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第7話 出発の日

 出発日の朝、学校の玄関。

 みんなが見送りに来ている。


「カルラぁ!! 無理はするな! 危険だと思ったらすぐに『助けて』と叫ぶんだぞ!!」


 オスプレイが駆け寄ってくる。


「近づくなアホ」

「ぐへっ!?」


 俺はオスプレイを廊下の壁まで蹴り飛ばした。


「……や、やっぱり心配だ! 私もついていく!」


 立ち上がり、駆け出そうとするオスプレイをシグ姉が後ろから首根っこを掴んで止める。


「この馬鹿は私が抑えておく。今の内に行け」

「サンキュー、シグ姉」

「……気をつけてな」


 次にワッグテールがポン、と頭に手を置いてきた。


「無理はするなよ」

「ガキ扱いすんな」


 俺がワッグテールの手を払うと、ワッグテールは小さく笑った。

 一匹狼気質ではあるが、ワッグテールは別に無感情な人間ではないんだよな……。


「カルラ……」


 心配そうな目で見つめてくるカナリア。

 俺はカナリアの頭を撫でる。


「大丈夫だよ。俺ってそれなりに器用だからさ、うまくやるさ」

「絶対だよ……絶対、戻ってきてねっ! 私、私……!」

「心配し過ぎだよ。土産話、たくさん持って帰ってくるからよ。楽しみにしてな」


 クレインは腰に手を置いて、


「僕は何一つ心配してないよ。君は絶対に戻ってくる」


 湖の前ではあんなに取り乱していたクセに良く言うよ。


「ありがとよ。俺が居ない間、このお転婆な妹をよろしくな」

「任せて」


 次にパフィンが、


「お気をつけて。――お兄ちゃん」


 先生に聞こえないぐらい小さな声で言ってくる。


「なんだ? ハクのマネか?」

「カルラさんは遺伝子上、母も父も同じわたくしの兄ですからね。別に不自然ではないでしょう?」


 確かに。

 遺伝子上は腹違いでも種違いでもない、実妹だな。


「そうだな。行ってくるよ、妹よ」


 パフィンの頭を撫でる。パフィンは嬉しそうに、されど恥じらいも含めた笑みをこぼす。

 全員と挨拶を済ませた所で扉の方を向く。


「……準備OKだ」

「そのようですね。行きましょう」


 黒装束を着て、俺は学校を出た。



 --- 



 森を抜け、島を囲い込む山の前に到達。

 山の壁を背にした小屋を見つけると、先生は「少し待っていてください」と言い、一人小屋に入っていった。

 そして戻ってきた時には大きな樽を抱えていた。


「船に着くまではこの樽に入って外を見ず、大人しくしていてください」

「どうして?」

「決まりだからです」


 それは理由の説明になってない。

 先生は樽の蓋を開ける。


「大丈夫ですよ。酔わないよう、なるべく揺らさずに運びますから」

「ああ、うん。わかった」


 樽には肩紐がついてる、背負って運ぶつもりか。俺は大人しく樽に入る。

 俺が樽に収まると先生は蓋を閉じた。



――真っ暗だ。



 光が一切入ってこない。


「すみません、ちょっと回しますね」

 グルン、グルン、グルンと何度も樽を右へ左へ回された。方向感覚が完全に狂った。


「よっと!」


 大きな揺れ。

 背負われたのだろう。

 することもないので、ただ耳を澄ます。


――先生の足音、草を踏みつぶすような音。

――ズズ、と何かをズラすような音。その音がもう一度鳴る。

――カン、カン、カン、と階段を下るような音。音と一緒に揺れもくる。

――寒くなってきた……水の流れる音が聞こえる。

――ゴツン、とどこかに樽を置かれた。まだ出ていいとは言われない。

――ザー、と水面を滑る音が聞こえる。温かくなってきた。

――独特な揺れが三半規管を揺らす。気持ち悪い。

――樽に入ってから2時間ぐらい経ったか。揺れは止まらない。


「もういいですよ」


 先生の合図。

 俺は蓋を開け、外に出る。


「うわっ!?」


 眩しい! 太陽の光が降ってきた。

 俺はいま、揺れる木製の乗り物にいた。ここは……船の上か!

 周りは巨大な水たまり……違う、これが海か……!


「はは……なんだこりゃ。言葉が見つからねぇ」


 遥か後方には島が見える。外から見ると山しか見えないな。

 船は大きくはないけど、小さ過ぎもしない。定員は8~10人ぐらいかな。帆のない船だ。先生は船の先頭で操縦桿(ハンドル)を動かしている。


「どうですかカルラ、外に出た気分は?」

「……気持ちいいな。これが潮風ってやつか。つーかこの船、帆がないけど何で動いてるんだ?」

「『陽氣(ようき)』ですよ」

「陽氣? なんだそりゃ」

「太陽のエネルギー、とでも言いましょうか。万物に宿っており、私にも、あなたにも流れています。そのエネルギーをコアと呼ばれる物体に込めることで、船が動いているのです」


 ハンドルの真ん中に赤い石がハマってる。アレがコアかな。


「……ここが外……」


 妙な気分だな。

 不安もあるけど、やっぱり……解放感とワクワク感もある。


「カルラ。私は操縦で手が離せません。今の内に私のカバンに入ってる物を身に着けてください」


 先生のカバンは先生のすぐ後ろにあった。

 中を探り、手に当たった硬い物体を手に取る。


――仮面だ。


「我々は影、本来陽の(もと)に出てはならない存在。第5王子として居る時以外は常にその仮面を被りなさい」


 ハーフマスク。鼻から額まで隠す仮面だ。

 黒い金属製だ。


「この面積のマスクで誤魔化せるモンか?」

「目元が見えないと意外に人はわからないものですよ」


 黒装束にマスク。傍から見りゃ不審者だな。

 たしかにこれでフードを被れば、ぱっと見じゃ誰だかわからねぇだろうな。


「王都まではあと40分ほどです。王都に着いたら君を親衛隊に預け、私は帰ります。今の内に聞きたいことがあれば聞いてください」


 王卵ってなんですか? とは聞けないし、他に聞きたいことがあるとすれば……、


「第5王子が影武者(ドッペル)と入れ替わることって、誰が知ってるんだっけ?」

「王族は全員知っています。後はあなたの手引きをする第5王子の親衛隊も知ってます」

「親衛隊ね、さすが王子様だ。俺が王子様役やってる時はその親衛隊ってやつ、こき使ってもいいんだろ?」

「ふふ。好きにしなさい」


 大海原の真ん中、小さな島があちこちに見える。

 興奮が冷め、海景色に飽きてきた頃、

 海の向こう、水平線の向こう側。

 多くの建物が見えてきた。

 本で何度も見たことあるし、話でも何度も聞いたことがある。だが、この目で実物を見たのは初めてだ。


 そう……アレが王都であり、


 俺が生まれて初めて見る『街』である。

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

よろしくお願いしますっ!!

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