006 対魔獣初陣
2日経ち山を登り始めた。山間部で一泊野営、山を越えて麓の町アメリエの宿で2泊休暇という行程だ。ユウキは出発の前にハインケルから、魔獣を相手に戦うかもしれないと聞いて緊張していた。
「大丈夫ですか?」
リリアがユウキに問いかける。
「大丈夫じゃないかもしれないけど、やってやるさ」
ユウキの声が震えて、アゼルカイトの鞘を握る手に力が入っているのがリリアにはわかった。
「大丈夫ですよ。皆さん強いですし、安心してください」
「うん、そうだね。でも戦わなくちゃいけない時が来るんだ、訓練だって始めたんだ。だから……」
リリアは、ユウキが感じているものが恐怖ではなく、緊張であると分かった。
「そうですね、大丈夫です。だから思い詰めたりしないでください。」
ユウキの緊張とは裏腹に、襲撃もなく時間が過ぎた。
野営地点に着いて準備をする、シバスとアイカが狩りに出る。ユウキとリリアは、ハインケルから山の歩き方について教わっていた。
「東、魔獣ウルフタイプが来てる、警戒!」
唐突に、近づいて来たリッカがユウキ達に聞こえる位の声を出す。一拍おいて構えていた弓から矢を放った。
森の影から飛び出して来た先頭の一匹の額を刺さりウルフが吹き飛ぶ。しかし次々とウルフが飛び出して来る。
「ユウキ殿と姫様は自分を守っていてください。数を減らします。」
ハインケルは、ロングソードを抜き右手に回り込もうとしたウルフの胴を両断するとそのまま次のウルフに剣を振るった。
ハインケルを抜けて3匹のウルフがユウキ達に迫る。メイがナイフを投げてウルフを分断した。真ん中の迫り別のナイフを突き立てた。残った2匹はそれぞれ近くにいるリリアとユウキに牙を向けた。ここでリッカが、ユウキに声をかける。
「実戦です。目の前のウルフを倒してください。死ぬと判断すれば私が撃ちます。大丈夫です、向こうは貴女だけを意識しているわけではありませんから。」
「えっ、は、はい!」
驚いた隙にウルフが足に噛みつこうとして来た。噛みつかれまいと、咄嗟に口の間に剣の刃を入れる。危険を感じたウルフが肉ではなく刃を噛んだ。
「こ、このぉ」
ウルフの勢いに体勢が崩れる。ウルフが刃を口で押さえたまま、爪を振るい足を裂く。
「あ、あぁぁぁっ」
痛みに立っていられず転んだユウキに、刃から口を離したウルフが飛びかかった。
「ヒートソード!」
ユウキはパニックで咄嗟に剣を振り上げ、ウルフを切った。力の抜けたウルフが落ちてくる。重さと肉と血の感触にユウキは呻いた。
「よく頑張りました、もう大丈夫です」
ウルフの亡骸をどかして、リッカが声をかける。ユウキは痛みで答えられなかった。
「大丈夫ですか!? ユウキさん。」
同じくウルフを倒したリリアが駆け寄って来る。
「足を治します。」
ユウキは足の傷が治まっていくと同時に強ばっていた身体から力が抜けていくのが分かった。
「他のウルフは?」
「ほとんどハインケルさんが倒しました。大丈夫です。」
「リリアは、大丈夫だったの?」
「……ええ、大丈夫でした」
「そうか、凄いね、僕はこんななのに」
ユウキは襲撃の緊張から、大丈夫と聞かされて安心した体に全く力が入れることができなかった。
「ユウキさんは剣を握って数日ではないですか! 私はこれでも6つの頃から訓練してきました、ユウキさんこそ凄いですよ」
周囲の警戒を終えたハインケルが、近づいて来た。
「群れは殲滅したようです。増援はありません。ユウキ殿良くできました。安静にしてください。リリア様も今日は休んでください」
「そうさせていただきます。ユウキさん行きましょう。」
リリアはユウキのてを握った。
「うん、ありがとう」
ユウキは、引っ張られてふらふらしながら起き上がった。
「メイ、行きましょう。手伝って」
「はい」
敷物の上に移動したら、ユウキとリリアはすぐに眠ってしまった。




