014 襲撃の終わり
ユウキはリリアの声が聞こえたが、真っ白になった頭では静かに剣を構えたまま体を動かすことも出来なかった。その様子からリリアはどこか怪我をしたと思い駆け寄った。
「リリア様、ユウキは大丈夫! こっちのが重症です!」
「……はい!」
リリアはユウキから離れて重症者に向かった。
「大丈夫ですよ。」
傷が塞がり動けるようになった衛兵は、起き上がり別の瓦礫に向かって歩きだした。もう一人の衛兵も近づいてくる。
「あ-」
「どうかしたされましたか?」
「いや、無理かなって。」
「この下にいらっしゃるのですか!?」
「シュウト……」
「まだ、助かるのでは?」
リリアは瓦礫を動かし始めた。三人もそれに続いた。見つかったもう一人は既に事切れていた。
「まあ、そうだよな。行きますか。」
「……」
「ハインケルさん、ユウキは?」
「やはり怪我はない、こちらも移動には問題ないだろう。」
「行くよ、リリア様」
「危ない! 姫様!」
メイが4本の矢を弾く。射手は瓦礫の向こうに離れていき、追いかけることは出来なかった。
「またですか。何人かああして逃げられた相手がいました。腕がいいので倒しておきたいですが、捕まえることも出来ませんでした。」
「もうすぐ日が沈みます。庁舎に合流しましょう。リッカさんは?」
「彼女は他のハンターと行動しています。無事であれば戻っているでしょう。行きますよ。」
「あーあ、ダメか~」
「無事でしたか、姫様。」
「うん。被害はどうなってる?」
「こちらは全員無事です。」
「なら、そろそろ引き上げますか?」
「分かりました、あちらはどうしますか?」
「死ねばいいんだし、好きにさせておけば? そもそもガベーが死んだんだから私達が一人一人声かけるの? わざわざそんなことしたくないんだけど。」
「……そうですか、分かりました。そういえば、ここに『希望』は居りましたか?」
「んー、そうだね、居なかったかな?」
「それにしては、機嫌が良さそうですね。」
「うん、大きな街には面白い人達が居るね。まあ『希望』にはならないけど。」
「……皆に声をかけてきます。撤退だと。」
「お願いするね。」
一人になった彼女は笑う。そして彼女達は夜の闇の中、街から去って行った。
夜になり、生存者をバリケード内に集めたとして、タカトットの首脳部が一堂に会した。
「そうか、確認できた限り敵はほぼ壊滅。残党は多くとも十数人だと。」
「ハンターギルド、国営宿を含めて避難者は約7割程であると、まだ市街に生存者がいるかもしれませんが、多くは居ないでしょう。」
「百人程で10倍以上の被害が出るとは、衛士は何をしていたのか。」
「街門担当の話によれば、顔や手の確認は間違いなく行っていたとのこと。また、獣人が壁の上から落ちてきたとの報告があり、外壁を登ってきたと考えられます。」
「あの壁を登るのか……」
「獣人の奇襲による被害は深刻になりつつある。ここタカトットのような街でさえこの始末だ、今回の件は大々的に広げ対応していかなければなるまい。」
「明日の掃討が終了し次第、復興及び他国に連絡しなければ。」
「しかし……私達は勝てるのでしょうか?」
「「「「「…………」」」」」
一堂は一人の少年の様子を思い浮かべた。
「私達は出来ることをするしかないのだ……」
「そうだな、出来ることもしないのでは、頼るべきではないのだ。」
「まだ魔王に殺されていない、生きているのだ。たとえ先が闇だとしても、ここにはまだ灯りがある。」
彼らは、恐怖を持ち、それでも全てを諦めていなかった。




