〈優秀〉だから〈天才〉だから
誰もが認める程に〈優秀〉な者がいた。
学生時代、試験は毎回トップの成績を誇り、生徒会長として学校の代表としての仕事も担っていた。
教師陣や生徒達からの信頼も厚く、どんな仕事を与えても即座に完璧にこなすことで有名であった。
学校を卒業し、社会に出てからもその優秀さは健在であった。
上司からの評価は高く、部下への指示も的確で、入社後間も無くからいくつものプロジェクトを任され、今後は出世街道まっしぐらだろうと人々は噂し、きっと彼女は〈天才〉だと誰もが信じ込んでいた。
「瑠奈が言う事ならば絶対に正しい、なぜなら彼女は天才だから」
誰も彼女を疑わない。彼女に対する周囲の期待は途方もなく大きなものだった。
____彼女一人で背負うには重過ぎるほどに。
「優秀な者こそ誉、父上も母上もそう仰っている。だからこれで良いんだ」
「私だって努力しているのに、どうして誰も気づいてくれないの、、、」
「、、、もう私を〈優秀〉だと〈天才〉だと言わないで。これ以上はいい加減演じきれない」
誰もが彼女に尊敬の眼差しを向ける。度が過ぎた信頼は徐々に信仰へと変貌していく。人々はそれでも正しいと信じ続ける。
たとえそれが、彼女を苦しめていたとしても____