間接侵略
「小説の読み過ぎと言われるかも知れませんが」
いや、ニカルは間違いなく読み過ぎだろう。
「日本国内がにわかに騒がしくなってきたのは、間接侵略ではありませんか?」
それは承知で言ってる気がするが、試されてるのかね俺は。
「外国人コミュニティの暴動をなぜか鎮圧できない。とっ捕まえても不起訴処分になる。有力者の引きずり下ろし。いくら働いても働いていない層に富を持って行かれる歪んだ制度」
数え上げたらキリが無いな。
「直接侵略では貢ぐ物も無くなってしまうので、生かさず殺さずですね」
殺されてもいるんだがな。
「神籬さん。あまり本気の目でわたしを見ないでください」
いかんいかん。
「もう国家対国家でも無いんだよな。超大国ですら混乱っぷりが凄まじい」
ニカルの作ったゲームが、任天堂DSにも一般販売されていた。
「間接的に何かを行わせるのは、一般人同士でもありますよね」
「『寒くない?』と言って周囲にエアコンの温度を上げさせるやつだな」
「そこで『寒いね』と言ったら不合格扱いされるのが、世紀末感漂いますね」
その内、寝ながら移動できるローラーを装着しそうだ。
「『○○が無い!』と独り言いう奴とかな」
「スルーが一番ですね」
(神籬さんの奥さんのことでしょうか・・・)
「ここなんか汚れてるな〜ってのもな」
「あの、神籬さん。急に話のスケールが小さくなってしまったような」
悪かったよ。
「だがな。そうした庶民的な裏を読み取るのと、巨大な組織の策謀を見抜くのとは、たいした違いが無いんだよ」
よく考えたら、ガキの頃からやたらと勘の鋭い奴はいたもんだ。
「そうですね。親の抜けている点を子供がつつくケースもあります」
何か言いたそうな顔をしているなあ。
「防御の面も大袈裟に考えなくていい。メディアが、周囲が、さも真実であるかのように語っていたとしても、自分のわずかな違和感からフラグメントを組み上げていけばいい」
「その違和感を放置していたら、コトがどんどん大きくなっていきますからね」
「そう。策謀は無理筋・ゴリ押しの線が濃厚だろう? てことは、ちょっと矛盾点を突いてやれば、崩壊するのも案外速いってもんさ」
そのためには、焦って間違った判断をしてはならない。
(わたしのところにも脅迫めいた手紙がごまんと届くのですが、神籬さんの助手を務めるのも結構大変なんです)




