3. 悲鳴
※グロテスクな表現が含まれます。苦手な方はご注意下さい。
あれから数分が経ち、少しだけ心が落ち着いてきた。
「落ち着いたか?」
俺の背中をさすりながら修斗が言う
「あぁ……落ち着いてきたよ……。」
そう言うと、ずっと手を握ってくれていた瑠奈が心配そうに聞いてくる。
「さっき……何があったの?」
俺にも……わからない……
アレが何だったのか……
わからない……
「突然、黒い影みたいなモノが襲い掛かってきたんだ……」
すると、修斗が不思議そうに
「黒い影?なんだそれ……俺は見えなかったぞ?」
すると瑠奈も
「うん……私も見えなかったよ?」
やっぱり、2人には見えていなかったんだ……
だけど、俺は確かにアレに襲われた。
やっぱり、由香も危険な目に遭っているのだろう……
アレに遭遇して……襲われたんじゃないか……?
……アレは危険だ。
見た目は、ただの影……
だけど、アレにはもう二度と見たくないと思わせてくる何かがあった。
「何がなんだかわからないけどさ、とにかく今は由香ちゃんを探そうぜ。」
確かに、そのとおりだ。
俺は由香の兄だ。
由香が危険な目に遭っているのなら俺がナヨナヨしている場合じゃない。
すると、修斗が思い出したように言った。
「さっき、図書室に由香ちゃんの私物っぽい物があったんだよ。」
……っえ?なんだって……?
黒い影は……図書室にいた……
まさかもう……
いや、そんなはずはない……
そんなこと……
とにかく、戻って確認するしかないだろう。
由香……無事でいてくれ……
◇
図書室に着くと、確かに由香のハンカチが落ちていた。
「ハンカチ……?なんでハンカチがここに……」
そして、そのハンカチには……
――血が染み込んでいた。
「ッッッ!!」
「それ、由香ちゃんのハンカチだよね……?血が……」
「おいおい……マジかよ……」
瑠奈も修斗も青ざめた顔をしている。
いや、待てよ……
そういえば由香はよく鼻血を出す子だ。
一部に血がついてるだけなら、鼻血かもしれない。
きっと……そうだ……。
そのとき、下の階の方から悲鳴のようなものが聞こえた気がした。
由香のものではない。
誰かが……アレを見たのか?
いや、でもアレは瑠奈と修斗には見えていなかったし……俺以外の誰かに見えるものなのか?
「ねぇ、今なにか聞こえなかった?」
「あぁ……聞こえたな……」
俺だけじゃなかったらしい。
2人も聞こえたと言っている。
じゃあ、アレではないのかもしれない。
いや、そもそもアレは幻覚だったのかもしれない。
疲れてるのかもな……
「……とりあえず行ってみようっ!」
すると2人は頷き、俺たちは同時に声のした方へ駆け出した。
◇
声は、この辺りからしたはずだ……
俺たちは昇降口まで来ていた。
が、そこには何もなかった。
「何もないな……」
修斗は不思議そうに言う。
確かに、この辺りから聞こえたんだけどな……
図書室から昇降口までは近い。
聞こえたのはここからで間違いないはずなのに……
「とりあえず、図書室に戻ろうぜ。もう少し探索した方がいいだろうし。」
そうだな……
血のついたハンカチがあったということは、図書室で何かがあったということだ。
「だな、戻ろう。」
◇
そうして俺たち3人は図書室まで戻ってきた。
図書室の隅から隅まで見てみたが、これといった手がかりはなかった。
すると、『学校資料』のコーナーが目に留まる。
少し気になって見てみると、
「俺らの代の修学旅行のしおりだ……」
そこには、『6学年 修学旅行!!』と大きな文字で書かれていた。
『11月23日(金) 7時20分 校舎集合』
たしか、修斗が寝坊で遅れて怒られてたっけな……
懐かしいな。
『11月25日 4時30分 解散』
あの時は由香のために速歩きで帰ったんだよな。
っと、こんなことしてる場合じゃない。
早く由香を探さないと……
「こっちには何もなかった。」
そう言うと、2人も
「こっちもなかったよ」
「あぁ、こっちもない。次行こうぜ。」
そうして図書室から出たとき、修斗が言った。
「このままだと効率悪いし、それぞれ別の場所探そうぜ。」
確かに、その方が効率は良い。
だけど、俺は2人が心配だ。
俺にしか見えていなかったし、ただの幻覚である可能性が高いと思う。
由香が心配で、おかしくなってたのかもしれない。
だけど、万が一のことがある。
そう思っているのを察したのか、瑠奈が言う。
「私たちなら大丈夫だよ!早く由香ちゃん見つけよう!」
2人が良いというのなら、そうした方がいいだろうか?
俺も早く由香を探したい……
「わかった、別れて探そう。ありがとう、2人共。」
「おう!」「うん!」
「それじゃあ、俺は3階と4階を探すよ!」
俺がそう言うと
「じゃあ、俺は1階と2階だな。」
「私は体育館とトイレとか探してみるね!」
それぞれの役割が決まった。
それじゃあ……
「気を付けてな、2人共。」
そうして、俺たちは解散した。
◇
俺はまず、3階の教室を片っ端から見て行くことにした。
いない……ここもいない……!
と、そのとき……
由香の泣き声が聞こえてきた……!!
「ッッッ!!由香っ!!」
俺は泣き声が聞こえる方へ走り出した。
泣き声に近付くにつれ少しずつ由香の言葉が耳に入ってくる。
「――お兄ちゃんっ!!帰ってきてっ!!」
どういうことだ……
帰ってきてないのは由香だ。
俺は由香を探していて……
いや、そんなことは後で考えればいい!!
今は早く由香のもとへ行かないと……!!
着いた先は……由香のクラスの教室だった。
教室に入るとそこには……
――血だらけで倒れている由香がいた。




