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ドッペルツィマー ~影武者の反乱~  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第二章 王都凱旋

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第13話 幻影封氣

 人影は小さい。カナリアと同じくらいだ。

 深くフードを被っていて顔は見えないが、金色の長い髪が外套から漏れて見える。


「あの~、すみません。招待状はお持ちですか?」

「聞くまでもないでしょうリンさん。扉を蹴り破る客がどこにいますか?」

「それもそっか。じゃ……お仕置きしないとね」


 リンとアルハートが侵入者を押さえにかかる。だが、


「どけ」


 侵入者はその小さな体を(ひるがえ)して二人を躱した。


「っ!?」

「カルラ様! お逃げください!」


 アルハートが叫ぶ。

 逃げろつっても、俺のスピードじゃアレを撒くのは無理だろうよ!

 侵入者は一直線に俺の方へ向かってくる。


――やばい。


 俺は食器のナイフを右手に持ち、構える。

 小さな侵入者はすぐさま俺との距離を詰めてきた。


「このっ!」


 俺がナイフを振り下ろすより早く、侵入者は俺の右手を蹴り上げてナイフを弾き飛ばした。

 素早い。まるで動きに対応できなかった。


「……すまないな少年。少々手荒だが、これしか方法がない」


 女の声。

 その小さな体躯に反して落ち着いた声だ。


 次の瞬間――想像だにしていないことが起きた。


 少女の影が巨大化し、変形。少女の足もとに『影の紋章』ができる。雪の結晶のような形をした紋章だ。

 紋章の中心に立つ少女が影に包まれ黒く染まる。


「起きろ『影法師(ゲンガー)』」


 次の瞬間、影は剥がれ、少女の姿が変わっていた。


幻影(げんえい)封氣(ほうき)――『冰竜(ひょうりゅう)』」

「なにがなんだか……!?」


 侵入者の右手が大きく膨らみ、白い鱗を纏った。爪も人の喉を裂けるぐらいに伸びる。


 あるで竜と人が融合したような……。

 

 なんだコレ、魔術? 魔法? とにかく超常的な何かだ! いや、つーか、こんなので殴られたら死ぬんじゃ――


「ごふぁ!?」


 みぞおちを思い切り殴られる。

 20メートル上空から腹筋に岩でも落とされたような衝撃。腹に穴が()いてないのが不思議だ。


 うずくまり、苦悶(くもん)の表情を浮かべる俺を、侵入者は見下ろす。


「影の者よ。鳥籠を壊す力は与えた。どう使うかはお前次第だ」


 影の者?

 コイツ、俺が影武者(ドッペル)だと知ってるのか……!?


「……テメェ、俺に何をしやがった……!?」


 俺の質問に答えることなく彼女は駆け出した。窓を割ったような音が聞こえる。きっと奴は窓を割って外へ脱出したのだ。

 音の方に視線を向けることはできない。体が動かない。


「カルラ様! ご無事ですか!?」


 リンが近寄ってくる。

 くそ、駄目だ。意識が……薄れていく。

 妙な感覚だ。めちゃくちゃ痛いのに……腹の底から、力が湧き上がってくるような――

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