#94 和解と………
「待って!」
ここにずっといるとすごく気まずいから部屋に戻ろうとしたら結衣に服の裾を引っ張られた。
「………何?」
「うぅ、その…………ごめんなさい!」
振り返ると結衣が急に謝ってきた。
どういう事なんだろう。
「お姉ちゃんに嘘ついたの。結衣には彼女なんていなかったの……」
「へ……?」
結衣に………彼女は出来てない?
だったらなんで帰ってきた時はあんな事言ったの! すっごく悲しかったんだよ!…………まぁ、本当に結衣に彼女が出来てなくて嬉しい気持ちもあるけどね。
「お姉ちゃんにもっとアピールしたくて………楓ちゃんに良い方法ない?って聞いたら『彼女ができたってって言えばお姉ちゃんは、そんな子よりもお姉ちゃんと付き合おうよ! って言ってくれるはずだよ!』って言っててそれで……」
ーー!? 楓ちゃんなんて事を結衣に吹き込んでるのよ!! ていうか、私は結衣に彼女が出来たからってその子から奪おうなんて思いもしないし。なんなら多分彼女ができたとか言われたらさっきみたいにずっと部屋に引きこもってるだろうし。
「それで………お姉ちゃんに謝ろうと思って、お姉ちゃんの好きな甘い物作ってたの」
「そっか……そうだったんだね」
そう言うと結衣は泣き出してしまった。
そっか、結衣はもっと俺に見て欲しかったのか。そっか…………
「ごめんね、結衣。お姉ちゃん結衣のこと何もわかってあげれてなかった。結衣がそんなにも私の事を考えてたなんて思ってもしなかったよ」
「…………」
「結衣はさ、お姉ちゃんと付き合って何がしたかったの?」
「どういう………こと………?」
「結衣は何かお姉ちゃんとしたい事があったから楓ちゃんにアドバイスを聞いてまでこんな事をしたんじゃないの?」
そうでもないと結衣がここまでやる必要はないのだ。
それだったら今まで通り一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり、お買い物に行ったりで十分なはず。それなのに今回は結衣の彼女になるようにアドバイスを貰ってきた。これらをもとに考えると…………付き合ってる同士でしか出来ない事をする為に私を彼女にしようとしてきたのだ。
「う……それは………」
「ほら、何でも言ってみな。お姉ちゃんが詳しく話を聞かなかったのも悪いと思うから、何でも聞いてあげるよ」
「うぅ……怒んない?」
「うん♪」
「お願いを聞いても今まで通り優しくしてくれる?」
「ーー? 当たり前じゃん!」
「じゃあ……」
さぁ、一体どんな“お願い”をしてくるのかな。
「お、お姉ちゃんと………その………したい」
「うん? 聞こえないよ、もう少し大きな声で言って?」
「お、お姉ちゃんと! え……えっちしたいの!!」
「へ……………?」
ゆ、結衣が…………私と…………えっちをしたい!?
「ええぇーーー!?」
〜〜〜お姉ちゃん気絶中〜〜〜
「はっ!? 危ない危ない、小学生からは聞こえてはいけない単語が聞こえてきたような………」
「むぅ! お姉ちゃんどうなの!?」
「ど、どうって?」
「お……お姉ちゃんは結衣とえっちしたい?」
…………幻聴じゃなかった…………お、落ち着け私! 判断を間違えるな、ここでもし『したい』なんて言えば私はこの先一生“ロリコン”というレッテルを貼りながら生きていくことになってしまう。けど…………現役小学生と………こんな美少女と………
「こなくそーー!!」〈バチーーン!!〉
「お姉ちゃん!? ほっぺた赤くなってるよ!?」
はぁ、はぁ………危ない、早くこの会話を終わらせなければ本能が暴走してしまう。
「ゆ、結衣えっちなんて誰から教え込まれたの?」
「えっと………夢未お姉ちゃんと未空お姉ちゃんに教えてもらったよ?」
あんのクソガキどもーーー!! 結衣に何教えてんだよ!! 結衣はまだ小学生だぞ?もし結衣が学校とか街中でそういうのを言ってたら変なお兄さんとかお姉さんが周りに沸いてきちゃうでしょ! まったく、今度会った時にちょっとお説教しないと。
「あっそうだ! お姉ちゃんこれ飲んでみて!」
「うん? 何それ?」
そう言って結衣が渡してきたのは赤と青のカプセルの飲み薬だった。
「これね、怪我が治りやすくする薬って夢未お姉ちゃんが言ってたの!」
「へぇ〜じゃあ飲んでみようかな」
「うん! お水持ってくるね!」
「ありがと〜」
そして結衣が水を持ってきてくれたから飲んでみた。
………う〜ん特に体に変わりは…………ッ!?
「なっなに!? なんか急に………かっ身体が熱くなって!?」
なぜか身体の体温が急激に上昇したような………
「おっお姉ちゃん大丈夫!?」
「はぁ……はぁ………結衣、その薬に入ってたの………見せて」
「これだよ」
絶対におかしい、絶対に傷を治す薬じゃないだろこれ。
そして結衣から渡された物を見て絶句した。そこには………
「媚薬………」
なんで媚薬が!? ていうかなんで夢未ちゃんがこんなの持ってるのよ。そしてなぜそれを結衣に渡したんんだ!?
「びやく? それなに?」
「えっと………それは…………」
これは………どうすべきなんだ? 正直に結衣に教えた方がいいのか、それとも誤魔化すべきなのか。くそっ何かいい案は無いのか!? あっそうだ!
「これは……」
「あっ結衣これ知ってる! 読んでた小説で見た時あるもん! これってえっちする時に使うやつなんでしょ!!」
「ちょっと、結衣?」
そう言うとなぜか結衣は自分の部屋に戻って行った。
よかった、これで結衣に襲いかかるっていう最悪の未来は回避できた……はず。あとは媚薬の効果が切れるまで大人しくしてれば。
「お姉ちゃーん、持ってきたよー!」
「……なに持ってきたの?」
あぁ戻ってきちゃったか、まったく安心できないな。そのまま部屋にいてくれた嬉しかったんだけど……
「これー!」
「ちょっとそれ!!」
なんと結衣が持ってきたのはさっき俺が飲んだものと同じ物だった。
待てよ………なんで結衣は持ってきたんだ?…………まさか!
「結衣! 待って飲んじゃ………」
「えへへ〜いただきま〜す♡」
「まってぇぇーーーーー!!!」
〈ゴクン〉
あ…………終わった…………
「ンッ! ほんとだ、急に熱くなってきた………お姉ちゃん♡」
「な、何かな?」
「いっぱい……シようね♡」
そう言う結衣の顔は真っ赤になっていた。
あれは………お姉ちゃんを見る目じゃない、あの目は人を襲う………目だ。
「ちょっ! ちょっと待っ………!」
「お覚悟ーー!!」
「い、いやあぁぁぁーーーーーーーー!!!!」
【次回予告】お姉ちゃんVS結衣
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