009 アメリエの宿の夜
ユウキ達は、夕食と風呂のあとそれぞれの部屋に戻った。武器の手入れをする二人にユウキは声をかけた。
「お風呂、凄かったですね。お城にいた頃みたいでした。」
「ん? ああ、国営だからな、そういう所にも力が入ってる。風呂だけなら他でもあるが、食事、衛生、安全性も含めて全て高水準なのは国営宿だけだ。」
「要人が使うからな、職員として必要な技能に戦闘能力すら求められる。特に安全性でいえば国営一択だろう。資金が必要だが他国でも出来る限り国営に宿泊する」
「ここに慣れすぎたら、野営が辛くなりませんか?」
「それはそれ、これはこれ。十数年もしてれば野営は慣れたよ。大仕事だと、むしろ高くても休める方がは大事だ。」
シバスとハインケルは、剣を仕舞うとユウキに向き直った。
「それにしても、慣れたものだな、最初に会った時はかなり緊張していたのに。たった数日で抜き身の剣を向けられても無駄な力が入らなくなった。」
「そうだな、剣を向けるのも怖がっていたのが、斬りかかるごとに物怖じしなくなった」
「?」
ユウキは自分の両手を見つめて、アメリエに来るまでを振り返った。そして驚いた表情を浮かべた。
「そういえばそうですね、気がつきませんでした。」
「まあ、無力で怖じ気づいた奴じゃ困るけどさ。話は変わるけど、ユウキ、お前姫様が好きなのか?」
「シバス!?」
「へ!?」
ハインケルは二人の成り行きに任せるつもりだった。そのためここでそれを聞くのかと驚いた。
ユウキは自分はそんなに分かりやすいのだろうか、リリアにも気付かれていたのたろうかと恥ずかしくなった。
「その、たぶん、はい。」
「そうか、惚れた女の前じゃ格好つけたいよな。」
シバスは何度も頷いた。
「俺がアドバイスしてやろう。ピンチの時は絶対に助けろ。不器用な格好つでも、自分のおかげで助かったと、そう感じさせるんだ。」
「……」
「……」
「……」
「なんだよ?」
「……それだけですか?」
「ん?」
「シバス、もうちょっとこう、何かないのか?」
「何かって何だよ」
「……」
「……」
部屋は沈黙に包まれた。
「分かりました、とにかくリリアさんを守れば良いのですよね。」
「ああ! そうだよ! 戦場なんて危険ばかりだ、だから何が起きるか分からない。だから、目を離すなよ!」
「はい!」
男達の夜は恋話で過ぎていった。
「良いお湯でした。」
「国営宿のお風呂は本当に最高ですね。」
「う~、明日からまた野宿だと思うと辛いです。」
「アイカさんは、あまり野営はしたことがないですか? 城勤めだとしても、遠征とか、異動とか有りそうですけど。」
「幼い頃は兄に連れられて色々な所に行きましたけど、学院に入る頃からずっとニルヴァにしか居ませんでした。正直外はあまり慣れていません。」
その言葉にリリアは驚いた。
「そうだたったのですか? とてもそうは見えませんでした。」
「ありがとうございます姫様。実は外泊は慣れていませんが、魔獣討伐で出ることはあって、休息の取り方は経験が有ります。今回はベテランさんが指示を出してくれるので、それに甘えています。」
アイカはリッカの方を見た。
「それが仕事だもの、存分に頼って。」
しばらく話に花か咲かせた後、リッカが気になっていたことを切り出した。
「ねえ、ずっと気になっていたのだけど、どうしてメイちゃんは静かなの? 話せない訳でもないし」
アイカとリッカがメイに話を向けた。
「…………」
注目されてメイは視線を彷徨わせた。リリアがてを握って声をかける。
「メイ、大丈夫よ。落ち着いて、少しずつで良いから。」
「はい……」
メイは深呼吸して、そわそわして話し出した。
「その……話す…………慣れて……ない……」
「それだけ。」
メイは何度も頷いた。
「返事……出来る……簡単……短い…………話す……分からない…………何……?」
「何を話せば良いのか分からない?」
「それだけですか、良かった。何か大きな問題があるのかと思ってました。」
「……問題……大きい? ……姫様……言ってた」
「そうなの?」
「城でも他の侍女やメイド達と合わなかったの、メイは何でも出来てしまったから。周りとの距離が開くばかりで。」
「メイ……苦手…………周り……メイ……怖い……難しい……」
「姫様、つまり?」
「メイは他の人達が苦手で、周りもメイを怖がってしまったので仲直りが難しいのです。」
「でもさ、城から出てきちゃったし、もう良いじゃん。私達と仲良くしてよ? 宜しくね。」
アイカは手を差し出した。メイはリリアを見て、リリアが頷いたことを確認してアイカの手を握った。
「……宜しく」
二人の手が離れたことを確認してリッカも手を差し出した。
「私からも改めて宜しくね」
「……宜しく」
「良く頑張りました。」
リリアは二人と握手が出来たメイの頭を撫でた。メイはリリアに抱きついた。
「姫様……頑張った」
彼女達も仲を深めた。




