9.タオニカとジンナ
アンバーの街 その2
ドリーの家兼事務所にタオニカが訪ねて来た。魔道具を販売していた商店の先輩だった人だ。
タオニカは24歳。シングルマザーだ。
実家のそばに借家を借りていて、女中の仕事をしながら子供を育てている。
実はドリーにこの仕事を教えこんでくれたのはこのタオニカだった。
「女中の仕事のあいまに、すこしやってみない?」
「おもしろそうね」
タオニカは微笑んでいた。
アンバーの街の工房の指導は、ちょうどいいボリュームの小ささだったので、タオニカに指導をやってもらった。
ドリーは後ろについて2回同行したが、さすがセンスがあるなと感心しながら、まかせて大丈夫と判断した。
3回目からひとりで行ってもらった。
作業報告書も翌日には細かく書いたものを出してくれた。
***
アンバーの街にもう一件受けた仕事があった。ドリーが指導に入ったもう一件の工房で、以前一緒に働いていたジンナに会った。
以前一緒に働いていたのは、魔法陣を書き続ける工房だった。
ジンナは職人肌の人材で、黙って記述を朝から晩まで書き続ける人だった。
一緒にやらないかと誘ってみたら、一瞬目をきらっとさせたが、
「なにをやるんですか?私は魔法陣を書くことしかできないから・・・」
と、不安そうにした。
ジンナが書く魔法陣はいつも美しかった。
刺激を受けて、ドリーも自分なりに美しい魔法陣をと、こだわって作るように時間を費やしたほどだった。
「いや、これ逸材かもな」
ドリーはつぶやいた。
***
ランベル商会の各部署にタオニカとジンナを連れて挨拶に行った。
「きれいなドリー、大人のタオニカ、かわいいジンナ」
サガは喜んでにこにこしてついてきた。
タオニカは、各部署の方々の中に知っている顔が何人かいたようだ。
さすが私の先輩なだけあるな。
人材の確保でやる気を認めてもらえたのか、それからランベル商会から仕事が次々と入ってきた。
しばらくバタバタ忙しい日々が続いた。