018 エルフのララシータ
「そのエルフが何の用だ、なぜここに居る。魔王大戦以降目撃証言の無かった貴様等がなぜ、」
「そうだね、強いて言えば君たちに興味を持ったからさ。」
「興味だと?」
「そう、君たちは不自然なんだ。例えば、君は軍人だね。その鎧は何度も見たことがある。それから、死にかけの彼女の服、魔法使いの制服だ、つまりこちらも軍人。だけど彼は剣に盾に皮鎧、攻撃、回避、防御、何でも一人でやろうなんて格好は軍人じゃない。それに、彼女は動きやすさと森での隠れやすさを重視しつつもオシャレに気を遣うようなワンポイントのリボン」
「な、なな」
リッカが、動揺したがララシータは構わすに続けた。
「二人は軍人じゃない、つまりハンターだ。そしてそこの彼女、姫様と呼ばれていた。メイドもいる、なる程、お忍びの姫様とそれを守るもの達そう考えられた。だが、彼は、彼だけは分からない。才能があるかもしれないが、未熟で、それに姫様を守るようで、他の者に守られている。彼は何者だ?」
ハインケルは言葉につまった。いつから見られていたのか、そして勇者以外になんと答えればいいのか分からなかった。
「ただの坊主だよ、ただのガキだ。何者かになるのは、これからだ。」
シバスがはっきりと答えた。 シバスにとって勇者とは憧れだった。精霊に愛される者や選ばれるものではなく。御伽噺の英雄のようなものだった。だからユウキを勇者として見ていなかった。だからララシータは納得した。
「これからか、答えてくれてありがとう。なるほどなるほど、フフフ、そうか、これからか。」
ララシータが微笑んだ。
「いいだろう、少年の治療も終わりだろ。残り少ないこれからに私も期待したいだから、一対一だ。それで確かめさせろ。」
「「「何!?」」」
「手加減もしてやろう。最も、それでも死ぬかもしれないけれどね。これを受けてくれるなら他の者に手を出さないと誓おう。」
「信じられるか!」
「そうかもね、でも、私は強いよ。君たち七人でも私は勝つと考える位には。そんな自信がなくちゃ他の者が一人で行かせてくれないからね。」
シバスは思い出した、道の反対側からも矢が射かけられたことに、つまり他にも敵が居ることに。ハインケルは気づいていた。目の前のエルフの強さがはったりでないことに、だからユウキを戦わせたく無かった。
「分かった。」
「ユウキさん!
「他の人に手を出さない。だよね。」
「ああ」
「リリア、アイカさんを」
「……はい、任せてください。」
「手加減してくれるんですよね。」
「ああ、君が弱いからね」
「いいのか? ユウキ君。」
「はい。」
「ユウキ、訓練じゃねえ、本番だ。俺達を気にするな、相手だけを見てろ。」
「はい。」
「ユウキ君、死なないでね。」
「はい。」
「ユウキ、頑張れ。」
「「「!?」」」
「そろそろいいかい?」
仲間からの応援を受けたところで、剣を抜いたララシータが声をかける。
「いいですよ。」
「そうかい。じゃあ……」
ララシータが攻撃すると言わんばかりに、構えた。
「死なないでね。」
ユウキには一瞬で距離を詰められたように感じた。そのまま切り結ぶ。
「簡単には。」
二撃、三撃と続く連撃を必死に防ぎ続ける。しかし、ララシータにとって、手加減した軽い攻撃に過ぎないのだと周りからは一目瞭然だった。底の見えないララシータの強さにシバスとハインケルは周囲よりも、ララシータに注意を向けてしまうほどだった。
(何でこんな奴が魔王軍の非支配領域に居やがる、どうなってんだ!)
(強い、本当に全員で戦っても勝てない可能性も。いやそれよりも確実に死人が出る。)
勝てない、そんなことはユウキは分かっていた。勝負の終わりも決めていない。それでも、ただ無心に剣を受け、剣を振り続けた。少しずつララシータの剣は鋭さを増していく。ユウキの限界もまたそれに伴って伸びていくようだった。
剣を振り続けたララシータが、ユウキから突然離れる。すると、氷と土の矢が何本も飛んで来た。
「またね。」
ララシータはそのまま森の奥に消えていった。




