお金を引き出してみることにした。うーは窓口の横のATMでお金を引き出している人たちを見てうーもあれをやってみたいなって思って、チャレンジしてみた。通帳を入れる穴は【通帳】って書いてあったから分かったけど、それ以外にはテレビみたいな画面が1つあるだけで、あとはボタンとか何もないのでどうしたらいいのか全然分からず、おろおろもたもたしていたらATMがピコピコ言いながらうーの通帳を吐き出した。うーの後ろでATMの順番待ちをしている人に舌打ちをされたので、うーはATMを諦めてもう一度窓口に並んだ。うーは法都で一番価値の高い紙幣を(以降1万円札とする)1枚だけもらって家に帰った。
お金を手に入れたけど、どうしてお金がもらえたのか分からないし、全然意味が分からないし、それ以外のこともなんだかよく分からないのでうーは不安になって、銀行からもらってきたお金は使わず様子をみることにした。でも数日経ってもうーの家に怖い人たちがやってきてお金を取り返しに来ることはなかった。うーはどうしてお金がもらえたのかまだよく分からなかったけど、その1万円札で大好きなニンジンを買うことにした。
うーはいつも食堂街のレストランの厨房から出る生ごみの中から、ニンジンの皮とか切れっ端を拾ってきて洗って食べていたので、ちゃんとしたニンジンを久しぶりに食べようって思った。八百屋さんに行ってみるとニンジンが1本だけだと40円なのに3本買ったら100円になると書いてあったので、うーは興奮してニンジンを3本買うことにした。ニンジン3本を抱えながら1万円札を出したら八百屋のおじさんがすごく嫌そうな顔をして、小銭はないのかって怒鳴るような大きさの声でうーに聞いてきた。1万円札しかないですってビクつきながらうーが答えると、おじさんの顔がすごく怖くなった。うーはひどく慌ててニンジン3本を3セット買うから1万円札でいいですかって言ってみた。おじさんが渋い顔をしながらも、仕方ないからそれでいいって言ったのでうーはニンジン9本を抱えた。そしたらおじさんがもう1本買ったらニンジンが10本になるよって言って、うーはニンジンが10本もあったらどうなるのかなぁって考えてみた。ニンジンが10本もあったらなんかすごいことになるんじゃないかなぁって思って、興奮したうーはニンジンを10本買うことにした。でもニンジンが10本になったら値段はいくらになるのかなってうーは考えたけど頭が悪くて分からなかったので、おじさんに聞いてみた。おじさんが400円でいいよって答えたのでうーはそっかぁって思って1万円札をおじさんに渡して、ニンジンとおつりをもらって家に帰った。うーはニンジン10本を抱えながら、こんなにたくさんニンジンがあるなんて夢みたいだなぁってとっても嬉しくなった。
うーは家に帰る途中で我慢できずに1本のニンジンを食べたらすごく美味しくて、やっぱり我慢できずに家に着くまでの間に5本も食べてしまった。お腹いっぱいになったうーは、こんなに幸せな気持ちになれたのは市役所のおねえさんがうーの銀行口座にお金を振りこんでくれたからだって思って、次の日にスーパーマーケットでクッキーを買って市役所に持っていった。市役所のおねえさんはクッキーを持ってきたうーを見て、初めて会ったときと同じように怪訝な顔をした。うーがちぐはぐな説明をしたらおねえさんは、そのお金は生活保護金だから私が振り込んでいるわけじゃないの、って言った。でもうーは頭が悪いのでよく分からなかった。おねえさんが首をかしげながらうーの買ってきたクッキーを受け取ってくれたので、うーはすごく嬉しくなった。でもおねえさんはクッキーよりも、うーの頭に生えている本物のウサミミに興味があるようだった。おねえさんに耳をちょっと触らせてって言われたとき、うーは耳をすごく強く握られたり、すごく強く引っ張られたりした昔のことを思い出して、ためらったけど、うーにお金を振りこんでくれたおねえさんの言うことなので、おねえさんの好きなだけ耳を触らせてあげることにした。おねえさんはうーが恐れていたような乱暴な触りかたをせず、うーの耳をとてもやさしく撫でてくれた。写真をとっていいかと聞かれて、うーはどうしようかなぁと考えたが、おねえさんはうーの返事を聞く前にケータイのカメラでパシャパシャ撮り出した。うーは耳の写真だけならいいかなって思った。
ケータイに保存された写真を見ながら頬を紅潮させるおねえさんから、他にもウサギみたいなものがないのかと聞かれて、うーはよく考えずにしっぽがはえてますって正直に応えた。そしたらおねえさんがすごく嬉しそうな顔になって見せろって言い出した。おねえさんにしっぽを見せるにはお尻を出さないといけないんだけど、それは恥ずかしいしみんな見てるからどうしようかなって、うーがもたもたしていると、おねえさんはうーの腕を引っ張って女子トイレに連れていった。うーは女子トイレに連れていかれることにあまり良い記憶がなかったので、怖くなってしまった。うーを女子トイレの個室に押し込めたおねえさんは、一緒に個室に入ってきた。うーを後ろ向きにしたおねえさんがうーのズボンとパンツを膝まで一気にずり下ろしたので、うーは恐怖のあまりおしっこを漏らしそうになった。おねえさんはうーのふとももの裏にフンフンと鼻息を吹きつけるほど興奮しながら、うーのお尻をケータイのカメラでパシャパシャ撮りまくった。うーは怖かったけど、うーにお金を振りこんでくれるおねえさんのすることなので、じっと黙って耐えていた。おねえさんはしばらくすると、うーのパンツとズボンを元の通りに引き上げて、すごく嬉しそうな顔でうーに向き直った。ウサギが好きなのよ。おねえさんはそう言って、先に一人で女子トイレから出ていってしまった。うーはよく分からないけど、写真を撮られただけでよかったなぁってほっとした。ほっとしたけど、家に帰る途中になんだかもやもやした気持ちが浮かんできた。
おうちに帰って残しておいたニンジンを食べたらすごくおいしくってもやもやした気持ちはふっとんだ!
よかったね。うー。