3.「魔道具JJJ」
ダムの街
「魔道具JJJ」は魔法陣を書く専用機で、ランベル商会のオリジナル魔道具だ。
ドリーの仕事はランベル商会の下請け。
魔道具の販売に伴う使い方の指導員だ。販売のプレゼンも行う。
ランベル商会は商人ギルドに所属していて、「魔道具JJJ」の開発チームを持っていた。
ドリーに仕事依頼してくれるサガは、販売部長ブクブリッジのもとで販売を担当していた。
今日は午後もプレゼンだ。
「今でも魔法陣は手書きですか?」
これはドリーの決まり文句だ。
「たとえば、水魔法の魔法陣はこのように作れます(魔法陣の名前を書いて)「開く」です」
記述名を書く小さなパネルに羽ペンに魔法インクを付けて、ササっと書いて「開く」を押した。
「書込み画面に以前保存した内容が出てきます。」
中央の大きなパネルに、あらかじめ書いておいた魔法陣が出て来た。
「おお~」(つかみはOK)
「ここを直したいと思ったら、直したい内容を書き込むスペースを「空白」キーを必要な文字数分押して場所を作ります。」
あらかじめ位置を決めておいたのでそのまま「空白」キーを6回押した。
「空いたスペースに文字を書込みます」
6文字さっき使った羽ペンで記入する。
「不要な記述があれば「消去」を必要なだけ押します。自分のいる位置から左を1文字ずつ消していきます。」
↑
← → のキーをタタタタタ-を押して位置を移動して「消去」を3回押す。
↓
「魔法陣の名前を別にしたければここに書いて「保存」このままですと上書きされます」
ピッと記述名称を書くパネルを指さして「保存」を押した。
「魔法陣が表示されたままで、魔法陣を書き込みたい場所に置いて「書込」を押します」
「魔道具JJJ」を軽々持って、真新しい噴水のおもちゃに押し当てて「書込」を押した。
「さあ、これでちいさな噴水が出来ました。一番小さい魔石をお願いしまーす」
「ここに魔石をセットして魔力を送ると」
小さな噴水から水が霧状に噴き出した。
「手で書ける能力がある人でなければ使いこなせない魔法具です」
「手書きだと間違えた時、書き直ししなくちゃならない場合があるから、たいへんなんですよね」
「JJJで魔法陣を登録しておけば、一番小さな魔石で約64個の魔法陣の保存ができて、いつでも修正ができます」
「大量生産できますよ。でもやりすぎると価格が落ちてしまうのでお気を付けくださいね」
今日もプレゼンは絶好調だ。
***
スケジュールを組んで買っていただいたお客様に指導に入る。
「魔道具JJJ」の仕事は、バグ発生がひんぱんで、魔道具修正記述は、人海戦術で配って歩くという実は体力勝負的な仕事だ。
だから、ドリーの仕事も無くならないので助かるが、けっこう移動が多い。
買っていただいたお客さまのところで指導中、
「さあ、では実際に書き込んでみましょう」
「ブー」エラー音。
もう一度チャレンジするも「ブー」エラー音。
お客様にお詫びして、ランベル商会に確認に走った。
記述開発本部の天敵ロックドアが出てきた。
「今の記述は新しく作り直したばかりなんだから、そんなところまで作ってないよ。」
ぐっと手を握り怒りをこらえてドリーは微笑んだ。
「次回訪問の予定は、7日後。それまでに頼みます」
ランベル商会を出て、石ころをけりまくる。
(記述開発本部長のマエボーさんなら、もうすこしちゃんとしてるんだけどなぁ)
ふぅとため息をついて帰宅した。