表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/51

42・その言い方もどうなのかと思うけど

 白川は部隊長や役人たちを待たずに飛び出して来たらしく、僕達へ向かって飛び掛かろうとしている様にも見えた。


「マイは!?」


 白川を見た柏木がそう叫んだことで、飛び掛かろうとしたところから急停止する白川。どこか驚いた様子だ。


「教会は関係していないのか?」


 という白川。それが何のことか僕らにはとっさに理解できなかった。


「お前は何を言っているんだ?」


 空気を読まない脳筋さんが質問の三連返しを行う。白川もそれがどういうことか理解できていない様子だ。まあ、脳筋さんだから仕方がない。


「こちらで得た赤石たちの情報を知らせに使者をウ―シマッドへ走らせたはずだけど、白川のところに連絡は?」


 僕はフリーズしている白川にそう聞いてみた。


「使者?何の?何も聞いていない」


 と言う白川に柏木が畳みかける。


「ねえ、マイは!?」


 それを聞いて白川は思い出したように柏木を見て、首を横に振った。


「そんな……」


 柏木はそれを見て呆然としている。


「米原は光の加護だった。聖女って言うんだろ?俺とは別行動をしていたんだ。教会が裏切ったとか言ってあいつ等が米原と護衛に付いていた加藤を襲って来た」


 え?それじゃあ、加藤も?それを聞いて僕も驚いた。


 白川が僕を見る。そして、何か納得したらしい。


「柏木とお前を見たら嘘じゃないのは分かった。お前らが親友をダシに演技できる訳ないもんな。そうか、嘘ついてるのはあいつ等か」


 どこか落ち着いた様子でそう言う白川。


「ナオも・・・死んだ・・・・・・?」


 僕はそう呟いた。白川は首を振る。


「分からねぇ。俺も話を聞いただけだ。この先にある村へ行ったときに、周りに死人が出る様なデッカイ魔法を撃ち込んで、倒れた二人を連れ去ったそうだ。その時に『教会は裏切り者だ。白川たちに伝えておけ』って言い残したらしい。狙われたのが米原と加藤だったから、まずはお前たちを疑っていた」


 どうやらすでに赤石たちは行動に出ていたらしい。やはり、近いウ―シマッドに居る白川たちを狙ったんだろう。そして、あわよくば白川たちが僕らと敵対するような話まで残して。


「あの野郎は何で俺たち狙うんだよ!同じ召喚者だろうが!!」


 そう叫ぶ白川。


「魔獣の討伐で死んだ奴もいる。それはこんな世界で危ねぇことしてんだから納得するしかねぇのは分かる。それは受け入れる。でも、なんで召喚者を狙うんだ?何で?何の為に!」


 総司教はウ―シマッドへとその理由を知らせる使者を送り出しているが、まだ白川にはその情報が届いていないらしい。


「あいつら、タンペイレンの連中に踊らされてるんだよ。還るには加護持ちを生贄にしなきゃいけないから、加護持ちを狩ってんの。一緒について行った奴の話しも聞いてんでしょ?どうせろくでもない理由で生贄にしてんだよ」


 投げ槍気味にそういう楠。


「何だよ、それ・・・・・・」


 白川はなぜか還れるという話には食いついて来なかった。


「こんなところで立ち話をしても時間の無駄だ。さっさと中へ入れろ」


 しびれを切らした脳筋さんが空気を読まずにそう言った時には、白川を追いかけて来た部隊長や役人らしき人もやって来るところだった。


 やって来た部隊長が役人を脳筋さんに紹介し、素っ気なく脳筋さんとあいさつを交わすと中へと僕らを案内しだす。

 白川も僕らと共にそれに従っていく間に、赤石たちの事や還送魔法陣の話をした。


「そうか、アイツはそんな話を聞いたのか。自分に執着してるあいつ等なら信じるだろうな。俺なんか還ったところで何やるかも分かんねぇからどってでも良いんだけどな」


 そんな事を言う白川。


「あんた王女様と結婚するんでしょ?」


 楠がそんな事を聞く。


「ああ、この国には俺たちを還す方法も、その気も無いって事だな。それがあるから、お前たちの話もすんなり受け入れることが出来る。アイツらに何か言っても無駄だろうな。お前らの犠牲があれば還れると信じてんだから。数人還っただけじゃ大騒ぎになって医者や弁護士がどうしたって、まともに進学できる訳も無いのに分かんねぇのか?ああ、分かんねぇんだろうな。自己中すぎて」


 そう言って僕や柏木を見る。


「なあ、どうすんだ?お前ら」


 白川に聞かれて、すぐにはどう返せばいいか分からなかった。加藤が生きているのか死んでいるのかもわからないんだから。


「ま、アイツらに会えば殴りたくなる・・、弓で射抜くか?」


 そう問うて来た白川の目は真剣だった。その目を見て思った。


「ナオを殺していたらそうする」


 その答えに満足したのだろう、白川はフッと笑った。


 そんな話をしながら歩いているうちに、白川グループの他のメンバーたちがいる部屋へと着いた。


 僕たちを見て一瞬警戒するメンバーたち。しかし、白川が僕らは無関係だと言って何とか少し警戒が薄まった。だからと言って全く警戒されていない訳ではないらしいけど。


 彼らにも再度、赤石たちの会話の内容を伝え、還送魔法陣の説明も行った。多少の温度差はあるけれど、おおむね白川と変わらない反応だ。


「俺たち還せるんなら、王族や貴族をパートナーに寄こしたりしないよな」


 という話も出てくる。ちなみに、今回加藤が随伴していたのはたまたまであるらしい。米原が各地を巡って治療をしているので、交替で護衛やヒーラーが加わるんだそうだ。


「加藤は偶然だけど、米原が狙われたのは確実。加護持ちを狩りに来てる」


 楠が話をまとめる様にそう口にした。


「加護持ちを狩るとは面白いことをやっているものだ。イカレ商人を根絶やしにするついでにひねりつぶしてやれば良い」


 どうやら、脳筋さんはさらに悪いことを考えているらしい。


「弓精殿、もしや、チンゼーやサブローのような……」


 と、恐るおそる役人が訪ねる。


「心配するな。私もこいつ等も国を打ち建てる気などない。イカレ商人とバカどもさえ消えればそれで良い。あとは好きにしろ」


 その言い方もどうなのかと思うけど、別に僕らは新たな国を作りたい訳じゃない。白川たちもそんな事に加わるつもりはないらしい。


「俺たちも国を作るとか、乗っ取るなんて気はねぇ。どうせ、そんなモンどう扱えば良いか分かんねぇからな」


 脳筋さんと白川の話に安堵した顔の役人がそっと離れて行った。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ