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風呂キャン界隈の俺が異世界転移して風呂にハマった理由

巨体が風呂にすっぽりハマって出られない。


どうしてこんなことをしてしまったのだろうか。

強烈な後悔に襲われる。


助けは来ない。

一人になることを望んだのだから。


ここは異世界。

消防署に助けを求めることもできないのである。


どうして風呂なんかに入ってしまったのだろうか。


異世界転移してうかれていた?

そんな理由で?


もう3ヶ月も風呂なんか入っていなかったではないか。


大嫌いな風呂で、このまま一生を終えるのか?


いや、厳密には違うだろうか。

風呂が嫌いなのではない、風呂に入るのが嫌いなのだ。


あるいは、風呂から出るのが嫌いとも言えようか。

出入りするのが嫌いだ。


風呂に入っていない状態から風呂に入るのが嫌いだ。

風呂に入っている状態で風呂から出るのが嫌いだ。


風呂に出入りすることによる変化が嫌いなのである。

状態を維持したい。環境の変化に耐えられない。


ではなぜ風呂に入った?

説明がつかない。

これに関しては、異世界に来たという圧倒的な環境の変化がそうさせたのだろうか。

風呂に入るという環境の変化は、異世界に来たことと比べると些細なことだ。

きっと、そのせいで風呂に入ってしまったのだろう。


いや、風呂に入ったところまでは良かったのである。

そして、普通に出てさえいれば問題はなかった。


風呂から出たくない。

お湯からあがりたくない。

この考えがすべてを狂わせた。


手足に力を入れて風呂から出るのがためらわれるなら、

栓を抜いて排水してしまえばいい。

これが諸悪の根源であった。


水位が低下するにしたがって、体が風呂の底に引っ張られる。

異世界だからだろうか、こんなに重力が強いのは。

まるで吸い付けられるように、風呂の底に背中がへばりついている。

完全にハマってしまった。


異世界にきてまで、こんな惨めな思いをするなんて聞いていない。

異世界転移物だろ?チートで風呂くらい壊せないのか?


かれこれ1日ほどこの状態だろうか。

外が眩しいほどに明るくなっている。


元の世界の1日と同じくらいの時間が経ったのかはわからない。


この世界にセシウム原子が存在しているのかすらわからない。

物理現象は元の世界と同じなのか?

それとも魔法とかあるのか?


魔法があるなら見てみたかった。


魔法がある世界では1秒をどう定義したのだろうか。

人と話してみたい。この世界をもっと知りたい。


月とかあるのだろうか。屋根のせいで見えなかった。


太陽があるのは確かなので、1日の概念はあるのではなかろうか。


季節はあるのだろうか。地軸は傾いているのだろうか。

傾いていたとして、今いる場所の緯度は?

赤道直下ならずっとこの暑さが続くのだろうか。


のどが渇いた。

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