表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

4. 安否

※グロテスクな表現が含まれます。苦手な方はご注意下さい。

あ………え……?

由香……?


由香なのか……?

あの血だらけで倒れている女の子が……?


「嘘だろ……っ」


俺は由香に駆け寄り、由香の手を握って


「由香っ!!頼む……目を開けてくれ……っ!!」


頭ではわかっていた……

もう息がないこと……


だけど、俺はそれをどうしても認めたくなかった……

それだけは、認めたくなかった……


「お願いします……由香を……助けてください……っ!!」


俺は神にでも縋るようにそう言うが、現実は冷酷なもので……



――由香が呼吸をすることはなかった。



「由香……っあ、あぁ……由香……っ」



「あああああああああああああッッッ!!!!」



俺は由香の亡骸を抱きかかえて崩れ落ちた。


どうして……こうなってしまったんだろう……

どうして……俺は由香を助けられなかったんだろう……


俺は……由香の兄なのに……


もう、二度と由香の声は聞けない……

もう、二度と動いている由香は見れない……


もう、二度と―――




           ◆




「お兄ちゃん!!あそぼー!!」


俺が学校から帰ってくると、由香はいつも駆け寄ってくる。


「仕方ないな〜!ちょっとだけだぞ〜!」


そう言うと


「大希、あんた明日修学旅行なんだから早く準備済ませちゃいなさい。」


「わかってるよ母さん。でもちょっとだけ〜!」


俺はそう言って由香と遊び出す。


「もう〜!ちょっと遊んだらすぐ準備してね!」


「はーい」


そう返事をして、由香に向き直る。


「何して遊びたい?」


由香にそう聞いた瞬間、庭の方からガサッと音がした。


「なんだろう?」


気になった俺は立ち上がり、庭を覗いてみた。


「何もないな」


「お兄ちゃーん!早くあそぼーよ!」


由香が待ちきれないと言わんばかりに裾を引っ張ってくる。


「わかったわかった!遊ぼうな〜」



そうして俺はしばらく由香と遊び、夕飯を食べた後、自室で明日の準備をした。


明日から俺は修学旅行だ。

今日は早めに寝たほうがいいだろう。


俺は、部屋から出ると由香に声をかける。


「今日はもう寝るから。おやすみ、由香。」


俺がそう言うと、由香は


「うん!おやすみお兄ちゃん!修学旅行……ちょっと寂しいけど楽しんできてね!」


俺は驚いた。


昔はあんなに寂しがりな子だったのに……

成長したな……


「ありがとう、由香。」


俺は由香の頭を撫でると、自室に戻って布団に入った。


明日はきっと、バスで修斗や瑠奈と話して、初めて行く場所で色々なものを見て、「楽しいな」って感想を言い合うのだろう……


修学旅行、楽しみだな……



           ◆




俺が目を覚ますと、場所は教室だった。

どうやらショックで気絶していたらしい。


時間を見ると19時24分。

1時間も気絶していたのか……


「……そうだっ!由香!!」


俺は辺りを見渡すが、そこには誰もいなかった。


さっきまで、ここには由香の亡骸があったはずなのに……


由香がいないどころか、教室は血痕もない綺麗な状態になっていた。


「……どういうことだ?」


見間違いだったのか?

……いや、そんなはずはない。


あの瞬間、血だらけの由香を抱えたときの重みは間違いなく本物だった。


「由香……」


由香を探さないと……

たとえ亡骸でも……大切な妹に変わりない。


今……探しに行くからな、由香……


俺はゆっくりと立ち上がると、よろよろと教室から出る。


廊下を歩いていると、向こうから瑠奈が歩いてくるのが見える。


「大希くん、由香ちゃんいた?」


そう聞いてきたが、俺の顔を見ると心配そうにこう言った。


「どうしたの?大丈夫?なんだかすごく疲れてるみたいだけど……」


「……いや、大丈夫だよ。ありがとう。」


だけど、このままじゃまた心配をかけてしまうだろう。


「とりあえず、顔洗ってくるよ。」


「うん、わかった……」


そうして、俺はトイレの手洗い場で顔をバシャバシャと洗う。


今頃、修斗は何か見つけただろうか?

そろそろ修斗とも合流したいところだが……


さっきのことは、2人に話すべきだろうか?


けど、由香が血だらけで倒れていて、ショックで気絶して、起きたら何もなくなっていたなんて……

誰が信じるのだろう?


俺は顔を洗い終わり、ハンカチで顔を拭いていると、パリンと鏡が割れる音が聞こえた。


顔を上げて鏡を見ると……


「……え?」


ヒビ割れた鏡に映っている自分がこちらを睨見つけていた。


俺はゾッとして後退りして、一度瞬きをすると、鏡にはただ驚いてギョッとしているだけの俺が映っていた。


見間違いだったのだろうか……

黒い影の件といい、やっぱり俺は疲れているようだ。


ハンカチをポケットにしまうと、俺はトイレから出て瑠奈のもとへ戻る。


「お待たせ」


俺がそう言うと、瑠奈が心配そうに言う。


「うん……もう大丈夫なの?」


俺は、これ以上心配をかけないように言う。


「あぁ、もう大丈夫だよ。とりあえず、そろそろ修斗と合流しよう。全員で情報共有したいから。」


瑠奈は心配そうにしつつも同意する。


「……うん、そうしよっか。休みたかったら言ってね?」


「もちろん。ありがとう、瑠奈。」


そうして俺たちは修斗と合流するために階段を降りる。


情報共有をしたいというのは本音だが、それ以上に別れて行動することに対して不安があったのだ……


由香が血だらけで……でも、気絶して起きたら何もなくて……

もう何がなんだかわからない……


だけど、血だらけの由香が現実なら……

ここは危険だ。


修斗……お前は無事だよな……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ