正露丸、遠い家
メシヤの顔が青くなっている。
「家までまだ15kmもある!」
名古屋からの帰り道、急に催してきた。
収まってきたと思っても油断はならない。
コンビニで借りれば良さそうなものだが、メシヤはあまりあの空間が好きではない。広々とした店舗のものを借りたいが、もう夜中である。
「そうだ、あの小瓶を・・・」
瓶を突き抜けてくる強烈な木クレオソートの匂い。
「便秘よりはマシだけど、僕のお腹どうなってるんだろう」
正露丸は腹下しに効果覿面である。殺菌効果もあるので、効能書き以上に躰に良い作用があるのではないだろうか。
「臭いと言えば臭いけど、なんだろう? 体臭がくさいとかそんな嫌な感じじゃなくて、悪いものを退治してくれそうなそんな強さを感じさせる匂いだな」
木クレオソートは、ミイラにも使われていたほどである。
車を脇に止めて、3粒飲む。メシヤは水筒をいつも携帯している。
「丸薬っていまはほとんど無いよね」
腹に効くから丸ハラだ。
「あ、ちょっと落ち着いてきたかも」
メシヤは飲むとすぐ効き目を感じる。プラセボも甚だしい。
メシヤの場合は正露丸だが、便秘の人には毒掃丸が良いだろう。薬に抵抗があるなら、トマトジュースも効き目がある。
「良かった~、到着だ」
トイレで用を済ますメシヤ。
「お兄ちゃんお帰り~」
マナが出迎えた。
「うわっ、なにこの匂い!」
エジプト5000年の歴史が、口から迸った。




