表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/51

6・え?鎮西八郎が伝説の勇者?

 そんなワイワイ三人が弓を射ている。


「君もどうかな?」


 というので、弓を取り出すと皆が驚いている。


「見たことない弓だね。まるで伝説の風竜の弓みたいに引けなさそう」


 と言われた。


 よく分からないが、これは元の世界からの召喚品だと伝えると納得してくれる。


 彼らと並んで僕も矢を生成してみる。


 しかし、彼らの狙う的は僕にはわからない。彼らはどうやって同じ的に同じタイミングで当たるように調整してるんだ?


 そうは思いながら、彼らとは別の的を狙う。


 良い音が次々と響き渡り、彼らから声が掛かる。


「元々弓をやっていた?風精霊の加護を持ったとはいえ、その腕前は良いね」


 多分男性であろうイケメンがそう微笑んでくる。負けず嫌いの脳筋と違って人を褒めるという事が出来るんだ。


 などと思っていると、彼らはそろそろ食事に向かうと言ってシュッと弓を消した。


「あの、それはどうやってるんですか?」


 そう聞いてみると、女性であろうエルフが教えてくれた。


「ああ、これ?」


 そう言って左手に弓を出してくる。


「これはエルフの作った魔道具だよ。勇者なら同じことが出来る弓をドワーフの人たちが作ってくれるんじゃない?その弓を見ちゃうとドワーフの弓が見劣りしそうだけど」


 と苦笑しながらいう。そうか、魔道具だから収納できるんだ。


 ちなみに、昨日聞けなかったことを質問したら呆れながら教えてくれた。


 今回召喚が行われたのは、魔物に強力な個体が現れたため、大規模氾濫が迫っているかららしい。昨日偵察から帰った三人の最新情報によると半年ほどで氾濫が起こりそうだとの事だった。


「最善は氾濫以前にリーダー個体を討伐してしまう事。だが、今のところそのリーダー個体の位置は掴めていない」


 との事だったが、それって物凄く差し迫ってない?たった半年で僕らが使い物になるのかな?


「あ~、それは本来、もう少し時間があるという想定だったからね。半年というのは昨日分かった事だよ。昨日以前なら1年は猶予があると思ってたから」


 と、少し申し訳なさそうだ。


 そうだったのか。という事は、今日、明日以降さらにスパルタになるのかも・・・・・・


 そんな話をして彼らと別れてしばらくすると、虎さんがポーションをもって現れた。


「今日は未だ余裕があるようですね」


 シブくそう言ってポーションを渡してくる。どうやら脳筋エルフが男嫌いな事は周知の事らしく、彼はそそくさと射場を後にした。


 さらに暫く後、まず現れたのは脳筋エルフだった。


「もう来ていたのか」


 不機嫌にそう言う脳筋。


 そして、彼女が呪文を唱えて的を片付ける。凄いな、何でもできる万能魔法だ。三人によると能力は申し分なく、今教会本山に来ているエルフの中では最高位のウデではあるらしい。しかし、このように性格に難があるので、との事。


 そろそろ昼だなぁ~と思っていると、ドカドカとドワーフがやって来た。


「おう、持って来たぞ」


 彼の持つ弓と鎧はどちらも青を基調にして光の加減で虹色に輝いている。


「やっと来たか。弓は分かるが、風竜の鎧だと?穴倉はこいつを伝説の勇者と間違えていないか?」


 と、脳筋さんが疑問を口にした。


「ハッハッハ。風竜の弓を持つなら鎧も風竜の革と鱗で作るのが当然だろうが、長耳」


 ドワーフはドヤ顔でそう言う。


「ハッ、穴倉で頭が逝かれたんだろう。伝説の勇者は人の背丈より大きな弓をもっていたからアレで良かったんだ」


 脳筋さんも呆れたように反論する。


「伝説の勇者はそうだったな。風竜の骨と髭を編んだ弦で出来た弓でオーガロードとキングを一撃で倒し、デス・スネークを鱗もろとも貫き、キング・ヒドラを一撃のもとに倒したってくらいだからな」


 何だろう、とても聞いたことがある伝説の人物な気がする。


 そして、ドワーフが下した鎧は、アレは日本の鎧に言えるのは気のせいか?いや、そうだとすれば・・・・・・


「その勇者、為朝って名前じゃありませんか?」


 と聞いてみた。


「タメトモ?さあ?」


 と首をかしげる脳筋。


「たしか、チンゼーハチローと言ったはずだな」


 というドワーフ。


「そうです。鎮西八郎為朝です」


 マジか、日本一の武将って召喚されてたんか・・・・・・


「チンゼーだ、そんな名前だったな。しかし、あの弓は我々でも引けんのだぞ?」


 という脳筋。


「為朝は大男で大弓を扱ったと言われています。その弓も八人がかりで弦を張るほどの剛弓だったという言い伝えが残っていますよ。日本には」


 それを聞いてドワーフは得心が言ったらしい。


「おお、聞いた話に近いな。元の世界で八人がかりの弓を使っていたからと、エルフの弓ではまだ不満だとドワーフに弓を依頼したそうだ。それがあの伝説の風竜の弓だって話だ。そうだ」


 マジかいな。


「あの、もしかして、信長って名前にも心当たりは?えっと、上総の介とか三郎とか」


 そう言うと、驚きの顔を向けてくる二人。


「何?大将軍カズサ―ノスケを知っているのか?」


 という脳筋。


「サブロー将軍か。ヒナワとかいう筒を要求したが誰も実現しなかったという伝承があるぞ。代わりに火魔法で礫や石を打ち出すモノを揃えたらしい。まあ、エルフの弓の方が飛んだみたいだがな」


 おいおい、まさか······


 だから本能寺で遺体が見つからないのか。


「お前の国はどれだけ戦闘部族なんだ?歴史に残る二大勇者がお前と同じ部族だろう?」


 脳筋エルフがそう聞いてくる。


 まあ、それは返す言葉が無い。いや、まだ鬼島津が居ないだけマシな気がしないでもない。


「いや、たしか80年くらい前の勇者も黒目黒髪でチンゼーと同じ様な剣を振るったらしいが・・・・・・」


 と、脳筋が更に何かを思い出したらしい。


「ああ、テンノーバンザーか、たしか、魔物は全滅したが勇者たちも全滅したんだったな」


 うん、それも間違いなく日本人だよ・・・・・・  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読み進めやすく、楽しんでいます [一言] 召喚された旧日本兵たちは万歳突撃で玉砕してしまったんですね、、(悲しい、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ