勘芸劫の寒稽古
「寒すぎだろ!」
先日の発言がフラグとなったミドル。
「だらしないわねえ」
ハローデン王国は北欧にある。彼女の名前はウィル・インゲニオース。
「運動量が足りないんじゃねーの?」
阿弥陀ススムは余裕の表情だ。
「ヒッショーは風の子じゃん」
供米田キョーコの道着は、半袖半ズボンである。
「風邪引いたら元も子もないぞ」
ダジャレっぽいがダジャレではない。
「アレ使えるんじゃ無いか? マイスナー効果」
ミドルは雲水翁の工学的サージカルオペレーションにより、磁気体質となった。電子機器の類いは、触れると壊してしまう。
「リニアにも使われている原理ね」
ウィルはオブライエンに憧れる物理系女子である。
「面白そうね」
リニア開通には、静岡が鍵となる。
「超伝導物質が必要だし、いくら寒いっていってもマイスナー効果を起こすほどじゃないぞ」
実験台にされそうで嫌な予感のするミドル。
「雲水師範が持ってない訳ないじゃない」
ウィルは辰砂と液体窒素を準備した。かつては日本でも産出されていた辰砂は、丹砂とも呼ばれ、霊薬であった。
「なんかあぶねーことしようとしてる!」
逃げ出すミドル。
「捕まえて!」
あえなくススムとキョーコに挟まれる。
液体窒素で辰砂を冷却するじゃじゃ馬娘。
「お前ら、俺をおもちゃにしやがって!」
「我慢なさい! これも人類のためよ」
「やめろ、ぶっとばすぞ!」
ウィルたち破軍のヘルメシヤ一行は、キリアテヤリムの櫝を護る使命がある。
「うわわわわーっ!」
ミドルがふわりと浮かんだ。
「実験成功ね!」
美少女戦士のような決めポーズをするウィル・インゲニオース・ハローデン。
驚異的なジャンプ力を誇るミドルであったが、空中浮揚にはまだ達していなかった。
(また、差を付けられてしまうのか? ミドルよ)
「お見事ね、ヒッショー!」
※この物語はフィクションです。決して真似しないよーに。




