視線服
とんでもない発明をしてしまった。
集めた視線を具現化し、編み込んで服にするという発明だ。
まずはテストで一着作ってみた。
自分で着てみると、なにやらずっと自分を見られているような感覚になる。
あらゆる方向から自分の体に視線がささっているような、むずがゆい感じがする。
これは僕には向いてないが、友達のジョンなら気に入りそうだ。
早速連絡を取ってジョンを呼び出した。
ジョンに着せてみると、「おお!色んな人に見られてる感じがする!」と興奮してハイになっていた。
「これって、どんな人の視線を集めたんだ?」
「スクランブル交差点に行き交う人の視線を集めたよ。100人くらいかな。」
「すごいな。もっと増やすとどうなるんだろうな?」
「試してみよう。」
そして、1000人くらいの視線を集めて、ジョンに着せてみた。
以前よりもハイになっていた。
「スポーツする時とかは力を発揮できそうだけど、勉強する時には向いてないな!」
なるほど。
では逆に、1人の先生から視線をいただき、服を作ってみた。
ジョンに着せて勉強させてみると、「まるで先生が後ろから見ているような感覚だ。これは集中出来るぞ。」とのことだった。
誰の視線を、どのくらいの数集めるかによって、いろいろな用途に使えそうだ。
応用して、逆に視線をかいくぐる服も作れた。
ジョンに着てもらうと、まるでカメレオンのように、周りの景色に溶け込んでいた。
しかし、服が覆っていない顔や手や足は見えていた。改良の余地がありそうだ。
次に、視線を集める服を作ってみた。
ジョンに着せて一緒に街を歩いてみた。
すると、ジョンを見た人の目から視線が具現化し、ジョンの服に結びついた。
その光景を見た人が次々とジョンを見て、多くの視線が集まった。色々な色の視線があった。
あらゆる方向から視線が集まったため、身動きが全然取れなくなってしまった。
僕は力ずくでジョンの服を脱がした。
その瞬間強風が吹き、視線を集める服は上空へ飛んでいった。
その服に釣られるように、具現化した視線も上空へ飛んでいる。
その服から視線を外すと、具現化した視線も取れた。
しかし上空にいて、常に移動をしているため、その場所その場所で視線を集め、姿形を変えていた。
僕はずっとその服を見ていた。
僕の目から出ている具現化した視線をロープ代わりにして、上空の服までたどり着いた。
そして姿が変わる服の上で空中散歩を楽しんでいた。
-その頃ジョンは-
「きゃー!上半身裸の男がいる!」という騒ぎが起き、警察に追われているのだった。