第13話 幻影封氣
人影は小さい。カナリアと同じくらいだ。
深くフードを被っていて顔は見えないが、金色の長い髪が外套から漏れて見える。
「あの~、すみません。招待状はお持ちですか?」
「聞くまでもないでしょうリンさん。扉を蹴り破る客がどこにいますか?」
「それもそっか。じゃ……お仕置きしないとね」
リンとアルハートが侵入者を押さえにかかる。だが、
「どけ」
侵入者はその小さな体を翻して二人を躱した。
「っ!?」
「カルラ様! お逃げください!」
アルハートが叫ぶ。
逃げろつっても、俺のスピードじゃアレを撒くのは無理だろうよ!
侵入者は一直線に俺の方へ向かってくる。
――やばい。
俺は食器のナイフを右手に持ち、構える。
小さな侵入者はすぐさま俺との距離を詰めてきた。
「このっ!」
俺がナイフを振り下ろすより早く、侵入者は俺の右手を蹴り上げてナイフを弾き飛ばした。
素早い。まるで動きに対応できなかった。
「……すまないな少年。少々手荒だが、これしか方法がない」
女の声。
その小さな体躯に反して落ち着いた声だ。
次の瞬間――想像だにしていないことが起きた。
少女の影が巨大化し、変形。少女の足もとに『影の紋章』ができる。雪の結晶のような形をした紋章だ。
紋章の中心に立つ少女が影に包まれ黒く染まる。
「起きろ『影法師』」
次の瞬間、影は剥がれ、少女の姿が変わっていた。
「幻影封氣――『冰竜』」
「なにがなんだか……!?」
侵入者の右手が大きく膨らみ、白い鱗を纏った。爪も人の喉を裂けるぐらいに伸びる。
あるで竜と人が融合したような……。
なんだコレ、魔術? 魔法? とにかく超常的な何かだ! いや、つーか、こんなので殴られたら死ぬんじゃ――
「ごふぁ!?」
みぞおちを思い切り殴られる。
20メートル上空から腹筋に岩でも落とされたような衝撃。腹に穴が空いてないのが不思議だ。
うずくまり、苦悶の表情を浮かべる俺を、侵入者は見下ろす。
「影の者よ。鳥籠を壊す力は与えた。どう使うかはお前次第だ」
影の者?
コイツ、俺が影武者だと知ってるのか……!?
「……テメェ、俺に何をしやがった……!?」
俺の質問に答えることなく彼女は駆け出した。窓を割ったような音が聞こえる。きっと奴は窓を割って外へ脱出したのだ。
音の方に視線を向けることはできない。体が動かない。
「カルラ様! ご無事ですか!?」
リンが近寄ってくる。
くそ、駄目だ。意識が……薄れていく。
妙な感覚だ。めちゃくちゃ痛いのに……腹の底から、力が湧き上がってくるような――
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