2.今でも魔法陣は手書きですか?
ダム(ダンジョンの街)
「いまでも魔法陣は手書きですか?」
ただいま絶賛プレゼン中のドリーは22歳。にっこり微笑んで「魔道具JJJ」を美しく操作する。
出資者らしい年配の男性と、お連れ様3人に「魔道具JJJ」を操作してお見せしているところだ。
---ドリーは17歳で結婚したが、半年もしないうちに冒険者の夫はロンドの街のダンジョンから帰ってこなかった。
---パーティ全員行方不明なので、安否の確認は出来なかった。
「そもそも、この「魔道具JJJ」は、魔法陣を手書きで書ける人でなければ使いこなせません。
使う方のレベル次第で、たくさんの記述を盛り込むことができます。
なおかつ、データとして保存しますので、大量生産も可能ですし、再度注文があったときに、取り出して再出力することができます」
パパパパーンと同じ魔法陣をいくつか並べて見せた。
「ほおおお~」
(つかみはOK)
あとは、ランベル商会販売部のサガの仕事だ。
「ではあちらでランベル商会の方が、いろいろ説明してくださいますので行きましょう」
奥の応接室にご案内した。
サガが羊皮紙に数種類のお見積りを提示していた。
ドリーはお茶を入れて応接室にお出しした。
「誰でも使いこなせるわけじゃないっていうけど、使い方の説明はしてもらえるの?」
「はい。このドリーがお客様のもとに出向いて、6回指導に入ります」
サガがドリーを横手で示した。
「システムスタッフのドリーです。かならずお使いいただけるよう指導させていただきます」
ドリーは微笑んでお辞儀した。
「魔法陣を書くのは人によってレベルが違うけど・・・」
ドリーを見て年配のお客様が聞いてきた。
「はい。レベルの高い方にはそのように。まだ初心者の方にはそれなりに。
無理な説明をしても覚えきれませんので、レベルが上がったらまた呼んでいただければ伺います。
ただし、初動のあとは別料金になってしまうので、できるだけレベルの高い方が覚えて、下の方々に説明していくのが、いちばんお金がかからないでしょう」
ドリーは簡単な魔法陣と複雑な魔法陣をならべて見せた。
「なるほど」
「ではぜひ前向きに、ご検討をよろしくお願いします。5日後にそちらに伺いますので、それまでに決めていただければと思います」
サガはさわやかににっこり微笑んで、お客様を外までお送りした。
***
ドリーとサガは応接室を片付けて、ドリーは陶器のカップを洗い出した。
「手ごたえはあったけど。どうかしらねぇ」
「即決するには結構な価格だからね。」
サガはカップを拭いて片づけていった。
「もうすこし安くなれば売りやすいけど、安すぎても甘く見られるからちょうどいいかもなぁ」
カップを片づけ終わったら、戸棚を閉めてサガがつぶやいた。
「あ、ドリー。薬草MIX手に入ったけどほしい?」
「ほしいほしい。お疲れ超MAXになったときに、すごい助かるのよ。1個でもいいからほしいわ」
「銀貨2枚でどうよ」
「どうせまた、ただでもらってきてるんでしょ。フン」とドリーは銀貨2枚渡した。
「まいど~」
と、サガはさっきのさわやか営業スマイルとはかけ離れた、子供みたいなにやにや笑いで薬草MIXを手渡した。