008 アメリエの町
朝早くに発ち、大蜘蛛に出ればシバスが足や頭を切り飛ばし、大蛇はアイカが氷で串刺しにして。昼を越えた頃頃に麓の町アメリエに駆け込んだ。
「やっと着いた、宿は国営で良いのか?」
「そうだ、『山越え』に向かってくれ」
「了解」
馬を進めて宿に着いた。ユウキは町はずれにあるやけにきれいな宿に驚いた。
「ここですか?」
「そうだが? 何かあったか?」
「いえ、町の雰囲気と随分違うと思いまして」
そう言って、ユウキは振り返る。どの建物もずっとそこにあったかのように馴染んでいるが、自分達の宿だけ新築感が強かった。
「ニルヴァ皇国は国内のたいていの町に宿を持っている。自国や他国の賓客を泊めるため常に魔法を使い綺麗にしている。高位ハンターのギルド依頼報酬や高級志向の商人がだったりが高額で泊まったりもする。」
「俺達も何度か来たことがあるが、見た目通りにサービスが他と違うぜ」
「高級過ぎて普段は泊まらないけど、今回の依頼は何度か泊まれるのが良いところの一つね」
ハインケルがユウキの問いに答え、シバスとリッカがそれに相槌をうち、宿に入って行った。
男性組と女性組の2部屋を借りて、男性組の部屋で行程の確認を行った。
「買い出しはシバス、リッカ、アイカの三人で、私はユウキ殿と姫様の訓練だ」
「待った、今日は俺とリッカで坊主達の面倒を見る」
ハインケルの言葉にシバスが発言する。
「そうか、構わない。買い出しは私とアイカの二人で行ってこよう。明日は昼まで自由行動。昼食後に移動再開だ。」
昼食後、ユウキ達は宿の空き地に集合した。
「お前ら、4日ぶりの本職の飯だ、旨かったか?」
「はい、美味しかったです。」
「本当に美味しくて驚きました。お城にいた頃を思い出したました。」
「そいつは良かった。さて、訓練の前に確認したいことがある。」
シバスはそこで一拍おき、緊張した様子で話を切り出した。
「昨日ウルフを切ったが、どうだ? 今日も闘えと言われたら出来るか?」
「私は出来ます。」
リリアがはっきりと答えた。
「命を奪うことは初めてではありません、ずっと教えられてきました。私は大丈夫です」
「……」
「ユウキ、お前は?」
ユウキは、少し間をおいてこたえた。
「たぶん……出来ます。」
「そうか」
ユウキの表情を見たシバスは、そう言って口元にに笑みを浮かべた。
「なら、今日の訓練を始めよう」
そう言ってシバスは、腰の剣を一つユウキに渡した。
「ハインケルは、剣の振り方や攻め方を教えていたな。アイカは魔法の使い方、まあどちらにしろ自分から何かすることを教えていたはずだ。俺が教えるのははこいつだ」
シバスは腕のバックラーを示した。
「ユウキ、お前は殺される前に殺す、それが出来た。攻撃するのは最低限出来るようになった。しかし足を噛まれ動揺したらしいな。つまり攻撃される側の経験も積む必要がある。」
ユウキは、治癒魔法によって回復した足の痛みを思い出した。
「そこで、お前らは剣を構えろ。そこに俺が打ち込む。最初は受け止めからだ。剣が飛ばされないようにしっかり構えとけ。」
「はい。」
ユウキとリリアは何度も剣を弾き飛ばされた。その度にシバスから指摘が入る。
「今日はここまで。ユウキは3つ4つ前の注意が意識がから消えて何度も同じ方法で躓く。姫様も構えとか基本をしっかり守っているが、受け身の技術が足りていないのかフェイントに弱い。まあ、二人とも頭だけではなく経験から感覚をつかでくれ。」
「ありがとうございました。」
五人は宿に戻る。
「シバスさん凄く上手でしたね。あんなに剣を向けられたのに傷一つありません。」
「当たり前だ、こっちはプロだそプロ、素人相手にこれくらいできなくてどうする。まあ、ある程度出来るようになったら怪我させることも織り混ぜてやるから覚悟しろ。というか本番はずっとそうなる。殺されないように気を付けろ。」
一瞬ユウキはウルフの幻がよぎった。
「……はい、今度は負けません。」
シバスは、口元に笑みを浮かべた。ユウキの背を軽く叩いた。
「本番じゃあ飛ばされないように気を付けろ、坊主。」
そんな二人を見ていたリッカはシバスに呆れていた。
「はぁ、あの気の良さを子供達にも見せたら良いのに」
「!?」
リリアは驚いた。しかし訊ねることはしなかった。




