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ドッペルツィマー ~影武者の反乱~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 王都凱旋

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第16話 王子と影武者

「ぬっ、お、お!?」


 いったぁ!!?

 拳めっちゃ痛熱(いたあつ)い!!

 興奮した頭が冷めたら急に痛み出した。やべぇ、泣きそう。


「……くっくっく」


 倒れ込んだハクは、不気味な笑い声と共にフラフラと立ち上がった。


「アンタ、面白いね。さいっこうだよ……! オリジナルより全然マシだ! いいね、燃えてきた!!」


 切れた唇から垂れた血を拭い、ハクは全身から白いオーラを出した。

 なんとなく、感覚でわかる。アレは多分、先生やリンが言っていた陽氣ってやつだ。

 とんでもない陽氣がハクに集まっている。


「燃えろ、影法師(ゲンガー)……!」


 アレはやばい……アイツ、何かとんでもないモノを出そうとしている。

 奴の足もとに影の紋章が、『燃え盛る向日葵』の紋章が浮かぶ。

 昨日の乱入者が使って来た技と同種の何かを繰り出そうとしている。『陽氣』、『影法術』、これらの先にあるであろう秘奥――俺じゃどうにもならない、ヤバい技だ!!


「幻影封氣――火炎フレート

「そこまでにしておけい」


 ハクの言葉を、誰かが止めた。

 いいや、『誰か』じゃない。声の主が誰なのか……俺にはわかる。

 ()()()()()()だった。


「王宮内での幻影封氣の使用は禁止されているだろう、ハク」

「……」


 ゆっくりと、俺は声の方を向く。


 俺の背後に立っていたのは、バケツを被った男。


 目の部分に穴を空けて視界を確保している。


 俺とまったく同じ身長。

 まったく同じ声。

 まったく同じ、瞳。


「……今度は本物か」


 カルラ――オリジナル。


「ここは余に預けてもらうぞ。下がれ」

「うん、わかったよ。お兄様」


 ハクは忌々し気に呟いた後、口元を笑わせてこっちを見る。


「心配はいらないよ。この頬の傷は転んだってことにする。アンタのことを誰かにチクったりはしない。アンタが処刑で死ぬのは面白くないからね」


 ハクは最後に、


「……アンタは必ず、ボクが焼き殺す」


 そう言い残し、去っていった。

 俺はバケツ仮面の方を向く。


「……とりあえず、助けてくれてありがとう。カル」

「待て」


 カルラオリジナルは右手を前に出し、俺の言葉を止める。


「場所を変えよう。我々が共に陽の当たる場所にいるのはまずい」


 言ってる意味はわかる。

 しかし――


「……正体を隠したいのはわかるが、そのバケツはどうかと思うぞ?」

「……そうか? この無骨さがクセになるのだがな」


 どうやら美的センスは違うらしい。


 俺とカルラオリジナルはカルラの部屋へと向かった。



 ---



「あ、お帰りなさーい」


 部屋の前、リンが俺たち二人に手を振る。


「お前、俺が部屋を抜け出していたの気づいてたな……」

「うん。面白そうだからカルラ様に報告した」


 それでコイツが来たのか。


「リン。見張りは頼んだぞ。余はこの者と長い話がある」

「了解です」


 俺とカルラオリジナルは部屋に入る。

 カルラオリジナルは扉が閉まるとバケツを脱ぎ、こっちを向いた。


「……」

「……」


 互いに顔を観察する。

 わかってはいたけど、そっくりだな……。


「ほう、ほうほう! やはり、余にそっくりでイケメンだ!」

「……俺に似て冴えない顔だな」

「待てよ、これだと見分けがつかんな」


 カルラオリジナルは棚を開け、おもちゃ箱のような物を出し、中から小さな王冠を手に取り頭に乗せた。


「よし、これで見分けがつく」

「俺たち以外誰も居ないのに、見分けついても意味ないだろ」

「余の気持ちの問題だ」

「……そうかい。ていうか、アンタ自分のこと『余』って言うのか。一人称は『俺』って聞いてたんだけど」

「今日から使い始めた。というかお(ぬし)に出会ってから使い始めた。お主と差別化するためにな。これも気持ちの問題だな」

「……」


 いまいち、何を考えてるかわからないやつだ。


「さて、色々と話したいことがあるが……」


 カルラオリジナルはおもちゃ箱からチェス盤を取り出した。


「チェスは打てるか?」

「……まぁ、一応」

「よし、ならばチェスをやりながら話をしよう!」

「別にいいけど、包帯か何かないか? 右手が痛くて駒を持てそうにない」

「そうだったそうだった! まずは手を治療しなくてはな!」


 カルラオリジナルは棚から火傷治しの薬と包帯を取り出し、俺の右手を治療してくれた。


「うむ、これでいいだろう」

「痛みが引いていく……さすがは王族の使う薬だな」


 俺は黒を握り、カルラオリジナルは白を握り、チェスを始める。


「枕の下に隠しておいた絵本は読んだか?」

「クソ下手な絵で描かれたやつだろ」

「あれほど芸術性のある絵は無かろうに……美的センスは全然違うようだな」

「なんとなく察してたけど、やっぱりアンタが仕込んでいたんだな」

「左様。お主に読んでもらうためにな。王位争奪戦のルールは理解したな?」

「完璧にじゃないけど、大体は」

「では単刀直入に言おうか」


 カルラオリジナルは手を止め、俺の目を覗くように見る。


「お主にも王位争奪戦に参加してほしい」

「……はぁ?」


 なに言ってんだコイツ?

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

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