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20・結局最後はいつも通りになるんだな

 シルッカへと帰還してまず向かったのがドワーフの工房というのは、まあ仕方がない。4人が待ち焦がれた弓が完成しているのだから。


 そして、僕が基本的な扱い方を教え、ドワーフが日常メンテについて説明を終えると、早速試射という話になったのだが、工房にそんな場所は無く、村の外へと向かう。


「その弓、借りても良いですか?」


 僕もリカーブボウを借りて試射について行く。ウキウキしている4人はドワーフ作の矢も手にして随分と上機嫌だ。


「弓の練習はいつもこの辺りでやっている」


 というスーケの言葉を聞いて、街道から外れた草原へとやって来た。

 そこは幾らか灌木が生える場所で、その灌木に的を吊るせば簡単に練習場に早変わり。


 これまで同様に50m程度の距離から、遠いものでは150mまで、結構な距離に的をいくつか設置する。こういうのをやっていると、あの脳筋エルフが凄かったことを実感する。


「コンパウンドボウの公式記録は230mを超えるから、もう少し遠くにも的を吊るそう」


 そう言って、僕は余っている的をさらに遠くまで吊るしていく。


「おいおい、いくらなんでも遠いだろ、アレ」


 たしかに、教会の射場並みの300m近い所にまで的を用意している訳で。


「大丈夫、当てるだけなら出来るはずだから」


 と、みんなを促して試射を始める。


 元々弓を扱っていたスーケとバルナは躊躇いなく遠くの的を狙っていく。さすがに100m向こうの的を射抜く音までは聞こえないか。


 千葉と大池は無難な近場から狙っていくが、ぎこちないながらにしっかり扱えているらしく、大型の的によく当てている。


 それを見て、僕もリカーブを試してみる。どうやら矢生成は弓を選ばずにできるらしい。普通に征矢を生成して射る。

 バランサーも無い狩猟用だからだろうか、ちょっとブレが大きく感じるが、それ以外の問題はなさそうだ。


 最初は30m、次に50m。そして、徐々に伸ばして100mにも当てることが出来た。


 暫くすると、スーケがリカーブを興味深げに見ている事に気が付いた。


「試してみる?」


 そう聞くと、どうやら試したいらしく、手渡した。


 何射か射るうちに感覚を掴んだらしい。100mでも確実に当てていく。結構な腕前をしているんだね。


「この弓も普通のよりも断然に飛ぶし威力もあるね。この風竜仕様には負けるけど」


 という評価をしている。それはそうだよ。アーチェリーは20世紀の技術で作り出した新しい弓を使用してるんだもの。力学とか工学とかいうものが投入されているからそれまでの弓とは性能が違う。たしかに伝統を守るということも大事かもしれないが、新たにその技術を先へ進めることもやって良いんじゃないかな?

 弓は石器時代に生まれて木を用いていたものが更に動物の革や筋、骨を用いて改良された。そして、20世紀に入ると新しい素材が次々と誕生している。グラスファイバーやカーボンファイバーを用いて、さらにエネルギー効率まで考えて進化したのがリカーブボウ。更に数学や工学を用いたのがコンパウンドボウ。戦争で使われなくなった後も進化を続けているのは凄い事だと思う。


 と、しばらく僕らは試射を続けていた。


「お~い!そろそろギルドに帰ってこい!!」


 という声が聞こえて来た。どうやら楠や栗原が待ちくたびれているらしい。名残惜しいがリカーブボウをドワーフへと返し、ちょっとした改良ポイントについて獣人2人が提案しているのを、後ろ髪を引かれながらギルドへと戻ることになった。


 ギルドへ着くと、どうやら一部は狩りに出かけているらしく、モブグループが帰って来ていない。梶のグループも明日には出かけるらしい。


「梶達にも話しておきたい」


 そう言って、集められた僕らは、武士から聞いた話をする。


「帰れないって言ってたもんね」


 と、素直に聞き入れたのは柏木だった。


「帰れる可能性はあるって事か?」


 というのは梶。


「ほとんど仮定の話だけどな。仮に何らかの転移魔法陣を発動させたとして、その先が日本である。いや、地球の地上に出られる保証はないって事だ。何の保証もない片道切符に飛びつくのか、ここで過ごすのかって選択だな」


 と、大池が梶に言う。


 さすがにそう言われては考え込むしかない。


「タイムパラドクスみたいな話だよね」


 と、モブの一人が言う。


「そうね。それに、魔法が使えるって時点で、転移は体の改造まで織り込まれてるってのも怖いんだけど。この世界の環境に合わせた体で、地球で暮らせるのか?それとも、元の体に再生する魔法があるのかも分からないんでしょ?地球に魔素はないからこの体じゃそのうち死んじゃうとかだったら嫌だし」


 という栗原。


「そうだよな。タイムマシーンなら米軍しか運用しないって言われても何も言えないけど、召喚は米軍や自衛隊が関わってるわけじゃない。本当に地球に帰れるなら、政府や軍隊がその情報を抹殺してるって考える方がおかしいよな」


 と、何やら梶も自分の答えに行き着いたらしい。


「ああ、そう言う事。勇者召喚は軍や政府が関わってやってるんじゃなく、異世界の都合なんだから、実際に帰還した奴が居たら誰も知らないはずがないだろう?」


 と、梶に対して大池が賛同する。


 それを聞いて、僕もなるほどなと思った。


「異世界警察なんてSFにすら出て来ないんだから、帰還した勇者が口をつぐむ必要もないね」


 そう言うと、なぜか笑いが起きる。


「そもそも、こっちで結婚したら帰る気も無くなるけどな」


 という、千葉。どうやら栗原の話は正解であったらしい。


「それは帰還魔法がない事のゴマカシだけどな。だが、別に帰れなくても良いし!」


 と、大池も続ける。


「そうそう、せっかくハーレム合法の世界なんだし?」


 と、話しに加わる柏木。


「まりか、限度はあるからね!」


 と、異議を唱えだす楠。


 結局最後はいつも通りになるんだな。 

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