47・僕の苦悩はこれからだ
脳筋さんのドヤッた態度に促されるように教会モドキへと歩を進める使者。そして中を見た途端
「ウンコマーン殿!これはどういう事でしょうか?」
その問いに体を揺らしたのは首席だった。スンマネンなんてチャチなギャグじゃねぇ、もっと罪深い突っ込みを入れたい気分だぜ‥‥‥
首席は使者の問いに何も応えようとしない。
「そういう事だ。コイツらを生かしておく理由は何も無かろう」
と、ドヤる脳筋さん。しかし、その時、新たな登場人物が現れる。
「まあ、こんなことになるんじゃないかと思ったよ。お手柄と言いたいけれど、これはちょっと‥‥‥」
エルフ3人衆のひとりである。どうやら僕たちが街へ潜入した頃に、先触れとしてやってきたあの使者の後から、正規の使節として街を訪れていたとの事。そのイケメンエルフがやれやれと言った態度で脳筋さんに近づいて来る。
「こんな事とは何だ?イカレ商人の悪事を暴いたぞ」
と、まだ威張っているが、うん。まあ、僕らも同罪ですよね?
エルフ2人と加護持ち召喚者2人という戦力に抗う術を持ち合わせていなかった商都の首脳陣は素直にお縄となった。まあ、すでに政庁の一部は瓦礫だったけど。
正直、終わってみると呆気なかった。もっと何かあるのかと思ったけれど。
その後、氾濫も大規模になることはなく、僕達はケガをすることも無く討伐を終えることが出来た。
それからは僕にとって苦悩でしかない現実が待ち受けていた。
氾濫収束後の僕たちは、再びシルッカへと向かった。あそこが一番良さそうな場所だったからだ。
白川たちはそのままウ―シマッドで過ごしている。王女と結婚した白川や貴族の令息令嬢と結婚してよろしくやっているのだろう。
教会本部に残ったモブたちも生産職として色々頑張っているらしい。召喚や転生にありがちな現代機器を再現する事までは出来ていないらしいけど、発想は大いに役立っているらしい。
そして、シルッカに残ったメンツにも大きな変化があった。
「え?それ、どゆこと?」
栗原がメンバーが足りないので、氾濫討伐でまた犠牲が出たのかと思って聞いたところ、真聖国の武将に狩られたらしい。
狩られたと言っても、討伐されたわけではない。お婿に行ったそうだ。うん?
「巴御前みたいなのが居たんだ。日本よりも女性の活躍してる世界だからそうなるよねぇ」
と、感心する柏木。
そんな事があって、シルッカから真聖国へも一度向かう話も出たのだが、ちょっとそれどころではない事に巻き込まれてしまっている。
「ちょっと待て。どうしてだ?私の何がいけないんだ?」
と、僕らのシルッカ行きについて来た脳筋さんがずっとこんなだ。
氾濫討伐が終ってすぐの事、脳筋さんは「これでしばらくは問題なくなった。では、次の仕事をしようか」とか言って、僕をどこかへ連れて行こうとした。
しかし、その行動は楠に止められる。
「はいはい。ヨンナは最後。どうせ時間はたっぷりあるんだから」
と、さっさと脳筋さんを引き離し、僕たちは今後どうするかという話を始めてしまった。そうそう、僕たちがシルッカを拠点にする理由のひとつ、大池と千葉はさっさとシルッカへ向かったそうだ。そして、楠、栗原、柏木によって僕らもシルッカを拠点にする話を始めた。で、脳筋さんは?
「エルフなんて20年くらい放っておいてもあのマンマだから大丈夫」
という柏木の言葉に他の2人が賛成した事で、シルッカへ行くと決まった。3人はさっさと準備をしてシルッカへ行こうと言い出し、僕も引っ張られるように連れ出されたのだが、すぐさま脳筋さんに追いつかれてしまった。それからずっと「なぜだ」と聞かれる。
「100歳くらい、エルフなら普通だ。チンゼーは大喜びだったというぞ?」
とか言い出す。
「あれか、もしかし、あれか!」
と、柏木の胸を指してそう言う事もあったが、それは柏木だけの話だ。
「ほら見ろ。私をよく見てみろ。エルフだぞ。人族の誰もがうらやむ美形だ」
などとアピールしてくる。うん、口を開かなければ。3人衆のエルフさんと違って口を開くと、とんでもなく残念になるのが脳筋さんだ。
「ヨンナはエルフなんだから、10年や20年待てるでしょ?私たち人間は待てないの」
と言いながら、栗原がいつもの様に抱き着いて来る。
「それだけ毎日抱き着いてるから、めいも後で良いんじゃない?」
と、柏木がイジってくる。楠?呆れたような顔で僕を見てるよ。
こうして僕のハーレムパーティ生活が始まるんだけど、召喚とか氾濫討伐と言った大イベントが終わったのに、なぜか僕の苦悩はこれかららしい。
「楠、助けて?」
そう言って彼女を見るとニッコリ笑った肉食獣がそこに居た‥‥‥




