ラーの鏡
「正月に集まった時の写真が出来たぞ」
スマホ撮影ばかりだが、厳選してプリントアウトするイエス。
「北伊勢大神宮に参った時のだネ」
エリは笑顔を絶やさない。
「ははっ、思い出すなあ」
低学年のようなポーズを決めているメシヤ。
「マリアさま、どうかなさいましたか?」
心配するレマ。
「誤解して欲しくないんだけど、自分の思っているイメージと写真がなんか食い違うのよね」
確かに、実物のマリアと写真のマリアは雰囲気が異なる。
「そう言われるト、メシヤもだネ」
表情がどことなくいつものメシヤと印象が違う。
遠巻きのレオンは気付いている。
(お許しださい。メシヤくん、マリアさん・・・)
メシヤとマリアの写真がネットに載ってしまった場合、おそらく多くの人間がその見た目に興味を示すことだろう。そうならないための措置が、用意周到に施されている。
「写真うつりが悪いやつは、どこにでもいるもんだな」
イエスはそこまで大きく変わらない。
「静止画詐欺なんて言葉がありますが、動画ならそこまで変わらないのではないかと」
動画加工もあるが、ボロは出やすい。スマホのレンズを通すと顔色が悪くなるのは、メシヤとマリアに限らない。
「インカメで死にそうな顔になってる時があるけど、あたしだけじゃなかったのね」
どうもカメラの性能という話では無さそうだ。
「自分の顔って自分が一番知ってるようで、実は一番知らないのかもね」
適度な距離で客観的に見ることは、不可能だからである。カメラを通した時点で、実像とはズレてしまう。
(メシヤさま。ご自身のお心も周囲のわたくしたちのほうが、よく分かっていることもあるのですよ)