アタリ娘と人は言う
「ラッキー、もう一本もらえるわ!」
コーラセマンの当たりを引いたマリア。
「マリア、よく当たるねえ」
打率はメシヤの5倍ほど違う。
「スーパーだといまは交換してくれなかったりするよな」
ここで買ったという証明をしなくてはならない。
「となるト、レシートが要るのかナ」
子供がそんなものを保存しているとは思えない。
「せっかく保管していても、換えてくれないこともあるらしいですわ」
当たり分の商品代はメーカー負担なのか店負担なのか。
「これは近所の駄菓子屋さんよ。昔からお世話になってるからそんな商売ベタはしないわ」
損して得とれ。
「このあいだオランダキャンディを見つけてテンション上がったよ」
あれにも立派な名前があった。
「アイスの棒もそうだが、自販の当たりもめっきり出なくなったな」
当たり付きの自販機自体が少なくなっている。
「確率なのか何缶に1個の設定なのカ、気になるところだネ」
エラーで2缶出て来た時はもらっていいのかどうか。
「100円玉で買えた時代は景気が良かったってことよね」
電子決済だろうが現金だろうが、コイン一枚入れる動作で商品取引が出来たことを思えば、120円のジュースは手間が三倍だ。回収の手間も増える。これが不況の一因でなくてなんであろう。電子ならすべて解決とならないのは、設置費、故障時のメンテ費も考慮に入れねばならないからだ。
「向こうに自販機がありますわ」
レマが指差した。
「うわっ、珍しい!」
競輪型の当たり付き自販機であった。
「へえ。1~8の車番からひとつ選べばいいのね」
みごと勝者を選べばもう一本である。
「これは確率高いヨ!」
なにも偏りがなければ、8分の1で当たりがもらえる。
「やってみようぜ」
メシヤは6、マリアは7、イエスは8、エリは3、レマは4を選んだ。
「500円入れれば同時に選べるんだね」
ただし、それ以上は投入出来ない。
《さあ、一斉にスタートだ。元気よく飛び出したのは青の6番》
「なに余裕ぶっこいてんのよ!」
完全燃焼せずサラ脚で帰ってきたら、マリアに絞められる。
《あ~っと、これはいけない! 3番と4番が接触だ~!》
落車までには至らなかったが、ランプが途中で止まった。
《8番がここから追い上げる!》
「しっかりしなさいよ、まくれまくれ~!」
マリアが自販機をパンパン叩く。巨人師匠も真っ青だ。
《お客様、エキサイトしないでください!》
6番と8番を抜き去り7番がゴールインした。
「今日はツイテルわね~♪」
腰に手をやり、スプライトを飲み干すマリア。
(あたり屋だ・・・!)




