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21・僕は警護要員

 弓を受け取って数日、あの集落よりも近場での狩猟と弓への習熟を行う4人。そして、僕も例のリカーブボウの講評を任されたため、彼らと共にリカーブボウによる狩りを行い。何かあればドワーフの元へと通っている。


 そして、ドワーフと鍛冶王の弓の根本的な違いに気が付いたので、召喚したコンパウンドボウをドワーフへと見せることにした。


「ほう。これが鍛冶王が参考にした弓か」


 そう言って僕が持っているコンパウンドボウを手に取りブツブツ言っている。


「なるほどな。お前の言う『違和感』が何かは分かった。が、ソレは普通の弓より改善されているはずだが?」


 と、リカーブを指して言う。


 確かにそのとおりである。現代アーチェリーは競技に特化して狩猟や戦闘では邪魔になるような装備がいくつも付属しており、それによって振動を抑えたり、狙いやすくしていたりと、その機能はもはや古典的な弓というよりは、銃の考え方に近い。

 それを更に突き詰めたのがコンパウンドボウな訳だが・・・・・・


「確かに、それはそうだと思うけど、このバランサーを再現できれば、よりぶれ難くなるんじゃないかと思ったんですが」


 と、コンパウンドボウのマスダンパー式バランサーの説明をする。この機構は風竜の弓にはない。いや、なくても良い様にコンパウンドボウ特有の構造を更に突き詰めて造られている上、精霊の加護の恩恵もあって、ぶれたりしない。


 ドワーフに僕のコンパウンドボウを射てもらえないかと話をし、実際に試してもらった。


「なるほどな。たしかに、あの4つならばまだ許容範囲だが、ソレはこれを基準にすればダメだな」


 と、ぶれや振動の違いを実感してくれたらしい。


「あの4つについても、コイツの機構が幾つか使えそうだ。材料が幾つか必要だが、ついでに狩って来てくれねぇか?」


 と、相談を受けることになった。


「ワイバーンね。私たちならイケると思う。ケンタも来るなら間違いない。でも、危なくならない限り、そっちの弓を使って」


 と、スーケにはリカーブを使えと言われてしまった。まあ、それはそれで仕方がないのだけど。


「当然、私も行くから」


 と、楠も話に入って来た。どうやらゴブリン事件を未だに引きずっているらしい。


 そして、今回はギルドからポーターも派遣されることになった。これは素材回収として普通の事であるらしく、狩猟と違って運ぶ荷物が多いからだそうだ。


「栗原は来ないのか?」


 そう聞いてみると、今回は梶達のグループと狩りに向かうという。自由というかなんというか・・・・・・


「ワイバーンって弓で狩るんだから、盾役必要ないじゃん」


 と、真っ当な意見があったらしい。もちろん、弓使いではないモブ女子も来ない。


 そんな訳で、今回はポーターが御者をする馬車に乗って目的地へと向かう。目的地はその名も「竜の谷」と呼ばれる峡谷であり、やはりと言うか、一応神聖国領とされている地域であるらしい。


 徒歩ではなく馬車という事もあって、徒歩よりも断然楽だった。速度も速く、夕暮れまでには目的地の入口へたどり着くことが出来た。


「『竜の谷』といっても、ワイバーンの縄張りだから、本物の竜が居る訳じゃないよ。ただ、本当に竜が襲ってくることも無い訳じゃないし、ワイバーンだって警戒してるから、そう簡単には狩れない。それに、硬いし」


 という説明をスーケから受けた。


 それでもワイバーンというのはドワーフ弓の素材としては最良であるらしく。なによりその翼の骨は強さと柔軟性を併せ持ち、木を主材とするより強力な弓が出来るという。もちろんだが、4人の持つコンパウンドボウや僕が預かるリカーブボウの主要素材としても使われている。


「それに、通常の弓より威力が出てるこの弓が本当にどこまで通用するかも知りたいんじゃない?」


 と、バルナが続ける。


 確かに、それもそうだ。風精霊の加護という特殊スキル持ちが持つ「矢生成」によって作り出す魔法矢の威力はとんでもなく高い事から、従来であればドワーフ弓と言えど、威力や射程には大きな開きがあった。


 しかし、コンパウンドボウであれば、それをかなり埋めることが出来ると見込まれている。それに次いで、リカーブでも、これまでの弓より向上していると見込まれることから、それを試す意味でも、今回のワイバーン狩りは大きな意味があるらしい。


「ワイバーン狩りってどうやれば良いんだ?」


 と聞いたのは、千葉だった。


「普通の弓ではワイバーンの皮や鱗は貫けないから、大掛かりなバリスタを持ち込んで飛行経路で待ち構えたり、巣を襲って倒すのが普通だけど、コレなら十分貫通するから低空を飛んでくれさえすれば墜とせると思う」


 というスーケ。


 これまでのワイバーン狩りは、入念に巣の位置であるとか習性を調べ上げて罠を張ったり、警戒していない隙を衝いて襲う必要があったので、狩り自体が数十日単位にもなる長丁場であったらしい。

 しかし、今回はそこまでの必要はないだろうという。


「私たちだけで狩りに来たこと自体が、異例中の異例だから、普通ならこんな少人数で来るなんて、笑われちゃうよ」


 という。確かにそうだろう。数十日かけて調査して罠を張ったりなんて、大人数でやる話になる。


「それで狩れるのが番いの2頭なら上出来、下手したら冒険者に犠牲が出るから」


 というバルナ。だから、僕が最後の頼みなのか。しかし、出来るだけ自分たちのコンパウンドボウで狩りたいらしく、僕は警護要員。あれ?それなら楠は??

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