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22・どうする気なんだ? 

 峡谷へと足を踏み入れたのだが、思っていたのと違ってかなり緑が濃くて河原もある。


「なんだか思ってたのと違うな」


 と、僕と同じことを口にしたのは千葉だった。


「もしかして、激流が谷底を流れる様なとこを想像してた?」


 と、バルナが言う。千葉が頷く。


「さすがにそんな所じゃ狩りは出来ないでしょ。谷は深いけれど、人が住もうと思えば村を作れるくらいの余裕があるからワイバーンだって巣を作るんだよ」


 との事だ。確かに、鳥より大型のモンスターな訳だから、崖に巣を作る鳥類と同一視しちゃダメか。


 そんな事を思いながら進んで行くが、空をワイバーンが飛ぶでもなく、巣らしきモノに出会う事も無い。


「ねえ、こんなに出ないの?」


 と、楠がどこか拍子抜けしたように言う。


「まだ峡谷に入ってすぐだから、そう簡単に見つけられるようならもっとみんな狩りに来てるよ」


 と、バルナは暢気に答えながら歩を進めていく。


 それからさらに歩みを進め、そろそろ峡谷の入り口が小さくにえるほど進んだのだが、未だにワイバーンに出会わない。


 それを不思議に思いながら僕らはさらに奥へ奥へと進んで行くと、谷が枝分かれした場所へと到達した。


「谷が広いのは右側、左は切り立った狭い峡谷になっていく。これまでの捕獲事例は左の谷がメインになってる。ただ、大型のワイバーンを狙うなら右なんだけど、どうする?」


 と、スーケが聞いてくる。


 今回必要なのは弓の基幹部に使う翼の骨というよりは、バランサーやスタビライザーに使う胴や脚の骨なので、小型でも良いと聞いている。


「そりゃあ、大型のワイバーンでしょ」


 と言い出したのは大池だった。ドワーフの話を聞いていたのかな?ギルドへ依頼する際に使う部位やら目的を一緒に聞いていたはずだが?


 そう思ってジッと大池を見ていると、どうやら気が付いたらしい。


「高鉢、分かってるって。でも、削って使うんだから大きさは特に問わないとも言ってたよな?」


 と、そう言って来る。確かに大きさの指定は無かったし、工業製品じゃないんだから、欲しいサイズが手に入るなんて考えても居ないだろう。だからと言って。敢えて必要性が薄い大型を狩りに行く必要があるんだろうか?


「ケンタの言いたいことも分かるが、大型の個体の方が見つけやすいし、この弓でならば当てやすいと思う。小型のワイバーンは体が小さいから弱いという訳じゃない。鱗が薄いが俊敏で当てにくい」


 と、スーケも大池の擁護に回った。まあ、デキてるもんな。


「大きい方がたくさん弓が作れるんじゃないの?爪とか槍の素材にもなるって聞いたし、大き方で良いでしょ。小さいことに拘るな」


 と、楠まで言い出したので、僕らは右の谷へと進むことになった。


 右の谷へと進むともう、入口?平原への出口?は見えなくなっていく。


「おかしい」


 まずバルナがそう言った。


 そして、慎重に歩を進めていくと何かを見つけたスーケも腕を組んで言う。


「やっぱりおかしい。思い違いじゃなさそう」


 と、2人で何やら辺りを警戒している。


 大池や千葉も辺りを探っているが、特に何も見つけることが出来ずにいる。


「特に何もないぞ」


 と、千葉が言う。


「無いからおかしい。これはワイバーンの巣の跡なんだけど。これだけ大きければどこか近場にエサの骨やワイバーンの糞があっておかしくない。巣も古くないのにまるで生活感が無い」


 と、バルナが更なる解説をしてくれる。


 とはいえ、このまま手ぶらで帰る訳にもいかないし、その「何か」が果たして何を指しているのかも探る必要があった。


 そこからは警戒しながら奥へと進んで行くが、やはりワイバーンは飛んでいない。


「巣があったからそろそろ飛んでいる個体が居てもおかしくないはずだけど・・・・・・」


 と、スーケが空を見上げる。


 そして、周辺を探ってみるが、やはり、何もない。2人によると「無さすぎる」らしい。


「ん?あれも巣の跡みたいだが、いや、つい最近まで使っていたように見えるんだが?」


 と、二つ目の巣を見つけてうなり出す。


「もう少し奥まで行ってみようぜ」


 という大池に促されて僕らはさらに奥へと進んで行くのだが、ふと、風の流れに異変を感じた。


「その先に何か居る。それもかなり大きなものが」


 そう、僕が注意を促すと皆が止まり、千葉が警戒しながら曲がった先を窺いに行った。


「おい、なんか壁みたいのが居るぞ」


 と、戻るなりそんな事を言う。そんな千葉に誘導されながら様子を窺ってみる。


 そこにはアメーバのような、ナメクジのような「何か」が居る。まさに壁と言って良かった。


「スライム・・・・・・」


 バルナが小声でそう言った。


 スライムなんてモンスター最弱じゃないかと言いそうになったが、この世界のスライムはそうじゃない。


 日本で知られる肉まんじみた姿とはまるで違い、アメーバ状の生態をし、エサを取り込み肥大化するとより体が形成されて巨大ナメクジ化するらしい。


「スライムって、物理無効で魔法も効き難いとか・・・・・・」


 と、虎さんやメイドさんから習った知識を捻り出して口にした大池。


「しかも、あんな見た目でかなり足が速いとか?」


 と、楠も言い出す。それってヤヴァイじゃないか・・・・・・


 かと言って、ドタドタ逃げるわけにもいかない。そんな事をすれば追いかけられるのは間違いない。


「アレがこの辺りのワイバーンを食ったのか?谷から出てきたらヤベーんじゃない?」


 と、千葉も言う。


「なら、討伐するしかないでしょ!」


 なぜかものすごく乗り気の楠である。どうする気なんだ? 

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