後編
「ギギッ!」
「あわわ……」
一匹のゴブリンを前にして、腰砕けで座り込んでしまっている少年。革鎧を着ており、これでも一応は冒険者なのだろう。もしかすると、初めての実戦なのかもしれない。
音もなく走り出した僕は、一瞬で距離を詰めていた。ゴブリンの背後で、ふわりと舞うようにして剣を振るう。軽くモンスターを始末して、少年のピンチを救うのだった。
「大丈夫だったかい? 君の獲物、僕が横取りする形になっちゃったけど……」
「横取りなんてとんでもない! おかげで命拾いしました!」
「うん、そうだね。これがダンジョン、これが戦場というものだ。冒険者になった以上、君も頑張れよ」
「ありがとうございます。あの、お名前は……?」
「僕は『旋風のジミー』。そのうち、また君とも出会うかもしれない。冒険者なんて、出会いと別れの繰り返しだからね!」
自分でも少し笑いたくなる。
今の僕がしていることは、かつて僕を助けてくれた先輩冒険者の真似ではないだろうか。
久しぶりに十年前の出来事を思い出しながら、僕はその場を立ち去るのだった。
(「冒険者は一期一会」完)




