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23・ようやくそれらしくなってきた

 楠が脳筋な事にスライムへと突撃していった。


 だが、物理無効という前評判通りに、全く効いていない。低反発ナントカというCMで見た素材かのように薙刀を受け流している。


「ウォータージェットォ!!」


 と叫びながら超高圧な水の刃が迸るが、それすら体を変形させて受け流してしまった。


「全く斬れないじゃない!」


 と、絶望に打ちひしがれたように叫ぶが、はじめにそう聞いたよね?


 そうはいってもただ見ている訳にはいかないので風竜の弓を構えて矢を生成する。

 矢じりは鏑だけど、脳筋エルフさんが教えてくれた風系魔法である電撃。

 鏑を帯電させて雷を撃ち込む技を試してみる。



 楠が水系魔法で攻撃しているがまるで効いた様子がなく、スライスの口?辺りから触手みたいなモノまで出てきた。


 そんなデカい的へと矢を放つ。


 最強で放ったからパンではなく、ドンという完全に衝撃波が地面のホコリを巻き上げ、辺りへと振り撒く。


 パン


 そんな破裂とは少し違う音がスライスで鳴り響き、命中箇所が眩しく光り輝いた。


 驚いた楠が振り向いて僕を見付けた。どうやらもっとやれって事らしいアイコンタクトを送ってきた。


 2射目が命中した一瞬後に楠が攻撃を加えると、スライスに傷が着いた。

 それを確認して再び振り向く楠。

 もっとやれと。


 3射目もほぼ同じ場所に命中させ、合わせるように楠が傷口を拡げにかかる。



「何だよお前ら。目で語れたのか」


 と、大池が口にする。


「小学校からだから」


 と、僕は大池に返し、4射目を放った。



「ウォータージェット!」


 先ほどはまるで効かなかった技を放つ楠。

 うん、効いてはいるが、いつまで続くの?これ。


 それから10射くらいスライムへと電撃を加え、楠がそれに合わせて傷口を拡げに掛かったが、ちょっとヘコんだだけ。



「キリがないじゃない!」


 と、お怒りの楠だが、ちょっとこれはどうしようもないかも?

 しかし、キッとこちらへ視線を向ける。まだやる気らしい。


 仕方が無いので構えて矢を生成する。

 そして放とうと思った時には既に楠が攻撃態勢ではないか。どゆ事?


「氷結」


 そう言って薙刀をスライムに突き付けたが、凍っているのは薙刀が当たっているごく一部だけ。そして、僕に顔を向けて早くしろと催促してくる。


 仕方が無いので雷撃の矢を放つ。


 もう見慣れた光景がスライムに起こるのだが、その直後、スライムが見る見るうちに白く凍り付いていくではないか。


「何?それ・・・・・・」


 僕だけでなく、獣人たちや大池も驚いている。千葉は何か知ってるのか納得顔である。


「過冷却じゃないか?電撃で一気に凍り出したんだろう」


 と、説明してくれた。


「知ってるのが居たんだ。賭けだったけどね」


 と言いながら、石突きで凍ったスライムを叩く楠。


 すると、スライムは叩かれたところから割れていき、中から水晶球のような物がゴロンと抜け落ちてきた。


「スライムのコア・・・・・・」


 まだ驚いたままのスーケがそう呟いた。


 そう言えば、スライムにはコアがあって、コアを潰すことで倒すんだっけ?手乗りサイズ以下の小型スライムですら至難といわれるそうだが。


「そういや、ほとんど倒す方法がないスライムのコアを回収するってレアなんじゃないのか?」


 と、大池も言う。


「そりゃあそう。だって、コアを潰すのが本来の倒し方だし」


 と、呆れたように答えるバルナ。


「ねえ、これ触って良いの?」


 転がり落ちたバレーボール大もあるコアを薙刀で突きながら言う。


 スーケやバルナも触って良いかどうかが分からないらしく、とりあえず袋で回収することで決まった。


 コア以外の部分については、そろそろ解けて来ているが、そのままゲル状物質を保つ事が出来ずに形を崩していく。


「なんだかこの消え方だけは知ってるスライムみたいだな」


 と、砕けた破片が解けて河原へと浸透していく姿を眺めながら呟く千葉。


 僕はスライムを倒したことでさらに奥へと進むのだと思って奥を見ていたのだが


「こんなのが出たって事をまずはギルドに報告しないといけない。ここで引き揚げて一度帰る」


 というスーケの言葉で撤収が決まった。


 スーケによると、あのスライムはどこか他所からやってきて、ワイバーンの巣を襲い、あそこまでデカくなっていったのだろうという。


「スライムは動きが早い訳じゃない。しかし、夜、静に近づくのを察知して逃げるのも難しいだろうな。そうやってワイバーンを食ってあそこまで育ってしまった。もしかしたらあの一体だけではないかもしれない」


 という話であるらしく、せっかくワイバーンを持ち帰るために雇った運び屋の馬車でただ往復しただけとなった。


 だが、僕らが考える以上の大騒ぎがギルドで起こった。


 例の水晶玉みたいな物は、実は水風船のように柔らかく、それでいて破裂させることが出来ないという、スライムそのままの性質を有している物体だった。

 それを何の気なしにギルドへと持ち込み、神妙なスーケやバルナをあまり気にせず受付へと見せた。


「これがそのコアだ」


 と説明するスーケ。そして、袋から出したコアを見て固まる職員。え?そんなに??


 と、僕らは暢気に他の同級生の安否や成果などに気が向いていた。


「と、とりあえずこれはお預かりします・・・・・・」


 という職員。それで自然と解散になったので、僕らはそこで姿を見つけたモブたちと語らっていたのだが、そう時間も経たないうちにドタドタとギルドマスターがやって来た。


「緊急の探索以来だ!ワイバーンの森を隅から隅まで調べる!スライムが居れば見つけ次第捕獲だ!!」


 と、そこに居る冒険者や僕らに告げた。


 スライムって捕獲で良かったのか。そりゃあ、あそこまで大きかったにもかかわらず動きは緩慢だし、攻撃と言ってもそう遠くまで届く様には見えなかったしな。小さければ皮袋程度でも破って逃げ出す事は無いのかもしれない。


「緊急依頼とか、ようやくそれらしくなってきたな」


 と笑うモブ。うん、確かにそうだね。

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