表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された令嬢ですが、私の調合がないと王宮は回りません  作者: 渚月(なづき)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/10

第一話 薬棚の在庫表

追放令は、朝露がまだ乾かない時刻に届いた。


私が真っ先に確認したのは、婚約の証だった指輪でも、六年間暮らした宮廷薬師局の部屋でもない。薬棚の在庫表だった。



硝子瓶の並びを指でなぞる。解熱草の残量、鎮痛樹皮の精製分、先週仕込んだばかりの止血軟膏。すべて、私の手で調合したもの。


(……これが誰の名前で使われるのか、もう確かめる術はない)


背筋を伸ばして、棚から手を離す。


持ち出せるものは限られている。けれど在庫表の数字は、もう全部この頭の中に入っている。


荷物は小さな革鞄ひとつ。中身は着替えと、使い込んだ調合ノート一冊。


宮廷の正門を抜けたとき、振り返らなかった自分に少しだけ驚いた。涙が出なかったことにも。



辺境へ向かう乗合馬車の窓から、王都の尖塔が遠ざかっていく。


揺れる荷台の上で、私は調合ノートを開いた。最後のページに、昨夜書き足したばかりの数式がある。


——この先に待つものが何であれ、この手は薬を作れる。


それだけが、今の私のすべてだった。


馬車が街道の曲がり角を越えたとき、すれ違った早馬の騎手が、宮廷薬師局の紋章をつけていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ