020 目覚め
「ここは何処だろう」
ユウキが目を覚ました時、部屋には誰もいなかった。窓から差す日とそとの喧騒が今は昼であることを伝えている。とりあえず、生きて次の町に着いたこと、ここは宿屋である事は分かったが、アイカさんや他の仲間達が無事なのか頭の中で考え続けていた。暫くぼんやりと考え続けていたが、部屋の外から足音が近づいてきて、扉が開いた。
「お、起きたか! 果物買ってきたから食べろよ。切ってやる。」
果物の入った籠を持って部屋に入ってきた、シバスと目が合った。
ユウキは、食べ易いように切られた果物を食べながら、シバスからララシータが去ったこと、ハインバックの部隊が助けてくれたこと、アイカを含め皆生きていること、おそらく狙われているため助けてくれた王弟殿下の居る部隊と暫く行動を共にすること等の話を聞いていた。
「さて、起き抜けに色々一度に話しすぎたが、状況は理解できたか?」
「たぶん。」
「他に分からないことがあれば聞いてくれ。」
ユウキはシバスから顔を背けた。
「……シバスさん、僕は勇者に成れますか?」
「成れるかもって、今は思ってるよ。昨日のララシータ、あいつから逃げなかった。挑まれて、死ぬかもって脅されて、それでも自分から立ち向かった。そういうことが出来るのはすごい奴だよ。」
シバスはユウキの頭を撫でた。
「良く頑張った。お前が生きてて良かった。」
ユウキは、無我夢中になって振った剣と、飄々としたララシータの表情を思い出す。
「とても強かったです、シバスさん達でも勝てなかったでしょうか?」
「一対一じゃあ確実に無理だ、全員で挑んでも勝てないかもしれない。そう感じさせる相手だった。」
ユウキは、改めて魔王軍という存在に恐れを感じた。一月以上共に過ごして、未熟な自分を守ってくれる、育ててくれる、とても頼りにしてきたそんな彼らでも勝てない相手がいる。かつて戦争で多くの戦士が亡くなった。魔王が出るまで互角だった。そんな記述が仲間が死ぬ可能性とともに思い出された。だから魔王に勝てるそんな勇者が必要なのだと、ユウキは再び実感した。
「俺達に出来るのは、戦いに慣れて強くなることだ。そして、生きていればいい。たとえ一度逃げても最後には勝てばいい、つまり魔王を倒せばいいんだ。だからララシータに今勝てなくていいんだよ。暗い顔をするな。」
シバスはユウキの頭から手を離して立ち上がった。
「そろそろ帰ってきてるだろうし、姫様達にお前の目が覚めたって伝えてくるよ。」
シバスの出ていった部屋で、ユウキは棚に立て掛けられたアゼルカイトを眺めていた。
「どうして僕を選んだんだ? 本当にアゼルカイトが選んだのか? そもそもどうやって選ぶんだ? なあ、教えてくれよ。」
精霊剣とは何なのだろうかとただ答えもなく考えていた。




