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30・とっつきにくいね、あのエルフ

 いつもの不愛想な脳筋エルフ。


「行くぞ」


 そして、何の説明もなく行くってどこへ?


「何をしている。お前も風精霊の加護を持つのだからついてこい」


 と、全く説明なし。


「ちょっと待って。高鉢をどこに連れて行く気」


 僕がやれやれと思っていると、声を上げたのは楠だった。


「何だ?ん?水精霊の加護持ちか」


 と、脳筋さんは興味なさげに楠を見据える。


「どこへ連れて行くの?」


 と、楠が再度聞いた。


「討伐だが?」


 と、当然のように言う脳筋さん。いや、何の説明もなく、さも当然に何言ってんだ・・・・・・


「私もついて行く」


 と言い出す楠。それもどうなん?


「ふむ。水精霊の加護ならば足手まといにはならんな」


 と、簡単に了承する脳筋さんと、唖然とする僕たち。


「え?あ、そう・・・・・・」


 楠の方が面食らってるよ。


「行くぞ、お前たち」


 まったく空気を読まない脳筋さんは僕らを急かす。


「荷物くらい置きにいかないと」


 と、僕が脳筋さんにようやく声を掛ける。


「早くしろ」


 と、ぶっきらぼうに言われた。時間はくれるのか。


 そして、カウンターで確認したところ、エルフたちで例のスライム事件以後に探索して見つけた小規模氾濫源となり得る魔物を討伐に行くのだという話を聞いた。脳筋さんはまるで説明なんかしないが。


 それから急いで部屋割りを行い、荷物を部屋へと置くと、僕は楠に急かされながらエルフたちの待つギルドへと戻った。


「おや?水精霊の子も来るんだ」


 と、あの三人組の1人が話しかけてくる。


「カウンターで聞いたと思うけど、いきなりでごめんね。キミが帰って来たと聞いて、ヨンナが連れて行くって聞かなくて」


 と、三人組の美女が僕に謝って来た。なぜかそれを見て僕を睨む楠。


「遅かったな。行くぞ」


 そう言ってさっさと出発する脳筋さんについて行く僕ら。


 その道中で三人組から説明を聞いて、ようやく今回の事態を把握する事が出来た。


 これまで今回の氾濫源は大山脈だけという想定で動いていたそうだが、スライムが発見されたことでその探査範囲を広げてみたところ、小規模氾濫が同時多発的に起こり得る可能性があると確認されたという。

 そして今回、その原因となるであろう魔物の討伐を行う事になったらしく、教会において風精霊の加護を持つ脳筋さんを主力とするエルフたちが討伐に向かう事になった。

 エルフたちが向かうのはシルッカに連なる山岳地帯。大山脈とは真逆である。


「じゃあ、脅威はスライムだけじゃなかった?」


 本当にびっくりな情報だった。


 そんな話をしながらしばらくは街道を行き、そしてどんどん山へと分け入って行く。そこは獣道があるかどうかすら怪しい場所。そんな場所を何の迷いもなく歩くエルフって・・・・・・

 そして、初日は場所も分からない尾根で野営。


  翌日も道なき道を進むエルフたち。


「よく分かりますね」


 そう尋ねてみると


「エルフだからこのくらいは普通普通」


 と、気楽に返す三人組の美女。


 先頭を進む脳筋さんは枝も魔物も関係なく、鉈の様な武器で払っていく。いや、ホント、払ってる。脳筋さんが先頭でその後ろが三人組のイケメン、そして、楠、僕、美人さんで最後はもう一人のイケメン。僕や楠は何もすることが無い。


 そうやって昼過ぎまで進み、ようやく脳筋さんが立ち止まった。


「アレだ」


 尾根から見下ろしたところに居るのはトロール。


「規模感が分からないかもしれんが、アレで教会の尖塔ていどはある」


 トロールというのは通常、5mほどの大きさを持った巨人だが、教会の尖塔って事はその3倍とかあるって事?山の上からなので規模感が掴めない。


「前回確認された大型は3体だったが、増えているな」


 そう、下に蠢くトロールの数は6体は居る。と、ボケっと眺めていたら1体が倒れる。よく見ると頭を矢が貫通したらしい。


「何をしている。早く殺れ」


 という、脳筋さん。


 言われて僕もトロールを射る。キョロキョロしていたので頭ではなく胴を狙う。うん、一撃で倒せた。


 こちらに気が付いたトロールが叫ぶが、なにせ数百mの撃ち下ろしなので奴らには攻撃手段がない。続けて1体を倒す。脳筋さんも倒している。


 どうやら三人組も急斜面を飛ぶように降りて1体を倒している。さらに三人に迫ろうとしているトロールを倒す。

 ホント、蹂躙という言葉がふさわしいほどあっという間に終わってしまった。


「さて、次だ」


 脳筋さんがそう言って尾根伝いの移動を更に続けようとする。


「次ってどこ行くの?」


 と聞いたのは楠である。


「このまま進んでオーガを討伐する」


 というが、その前に、トロールどうするんだろう?


「アレか?掃除屋共が集まってきている」


 というので見ると、小さな魔物が何処からともなく集まっている様だが、それって放っておくと新たな脅威になるんじゃ・・・・・・


「我らは特異な脅威を排除しているだけだ。大型の魔物は常に生まれている。そうした日常の脅威と対峙するのは麓の冒険者がやる事だ」


 と、簡潔な説明でさっさと歩を進めていく。


「とっつきにくいね、あのエルフ」


 と、楠が僕に言う。うん、その通りなんだ。


 戻って来た三人組が加わり、また尾根伝いの山歩きが続く。


 三人組によると、オーガはほぼ神聖国の領域に居るそうだけど、氾濫の元を断つのに領地だとかは関係ないという事で、討伐に向かうんだとか。   

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