017 ハインバック城に向かって
タカトットを出発して早六日、2つの村を越えて変わらず進み続けている。ユウキは魔獣に対して問題なく剣を振れていた。素人とは言えない技術と判断力を備えており、C級ハンターも過言ではないとシバスも言った。
「今日の夜中には都市グラスラムに着くハインバックまで半分は越えたぞ」
「タカトットを越えてから、魔獣の襲撃が増えたな。だんだん周辺の鎮圧が出来なくなってきているということか。」
順調な旅路であるが、魔王軍という脅威に近づいているためか、一行の空気はどこか暗いものとなっていた。
数刻で森を抜ける、そんな時に、藪の中に金属の光をリッカは見つけた。
「敵襲!」
その言葉とともに矢が襲いきってきた。四人は馬が痛みで暴れる前に降りたか、矢を避けきることは出来なかった。
人影が飛び出してきて、アイカに斬りかかった。
「獣人!」
なんとか避けたものの、怪我と敵味方距離近すぎてすぐに魔法を使えなかった。
矢が来なくなったことで、馬車の三人も迎撃に飛び出た。シバスとハインケルを相手に集中していた獣人は、数人がメイに対応できず斬り倒されたが、20を越える剣持ちと森に潜む弓持ちには敗北しか見えなかった。
しかし、不自然に命を狙わない矢と、タカトット襲撃よりも未熟な戦士に、奇妙な均衡が生じていた。回復出来ない状況で、矢傷の深いアイカが、魔法を唱える間隔が延びてきたため、ハインケルが無理をした。孤立と負傷を覚悟しての突撃を決行した。
鎧を打ち付ける剣と矢を無視して、動揺した獣人達を叩き殺す。シバスとリッカとメイも集中の途切れた獣人達を殺していく。
ユウキがリリアを狙った矢を弾き飛ばした。それは頭部と心臓、命を狙う矢だった。
それからの矢は速さと狙い良くなった、全員が軽くない傷を負いながらも、獣人を殺していき、5人を切ると獣人達が撤退していった。
静かになったが、潜む弓兵までもが撤退したといい気れな切れないため、緊張を解くことが出来なかった。
「姫様、ユウキ、アイカの順に回復してください。ユウキ殿が動けるならば私達の選択肢も増えます。」
「はい……」
ユウキは意識があるものの、リリアを庇いながら戦うには未熟で深い傷がいくつも作られて、出血も酷かった。アイカの出血はそれよりもかなり酷く、意識は既に無い状態だった。
「急いで、誰か来ているわ。」
リッカは、小声で注意を促した。
「おや、気づいたのか。驚いた。」
森から声が聞こえて、はっきりと誰かが近づいてくるのが分かった。ハインケルとシバスが警戒する正面から、一人の女性が現れた。
「魔王軍なのか?」
「だが、獣人じゃない? 人間?」
シバスとリッカが、出てきた相手が獣人でないことに困惑する。対してハインケルはより気を引き締めた。
「エルフだ」
「エルフ!?」
「さすがだな、知っている者もいるとは。私の名はララシータ。見ての通り魔王軍のエルフだ。」




