025 ゾグ砦の変化
「姫様……」
「仕方がないだろう。姫様が決められたのだ。」
リリアとジュリウスから少し離れた場所で、メイとハインケルは見守っていた。
「それで、どのような話でしょうか?」
「明日、貴女も前に出て戦うというのは本当ですか?」
ジュリウスは、淡々と訊ねた。
「ええ、そのつもりです。」
「私は、貴女は多くの人々を助けたいのだと思っていました。タカトットの街から聞いた報告でも、初めて出会ったあの場所でも、今日も、その術で貴女は多くの人々を治療してきました。むしろそのためにここに来たのだと。」
そこで、ジュリウスは哀しそうな表情で、言葉を切った。口が動いても言葉が続かない様子だった。
「私は、魔王を倒すためにここに来ました。それが、私達の役目です。だから戦います。」
「……分かった。でも、無理をして倒れてほしくないんだ。いざと言うときは、私が引きずってでも医務室に連れていきます。」
「分かりました」
「明日も長いです、ゆっくりとお休みください。また明日。」
「ええ、また明日、お休みなさい。」
ジュリウスは去っていった。
「宿舎に戻るわ。」
ハインケルと別れ、メイを連れてリリアは、寝室に戻り眠りについた。
「獣人どもはバカばかりであるな。矢鱈に突撃し、討ち死にする。昔から変わらん。」
「……」
「相手は、守勢だ、危険な上方は物量で防ぎ、正面は実力で対抗する。ハイント、お前は何故策を打たなかった?」
ゾグ砦には、数日前から魔王軍第一軍団長グラドがいた。彼は砦を任せていた部下と共に今日を含む戦いの確認をしていた。
「一つは、バカはバカだからです。言っても聞きませんでした。もう一つは、無理をすることもないからです。あの様子では、砦を落とすのではなく削りに来ています。いくら削られても、グラド様が攻めに出ればこの砦は無価値です。
「そうか。」
「加えるならば、こちらと同時にあちらも削られるのは同じです。運が良ければ、バカどもが相手の上澄みを削る事を期待していました。」
「で、結果は?」
「零ではありませんでした、しかしグラド様にの前では有って無き様なもの」
「そうか」
「明日はどうされますか?」
「我の存在を知らしめるぞ、奴らに覚悟を決めさせるのだ。もうすぐハインバックも終わりだということをな。」
グラドは不敵な笑みを浮かべた。
「それでは、向こうにグラド様に対する準備をする時間を与えてしまいますが、よろしいのですか?」
「今更何を、ハイント忘れたのか? 我等の目的を。」
「私は……」
「そういえば、お前は我のために着いて来たのだったな。」
「……」
ハイントは、不服そうな表情をした。
「ハイント、我が命を燃やせるような闘いこそ望むところだ。そうならぬよう全力を尽くせ。」
「はい」
グラドは部屋を出ていった。
「早く本隊が来てください。でなければ、グラド様が死んでしまうかもしれません。」
ハイントはいつも不安だった。




