010 タカトット国境街
数日後、ユウキ達は目的地である国境の街タカトットが見える距離まで来ていた。
「あの町がそうなのですか?」
「そうだ、あれが我が国の端の一つでありハインバックとの境に位置する、タカトットだ。」
「確か、ハインバックとの合同建設運営なのですよね、聞いていた通りとても広く見えます。」
「タカトットなんて久々だな、正直皇都と比較しても遜色ない程の大都市だ。ハインケル、暫くここに居るんだろ。」
「ああ、国境を越える手続き含めてやるべき事が多い。そうだな、最低でも5日はここに居ることになるだろう」
「よし、旨い飯と鍛練相手に事欠かなそうだぞ。」
「ユウキ殿とリリア様は勇者としてニルヴァ、ハインバックの双方に顔を出す必要があります。心構えだけしておいてください」
「はい」
ユウキは、緊張しながらも新しい都市に心を踊らせていた。シバスやハインケルも人が多く警備も厳重なため気を緩め始めていた。
何事もなく街に入ったユウキ達は、ニルヴァの庁舎に入った。
「お待ちしていました。私がここの長、フーヴと申します。短い間ですが、宜しくお願いいたします。」
ハインケルよりも老いた男が迎え出た。
「早速ですが、予定通りだとハインバック側に伝えました。明日皆様を紹介し、勇者という希望を少しずつ広げて参りましょう」
「……宜しく頼みます。」
「客室は用意出来ています。今日はゆっくりして行ってください。では、私は失礼します。」
フーヴに案内された客室で、恒例となった予定の確認会が行われた。
「ここでの補給はフーヴ殿に頼んである。欲しいものがあれば個々人で購入に向かって欲しい。夕方まではユウキ殿と共に街を散策し、道や雰囲気を知って貰おうと思っている。着いてくる者は居るか?」
「俺はギルドに行ってくる。丁度良い討伐依頼があったらユウキを連れて行きたいからな。」
「分かった他には?」
ユウキ達はシバスを除いて街を散策することにした。
「ここがタカトットか、結構広いな。」
「そうですね、これまでの5指には入りそうです。それに活気もあります。」
耳が隠れる帽子をした彼女達は、とある商隊の一員として街に入った。しかし目的は商売ではなかった。
「この辺りは今まで被害がなかったからな危機感が薄い可能性が高いが、別の要因があるかもしれない。」
「『人々の希望』ですか? 本当に居るのでしょうか? 信じられません。」
「居るさ。前線は拮抗しすぎている。魔王が出ればこの世界の戦士は総崩れだ。だが各国に焦った様子が感じられない。隠しているのさ、どこかに。」
「……もし『希望』が存在しなかったら?」
「その時はその時、私は私のすべき事をするだけだ。」
「……居ると良いですね」
「居るさ。まあ、此処にも居ないかもしれないがな。」
彼女達は露天に商品を並べて、道行く人々を暫く眺め続けた。
「すみません」
少年が髪飾りを手にして話しかけてきた。購入したいようだ。お金を受け取る。
「贈り物かい?」
「はい」
「相手が気に入ってくれたら良いね、私も嬉しくなるよ。」
「ありがとうございます」
少年は去っていった。
「商品を買ってもらうと淋しくなるね。」
「ならば、なにも手作りの物を売らなくとも良いのでは?」
「趣味と仕事さ、仕方のないことだ。」
何人かが同じようにアクセサリーを買って行った。そして日が沈む頃。
「そろそろ、店仕舞いかな。」
「そうですね。片付けを開始します。」
店仕舞いをして、帽子から零れた映える金色の髪をした彼女は夕日を眺めていた。商隊の一人が声をかけようと近づいた。
「夕日は。終わりって感じがするな。」
「……行きましょう。振り返らないと決めたはずです。」
「そうだね、向こうの用意が整ったら始めよう。」
この日、タカトットに異常は見られなかった。




