016 復興、ムバタ商会
魔王軍の襲撃から一月近くが経った。獣人の生存者は襲撃の翌日には殆ど無かった。人々はそのまますぐに瓦礫の除去、路面の舗装などの復興作業に行動を移した。十日後には事情を知る外部の商会が来て復興は加速した。復興は順調に進んだ。
「本当に行くのか?」
「うん」
「タカトット襲撃は、市民が大勢殺された。ハインバックの最前線は市民は居ないが、ここより多くの兵士達が、人が死んでいる。そこから目をそらすことは難しいが……」
「僕は中途半端に目をそらしたまま、ここにいてはいけないと思いました。逃げるのは最悪に踏み入れてからだと」
「分かった、行きましょう。他でもない貴方が決めたのならば。」
ハインケルは構えを解き、表情を柔らかくした。
「本日はここまでです。後は自由行動にします。街に行くもよし、休息するもよしです。私は、物資の再確認を行います。明日、明後日には出ることにしましょう。今夜皆と話し合いましょう。」
「はい、ありがとうございました。」
ユウキは、休息のため庁舎に戻った。
庁舎で、復興の物資を一早く運んだムバタ商会の商会長と護衛のハンターと出会った。
「これはこれは勇者様。本日はお日柄も良く、それで本日の訓練は終了致しましたか?」
「グレンデルさん。そうですね、本日は終了です。」
「ほう、では、ムバタで買い物などどうですかな?」
「いいえ、本日はこのまま休みにしようかと。」
「ほう、ではもう行かれますかな?」
「行く?」
「はい、お気をつけて。私はもう少しだけここで復興の手助けを続けます。あなたの行く先に幸あらんことを」
翌日、ハインバック側街門には、ユウキ達だけでなく見送りをする人々が大勢いた。
「皆様がいて助かりました。被害も大きく、復興もさらに遅れていたでしょう。今日までありがとうございました!」
「治安の面でも想定よりも問題を起こす者が少なかったのは姫様方が居られたからです。本当にありがとうございました!」
「必要なものがあればぜひムバタ商会にお立ち寄りください。皆様の助けになれるでしょう。また会いましょう!」
馬車が出発して、門を出た頃ユウキとリリアが窓から身を乗り出して振り返り手を振った。
「皆様お世話になりました!」
「こちらこそありがとうございました!」
1ヶ月決して短くない時間を過ごした。勇者は未熟なまま一行は不安を抱えながら道を進んだ。向かうはハインバック城とその先ゾグ砦、対魔王軍の最前線である。




