ノン・フィニート
「へえ。先輩も絵を描くんスね」
絵で食える人が羨ましい。
「まあな。イメージを伝えるのにもっとも簡潔で的確な方法だからな」
俺の場合、言葉よりもボヤ~っと映像が浮かぶ。
「カッコいい車っスね!」
こんなものがあるといいなというアイデアは、まず紙に描く。
「頭でウンウン唸ってても、何も出て来ないからな」
下手でもいいから、表に出すことが重要だ。
「先輩は色彩感覚も独特ですよね」
ただたんに派手ならいいわけじゃない。音素と音素が曲を作るように、色素と色素も秩序だてばひとつの作品になる。
「塗り絵も正解はいくらでもあるよな」
ドラクエのモンスターは色違いで強敵になる。
「パチンコ台の新作も作れるんじゃないっスか?」
パチンコ台はすでにあるアニメ作品ばかりで、オリジナルは絶滅状態にある。
「俺はどうせならゲーム台を作りたいぜ」
躰を実際に動かす系が良いな。
「画面を見てポチポチボタンを押す系よりそっちが良いっスね!」
ワニワニパニックや太鼓の達人、クレーンゲームにジャンケンマンみたいなのを生み出したいぞ。
「クレーンゲームと似てるかもしれないっスけど、釣りゲームはどうでしょう?」
クレーンは掴めばいいが、釣りゲーは景品の鼻先にリングを付ければいいな。
「おっ、それいいな。もらうぜ」
ラフスケッチを描く。
「釣り竿の位置は固定で、景品の台が回るようにすればゲーム性は上がるな」
一回100円てとこだな。
「往年の魚釣りゲームの改良版っスね!」
商品のラインナップは無限だ。
「中身が分からないのをいくつか配置するのも面白そうだぞ」
漁具はタモ網バージョンがあってもいいな。そうすると獲物は珍種の昆虫型でもアリだ。
「これ、一人だけじゃ無くて何人も同時にプレイしてもいいですよね!」
本当の釣り気分になるな。
「ああ。ただ漁場を荒らす奴には要注意だな」
これが完成形ではない。未完の状態を残して置いた方が面白さがあるし、その後の展開も見込める。




