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ユウキの旅  作者: 八津
15/25

015 ここは異世界。

 怪我人、死人、崩壊した町並み、死んだ人、死ぬ人、殺す人、殺される人。ユウキは戦争という言葉を実感した。魔獣と違う殺しにくる相手がいた。剣を持つことには慣れた、虫や獣も殺した。ユウキはまだ、『人』を殺せなかった。


 

 ハインケル達は庁舎の一室に集まっていた。

 「つまり、坊主は俺が格好良く送り出したのにだ、なんの活躍も出来なかったと。」

 「……」

 「シバス。」

 「……まあ、必要に駆られて虫や魔獣を倒すのとは訳が違うか。」

 「ユウキ君をこのまま、戦場まで連れていっていいのかしらね?」

 「目の前で敵が死ぬ度に、ああも呆然としてられたら、彼が死んでしまいそうです。」

 「少しここで時間を使おう。被害の復興の手伝いをすれば気が紛れるだろう。」

 「そんな問題でもないが、折り合いをつけてもらうしかないか。姫様はユウキの側に居るんだよな。そっちに期待しておくか?」

 大人達はタカトットに残ると提案することに決めた。



 「ユウキさん。大丈夫ですか?」

 リリアはユウキを庁舎の一室に連れてきて、改めて声をかけた。

 「大丈夫? だよ。うん。」

 「……良かったです。」

 それから二人は、言葉をだすことなく静かに時が過ぎた。

 「ねぇ、リリア。リリアは、敵を殺した事があるの?」

 止まっていた時が、唐突に動き出した。ユウキは窓の外を眺めながら言葉を発した。リリアは、気負いも焦りもなく、普段の通りに言葉を返した。

 「魔獣を殺したことはありますよ。でも、魔王軍という意味ならありません。ニルヴァは戦場から離れていますから。あそこまで来たことはありません。今日だって、治療ばかりで私は剣を振るいませんでした。」

 そこで、言葉が止まる。ユウキは何も返さない。リリアは、言葉を続けた。

 「ですが、治療できるのにしなかった。これは殺したといっても過言ではないのでしょう。もし彼らを治療したとして、殺しに来て、そしてまたきっと死ぬまで戦うのに。」

 「だとしたら、僕は……」

 リリアは窓に写ったユウキの表情が、とても不安定な状態に見えた。

 「ユウキさん。苦しいですか?」

 「……」

 「私達があなたに苦しい思いをさせているのです。ですから……」

 「……言わなくていい。」

 「……」

 「ごめん、でも、もう少し甘えてもいいかな?」

 「甘えてなんて、甘えているのは私達の方になるのです。出来ないことを代わりにしていただこうとしているのですから。」

 「……そうかもしれない。けど、それでも……」

 二人は再び黙してしまった。リリアがユウキの手をゆっくりと握った。

 「よろしいのですか?」

 「ごめん。」

 「いいえ、それが……それも私達の弱さなのです。」

 しばらく後、扉の外からノックされた。

 「姫様、そろそろお休みになりましょう。」

 「はい、ユウキさんもお休みになりますか?」

 「いや、もう少しだけ。こうしているよ。」

 「そうですか」

 リリアはユウキの手を離し、扉のノブに手を掛けた。

 「良い夜を。おやすみなさい。」

 「うん、おやすみなさい。」

 ユウキはただ、空を見つめていた。 

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