004 旅立ち
翌朝、ユウキは荷を詰め込んだ馬車と仲間達と城門前に集まった。アルバートから伝えられた通りに、ノールが居て、彼が出発を見送るらしい。
「リリア様、幸か不幸かあなたは才を持って誕生された、我々はその才を磨き上げる育て方をしてきた。魔王のという脅威の前にそうするしかなかったとは我々の言い訳です。今日この様な日を迎えられたのは複雑ですが喜ばしく思っております。
皆様、この先再び此処に戻って来ることもありましょうが、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
「行ってきます」
ユウキ、リリア、メイが馬車の客車に乗り込み、御者席にリッカが着き、シバス、ハインケル、アイカがそれぞれ馬に乗る。昨日行った商店街ではなく、通行人の少ない貴族街を抜けて、ユウキ達はニルヴァ皇国から旅立った。
「さて、これからの予定を改めて確認しましょう。」
「分かりました」
「私達は、6日かかる距離を約10日とゆくっり時間をかけてニルヴァ皇国国境にあるタカトット城に向かいます。これは、私達が旅に慣れるためであり、常識、武術、魔法などユウキさんに勇者として必要となる能力を身につけて頂くための時間でもあります。」
「はい。」
素人の僕が、本当に戦えるのだろうか。ユウキは訓練の前から緊張してきた。
「移動は少なめで、休憩地点に着いたら、まずは剣術からでしょうか? 最初はハインケルさんが相手になります。他の方は、狩りと休憩と自由行動といったところでしょうか。」
「はい。」
「何か、質問は有りませんか?」
「ええと……」
ユウキは、緊張から答えられなかった。その様子からリリアは話題を変えることにした。
「ユウキさん、私はニルヴァ城から遠くに行ったことがないのです。」
「そうなのですか?」
「外を見てください、あちらに山があります。あの山をこれから越えていきます。すると、見たこともない世界が広がっているはずです。どうですか? わくわくしてませんか?」
ユウキはつられて外を見た。一面に広がる青草、山と城を繋ぐ一筋の道、城も町も外も3日前には見たこともない世界が広がっている。この世界に残ることを決めたのは彼女に惹かれたから、でも悩んだのは、こんな世界をもっと見たい、わくわくしたからだった。自分が望んで、自分が決めたのにユウキは逃げそうになっていたことに気づいた。
「そうだね、わくわくするよ。この先に何が待っているんだろうって。」
「やっと笑ってくれました。昨日も笑っていましたが、また暗い顔をされていたのですから。」
「ごめん、考え込んでいた。また悩むだろうけれども、今はまだ、この景色を楽しんでいるよ。」
恐怖も後悔も押し込んで、魔王のことも、この後の訓練も忘れて、会話もなく今見ている景色と、山の向こうのタカトットの街、さらにその先まで想いを馳せて楽しんでいた。




