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第2話 弱り目にたたり目。そのあと痴女?

 男はだんだんと、自らの置かれている状況に危機感を抱き始めていた。


 このままでは自分もあの哺乳類のようになってしまう。そんな風に焦り始めた最中、男は遠くの方に数人の人影を見つけた。


「あ! おーいッ 助けてください!」


 男は彼らの元に走って行った。

 だが途中で、それらが確実に人ではない事が分かった。


 それらは人間とよく似たシルエットだったが、肌が透明で内蔵が透けて見えていたのだ。



 男は、あっという間に透明人間たちに捕まってしまった。

 彼らの戦艦に無理やり連れていかれると、骨と石で出来た手術台のような物の上に載せられ、手足をきつく拘束された。

 4,5人の透明人間が、台の上の男を取り囲む。


 ─おえぇ。こういうグロい見た目の奴、僕ちんまじ無理ぽ!─


 だが、そんな悠長な事を考えているうちに、彼らの内の一人が瓶の中に入った透明なヒルを取り出したのだ。


 それを見て、男はこれから自分がどんな目に遭うのかを悟った。

 恐怖で顔を引きつらせながら、激しく暴れだす。


「フは、何する気だよ…… オイッ、やめろ!」


 透明人間たちは男の身体を押さえる。

 その間に一人がヒルを金属の棒でつまみ、男の耳へと近づけていく……。


「やめろっ やめてくれぇぇっ!!!!」


 ─ニュル~ …ゴリゴリッ


「……ガ゛あ゛あ゛あ゛ああ゛あ゛ああああああッッッッ!!!!!!」



 そこで、男の意識は完全に途絶えた。




 次に目が覚めた時、男は深いジャングルの中にいた。

 そしてヒルを脳に植え付けた時のショックで、彼は記憶喪失に陥っていた。


「……ここはどこだ?」


 男は、偶然持っていた手鏡で自分の容姿を確認する。

 そこには、見知らぬ日本人青年の姿があった。


「僕は、誰だ???」



 ──自らのパーソナリティの全てを喪失した男は、異世界の森をあてもなくさまよう。


 とにかく分からない事が多すぎる。

 それに体力も極限まで消耗していて、男には生き物として最低限の生存本能(食欲)が辛うじて機能しているのみだった。


 すると何処からか、食欲をそそる香しい匂いが漂ってきた。

 甘くて、まるで蜂蜜を塗りたくった焼きたてのトーストのようだ。

 自然と男の足は、その匂いの方へと向かっていた。


 おぼろげな意識で、ジャングルの中をなんとか進み続ける。

 そして甘い匂いの先で見つけたのは、なんと巨大なパンケーキの山だった。


 男の口元からは一気によだれが溢れだす。


「はぁ、はぁっ いいんだよな?」


 周りには誰もいない。つまりこれは、自分のものだ!


 男は奥にあった一番大きなパンケーキに近付くと、そこから垂れる蜂蜜を飲むために、顔を上げ大きく口を開けた。

 次々と蜂蜜が流れ込んできて、口の中に甘い香りが広がるようだ。


 ─ああ、幸せだ…… これがファンタジー!─


 だが次の瞬間、男は固くて苦いものをかみ砕いたのを感じた。

 違和感に気づき、すぐにそれを地面に吐きだす。


「ゲッ」


 男がかみ砕いたのは、腐肉に群がる羽虫の死骸だったのだ。不快感を感じ、男は口の中に溜まっていた液体もすべて吐き出した。



 それをきっかけに、男にかけられていた幻惑が解かれる。


 彼が見ていたのはパンケーキなどでは無かった。

 ジャングルに生息する狂暴な食虫植物の毒のせいで見えていた幻覚だったのだ。

 蜂蜜だと思っていたのは、食虫植物のよだれだった。


 頭の上で口をパッカリと開けている食虫植物を見て、男は思わず腰を抜かす。


「く、食われる!」


 だがその時、横から羽のついた槍が飛んできて、食虫植物の頭を貫いた。


「こっちよ!」


 槍が飛んできた草むらの方を見ると、そこには年端もゆかぬ少女の姿があった。

 彼女が槍で気を引いてくれているうちに、男は食虫植物の元から逃げだした。


 後ろを振り返ると、槍で食虫植物はひるんでいたが、致命傷ではなく倒すことは出来ないようだ。


「何してんのっ 早く逃げないと死ぬわよ! さあ、こっち!」


 少女が手招きする。

 彼女の髪は綺麗な青色で、鬱蒼としたジャングルの中でもよく目立った。

 男はこくりと頷くと、少女の指示に従い後をついていった。



 少女のおかげで、男は一時安全な場所に避難することが出来た。


「あたしはスク族のシャーマン、ジャスミンよ。あなたは~…、うっかりデオグランド大森林の奥まで迷い込んじゃった、間抜けな旅人ってとこかしらね」


 驚くべきことに、少女はほとんど裸と言ってもいいような恰好だった。

 森の葉っぱを縫い合わせて作られた服を着ていて、大事な所は隠されていたが、それも激しく動けばたちまち露わになってしまうだろう。

 しかも、彼女のπ(パイ)はデカかった。


「危ない所だったわね。この森にクリーチャーはいないけど、その分魔物はたくさんいるのよ。たまたまあたしが近くで狩りをしてたから助かったのよ。まあ、感謝することね!」


 そう言って「エッヘン」と踏ん反りかえるジャスミン。

 その時のはずみで、葉っぱの影に隠れた二つの玉がプルるんと揺れる。


 男は、彼女の事をもっと知りたいと思った。

 すると、鑑定眼が自動で発動し、彼女のステータスが目の前に映し出される。



【ジャスミン・ベルザオーラ】

別名:蛮族の呪術師、???

保有魔力:80

スキル:初級特殊召喚呪文 フィアーズソウルズ、初級基礎治癒呪文C、初級基礎剣術B

脅威度:1

カルマ値:-50


備考〔B83 W57 H79 処女〕


 ……ふむ。



「ねえっ、さっきから話きいてる?」


 そういってジャスミンは、肩をつかみ揺さぶろうとしてくる。


 だが、その手が男の肩に触れた瞬間、彼女は何かを感じ取ったらしい。そのまま強く突き飛ばすと、槍を男の喉元へと突き付けた。


 なんだか分からないうちに、ジャスミンはさらに変なことを言いだした。


「騙されたっ! さっきから一言もしゃべらないから変だと思ったら、あなた人間じゃなかったのね!あたしはシャーマンだから、命の玉を持っていない事くらい触れば一発で分かるわ! 魔大陸から来たゾンビ?それとも新種のデメニかしら??」


 ゾンビ? デメニ?

 記憶はないが、そんなものでは決してないと思う…。

 それに、今まで喋っていなかったのは、君の胸についてる双丘に見とれていたからなんだ!!!


 だがそんな言い訳をする間もなく、彼女は手に持つ槍を思いっきり振りかぶった。

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