8・派閥の形成って動きになっちゃった
弓を装備できるようになってご満悦な僕に対し、脳筋エルフさんが言って来る。
「ここではお前の矢をまともに受け止める事は出来ん。これから極大魔法も撃てる大射場へ移動する」
と言って、三人組を追い出し、その大射場へ向かっていく。
「なぜ穴倉が着いて来る?」
と、途中でドワーフを睨むが
「自分の作った魔道具に責任持つのは当然だ」
と、それらしいことを言うドワーフ。
着いた場所は、もはや教会の外ではないの?ココ。部屋に入る様に戸を抜けるとそこは丘陵地帯が広がっていた。
「ここなら心置きなくチビの弓を試せる。見渡す限り教会の敷地らしいから何でもありだ」
そんな風に言うのでお言葉に甘えてと、どれだけ飛ぶのか試してみることにした。
矢を生成して引き絞る。風は丘の影響から複雑な流れを見せ、軌道も遠くなるごとに不鮮明なものへとぼやけていくが、目指す丘まではどうやら届くらしい。
矢を放つと衝撃波が襲い、もはや矢は見える速度を超えている。それでも脳筋エルフは見えるのだろうか、矢を追う様な仕草をしている。
しばらくすると目標の丘に小さく土煙が上がった。
「ほう、これは凄い」
コンパウンドボウの飛距離は1kmを超えるらしいので、このくらいは行けるかなと思ったが、どうやら本当に2kmはあるであろう丘に高威力を維持したまま着弾したらしい。
「コイツはすげぇや。極大魔法でも飛ばせる距離はあの半分もねぇぞ」
と、どうやら自分の作品に満足げなドワーフ。
それからしばらく、脳筋エルフが魔法で出した様々な的を撃ち抜いたり破壊したりして、少しあたりが暗くなったころにようやく今日は終了だと言われた。
「ふむ、その鎧は魔力の補助までしているようだな。普通はこれほど連続して射続ければ魔力が枯渇して立っているのがやっとになるはずだが」
と、きっと僕の魔力枯渇を意図して続けていたらしい。やはり、ダメだコイツ。
そんなことはおくびにも出さずに淡々と挨拶をし、弓を背に装備して宿舎へと向かう。
どうやら今日は既に多くが帰ってきているらしい。
「高鉢、何だよその鎧」
梶にそう呆れられ、
「高鉢が居ないからクリーンで疲れたぁ」
と、柏木にジト目で睨まれた。ただ、それ以上鎧の話題になる事は無く終わり、中には早くも夕食を済ませたメンツも居るのだろう、ホールや飲食スペースは昨日より人が少なく見える。
当然のように今日も虎さんやメイドさんによる冒険者や魔法使いとしてのレクチャーに集まる面々。
そして翌日、大射場へ行くと脳筋エルフが着いて来いと言ってとある建物へと向かった。
そこには梶や楠たちが剣や槍を振るっている。
「あそこにいる奴が指導者だ、ミンナが話を通したと言っている。行けばわかる。終われば大射場である程度練習をしていろ。私はこれで帰る」
と言ってスタスタと出ていくではないか。まあ、もはやそう言うエルフなんだと理解したよ・・・・・・
そう言う事なので、その剣の指導者へと声を掛けると事情は伝えられており、リリーサーから風竜の刀を出現させると、それを見てどうやれば良いか思い付いたのだろう。
「やる事は基本的にカジに近いもので良いな」
そういって、基本的な剣の振り方を教わった後、梶と組んでの稽古を行った。
そして、昨日は食べそこなった昼食を食べに宿舎へと戻り、なぜか楠からクリーンを掛けろとせがまれ、掛けると怒られた。その後、二人は魔法指導を受けに行くと言って別行動。僕は剣の指導を受けるために朝同様に剣の訓練に戻り、昼からは別のクラスメートと稽古をすることになった。
しばらくそうしていると、彼も体術の指導を受けに行くという事で、僕は大射場へと弓の練習に向かう。
そんな事が1週間ほど続いた。
その頃になるとクラスは明確にグループが出来上がっていた。
まずは公立や県外の大学を目指していた「優等生グループ」の8人。2日目には既にその主要メンバーが騒ぐクラスメートと距離を取っていたような気がする。
そしてもう一つが、ヤンキー三人組を中心とする10人。陽キャグループの多くもそこに合流しており、加藤もいつのまにやらそこに居た。
さらに、あまり積極的では無かったクラスメートが10人ほど、グループと言うか、グループ外と言うか、そんな感じで一塊になっている。
あと、柏木を中心として虎さんやメイドさんの元に夕食後に集まっていた「高鉢派」なる存在。梶や楠、栗原にいつの間にか居たDVD君や迷彩服を召還したサバゲーマー。彼ら二人は斥候役であるらしく、本職の虎さんやメイドさんの話を聞こうとやって来ていた。
こうして、クラスは4派へと色分けがなされ、それぞれの交流は徐々になくなっていく。
で、「高鉢派」の中で精霊の加護を持つ僕、火魔法を扱う梶、水魔法の楠、土魔法の栗原と、なんとスカウトが2人もいる上に治癒魔法使いまで居るという、最小グループなのに最大火力を誇る異端が完成していた。
ある意味、異端が他から弾かれ集まった感が無いでもないのだが・・・・・・
ちなみに「優等生グループ」はまさに、テンプレ勇者を目指す状態らしいが、詳細は知らない。「ヤンキー組」は拳闘という前衛と加藤のような後衛の魔法師、治癒魔法師も居るらしい。正直、「残りの人たち」は明確な役割分担もなく、モブ化しているとは、サバゲーマー大池の談である。
一番意外なDVD千葉は親が狩猟免許保持者でそっちの知識があるらしく、虎さんに親近感が沸いたとか。
さらに一週間もすると「優等生グループ」が指導者たちの許可を受けて教会の外へと旅立っていった。僕らは虎さんやメイドさんから具体的な話を聞いて、さらにDVD君と虎さんによる獲物捕獲や解体の話を聞いて現実を知りすぎたためか、技量はともかくすぐに教会を飛び出す決断が出来ずにいた。
先に教会を出たのは「ヤンキーグループ」であり、僕らやモブ組をどこか見下すような目を向けながら出て行った。