012 獣戦士ガベー
「逃げたか」
「こっちもね」
五人の内二人が去ったが、戦場の只中であり気を抜くことができなかった。
「ドズは動けるか? ホルフ立て! ここにいたらまた敵がやってくるぞ。」
「腰が抜けて動けないんだ。手を掴んで立たせてくれ。」
「痛くて、よく分からないが、なんとか動ける。でもきっと戦うことは出来ない」
「未熟者が狙われたようだ。シバス、そっちは?」
「興奮しすぎている。反応が鈍いが移動だけなら大丈夫だ。」
「よし、行くぞ!」
移動を再開したものの負傷者と無力感からその速さは落ちていた。
「こいつは……」
「急ぐぞ。」
衛兵の制服を着た死体が見られ始めた。
「この数は………、強いのが居るんだろうな。」
「さっきのだって、決して弱くなかった。どれ程居るんだろうな。」
「十は見た、だから五十から百位だろうか。」
「それでこの惨状かよっ。」
そのまま進んでいると、衛兵の一隊と合流出来た。
「皆さん、無事ですか!」
「A級ハンタージョウズだ。依頼達成後帰還したらこの状態だった。移動している間に何が起きたかお聞かせ願いたい。」
「ジョウズ殿でしたか! 分かりました、本日何が起きたかというと……」
衛兵の話では、最初はただの暴力事件の連絡だったようだ。そして担当が鎮圧に出た後、別の場所から殺人事件の連絡があった、この時は暴力事件の延長で血の気の多いバカの起こしたものだと考えられたそうだ。しかしその後立て続けに届いた連絡から襲撃と判明したものの、初動の遅れと人々の混乱により被害を抑えられなかったということだった。
「今まで被害に遭ったのは、小型の魔獣を倒すのが限界な、警備なんて有って無いような場所ばかりだった。だがここは違う、十分な戦力が有ってこの惨状だ。重いぞ。」
移動を続けて開けた場所に着くと、そこには獣人が一人、足元の死体を引き裂き楽しんでいた。
「お、新しい獲物が来たな。へっへへ。さあ、必死に抗って死んでくれよっ!」
獣人は一気に距離を詰めてきた。シバスが咄嗟に三撃を受け流すと距離を取る。
「おお、すごいすごい。もっと楽しませてくれよ!」
衛兵達が、ある死体を見て、恐怖した。
「ナクータさん……」
「嘘だ……」
名のある人物の死は気力を下げる。シバスは覚悟を決めた。
「ユウキ! 先に行け! アイカ! 頼むぞ!」
「お前らも行け! 邪魔だ!」
「お二人だけなんて……」
「いても死ぬだけだ、強い応援を呼んでくれ!」
「ユウキ! アメリエで話したこと覚えているな!」
「はい!」
「守ってやれよ、行け!」
「シバスさん、お気をつけて!」
ユウキ達が通り抜けようとすると、獣人は怪我をしたドズを狙った。今度はジョウズが守ったが、切り傷が生じた。シバスとジョウズで抑えるうちにユウキ達は見えなくなった。
「あーあ、獲物が逃げちゃった。」
「余裕持ちやがって、他の奴よりも強い。」
「何者だお前。」
「俺か? 俺はガベー。弱い奴をいたぶるのが好きで、お前らより強いだけだよ。」
ガベーの攻撃をシバスは耐えるしかできない。ジョウズが時折攻撃するも、反撃されて重い一撃を当てられない。闘いは完全に拮抗していた。




