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ドッペルツィマー ~影武者の反乱~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第三章 王乱

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第40話 旅立ち

 先生との戦いに決着が着くと、ホルスが目の前に現れた。

 さらに翼が一枚増えている。左側が五枚で、右側が三枚に……。


『そこの遺体(ゴミ)、貰っていいかな?』


 ホルスは先生の遺体を指さす。

 俺が王になるためにホルスクラウンの製造は絶対条件。

 先生の遺体は良い武器に変わりそうだが、やむを得ない。


「勝手にしろ」


 ホルスは先生の遺体、捥げた腕も抱えて、天へと昇っていく。


『これからお前は争奪戦に参加するのだろう?』

「……止めるか?」

『いいや。影武者(ドッペル)が王位争奪戦に参加するのは初めてだ。お前がどういう結末を辿るのか、楽しみにしているよ』


 俺はホルスを睨みつけ、


「いずれテメェも殺す。覚悟しとけ」

『クク……! やれるもんならやってみな』


 ホルスと先生は王卵へと還っていった。


 王卵は黄金に輝き、破裂する。


 王卵が消失すると同時に天に浮かぶ八個の王冠。それぞれ赤、青、黄、緑、紫、黒、白、ピンクの宝石が埋め込まれている。


 王冠は高く高く空に昇ると、流れ星のように八方向に散っていった。


 これで本当の意味で儀式が終わったのか。

 島には俺一人が残された。

 王都から何らかの使者が来るにしても、そうすぐには来ないだろう。

 すでに夕方だったので、俺は出発は明日にすることに決めた。

 まず足を運んだのは見慣れた教室。


 17年間――いや、この1年間は除いて16年間、世話になった教室。みんなの影が見える。


 空っぽの教室を記憶に刻み込み、次に先生の部屋に行く。


「……これからの旅に、必要な物……か」


 先生の机の中に、それはあった。

 黒い、ハーフマスクだ。目元が隠れるマスク。

 俺の顔はカルラと同じだ。外で穏便に過ごすためには隠す必要がある。確かにこれは、必要なものだ。


「こいつも貰っておこう」


 部屋にあった大陸の地図も拝借した。

 脱出用の保存食をリュックいっぱいに詰める。そしてアレも……。


「……」


 部屋に隠して管理していた、花冠。

 シレナに貰った花冠も、リュックに詰めた。

 旅の準備を終えた後……墓を作り始めた。


 元々あった二つの墓に加えて、新たに七つの墓を作った。 七つの墓にそれぞれ名を刻む。


 九つの墓、一人の先生と八人の兄弟の墓を眺める。


 アトラス(地図)

 セーラス(極光)

 ソフォス(賢者)

 ペタルダ(蝶)

 レイン(雨)

 シレナ(人魚)

 イノセンス(無垢)

 アントス(花)

 クロウリー(冒険家)

 


 悪いな……いつか、もっと大きな墓を建ててやるからさ。

 今はこれで勘弁してくれ。


「……行くか」


 夜が明けて、地下空洞へ行く。

 迷路のような道を抜け、船へ。

 船の操縦桿に陽氣を込める。するとユラユラと船は動き始めた。数分でコツを掴み、海へ出る。陽氣の操作はもう慣れたものだ。


 薄暗い早朝、日の出が海の先に見える。


 とても静かだ。見送りは誰もいないはず……なのに、アイツらが見送ってくれている気がして、涙が込み上げてきた。


「うっ、ぐっ……!」


 きっと、もう暫くは戻れないと思うから。

 さようなら、みんな。



「―――――っっ!!!!」



 泣き叫んだ。

 これから先は泣いてる暇なんてない。

 だから俺は、誰もいない海のど真ん中で泣き叫んだ。

 涙が枯れるまで、ずっと……。



 創暦1868年5月2日。



 俺は世界へ飛び立った。



 ◆ヴィンディア王宮・円卓の間◆


 

 円卓を囲むは国王と8人の王子。

 灯りは円卓に乗った蝋燭の火のみで、暗く、王子の顔はよく見えない。


「今回は突然の招集に応じてもらって嬉しく思うぞ、我が子たちよ。と言っても、クレインの馬鹿は居ないが」


 ひとつだけ、席は空席である。


「ホルスクラウンは造られ、すでに各地へ散らばった」


 国王の言葉に、王子たちは多種多様な表情を浮かべる。


 笑う者、

 悲しむ者、

 無表情、

 欠伸をする者、

 様々だ。


「戦場は完成した。各々が親衛隊を連れ、冒険に出るといい。他の王子を殺すのもこれより自由だ。ただし、王都を出るまでは互いに干渉することを禁ずる」


 国王は席を立ち、声を大きくしていく。


「生まれた順番も関係ない、男だ女だも関係ない。性格も、能力も、どれだけ愛国心があろうとも、なかろうとも、関係ない。ホルスクラウンを()()()()()()()()()()が問答無用で次の国王だ」


 最後の一節を聞き、カルラは微笑んだ。



「さぁ始めようじゃないか……王を決める争いを! 王乱を!!!」



 話が終わり、王子たちが去る。

 一人取り残された王の下に、一人の従者が訪れる。


「国王様、どうやらこの王位争奪戦にイレギュラーが二つ紛れ込んだようです。いや、イレギュラーが二人、と言った方がよろしいでしょうか」


「把握している。捨て置け……それはそれで面白いではないか」


 国王はある一人の少年の顔を思い浮かべる。



「王子だろうが影武者(ドッペル)だろうが関係ない。王冠を手にした者が――王だ」

【読者の皆様へ】

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