#8 部屋作り(にしたかった)
(そろそろ起きるか〜)
起きるために目を開けると隣に天使のような寝顔で寝ている少女がいた。…忘れてた、今日からは結衣がいるんだった。起こさないようにしないとな。
結衣が起きないようにベッドを出て朝食の準備をする。やべ、昨日色々ありすぎて米炊くの忘れてた。俺はいつも朝は納豆と決めているんだ、だから米が無いとやる気が無くなる。かといって今から炊き始めたら朝ご飯が遅くなってしまう、それに結衣もお腹を空かせてしまうかもしれない。
仕方ない、今日はパンにするか。
「う〜ん」
俺がスクランブルエッグを作っていると結衣が目を覚ました。
「おはよう結衣。ご飯までもう少しかかるから顔とか洗ってきな」
「おはよう…お姉ちゃん」
結衣が眠そうに目を擦りながらベッドから降りる。
「結衣、前みないと危ないぞ〜」
ベッドの前は道具で埋め尽くされていてその状態じゃ危ないと思って注意喚起をする。しかし言った時には既に遅かった。
結衣の膝が机の角に当たってしまった。しかも前を見てない状態でストップが掛からなかったから『ゴン』という凄い音がした。俺はフライパンの火を止めすぐに結衣に駆け寄る。
「結衣!大丈夫か!?」
うずくまっていた結衣の顔を覗き込む。その目には涙を浮かべていたが
「だ、だいじょうぶ、ちょっとぶつけちゃっただけだよ。お姉ちゃん」
明らかに大丈夫ではない音がしたんだけどな、俺に心配させないように無理をしてるのか?
「大丈夫なわけないでしょ!ほら、ぶつけた所見せて?」
「ほんとに何ともないよ、大丈夫だって」
何が何でも隠す気か。ここは大人の力を見せてやるか。
「もう、しょうがないわね!」
「わっ、な、なに?」
俺は座り込み膝の上に結衣を乗せる、そしてぶつけたであろう左のズボンをまくる。するとちょうど膝の所が腫れていて内出血を起こしていた。
「ほら〜内出血しちゃってるじゃない。結衣、歩ける?歩けるならソファーに座って待ってて」
「歩くの痛い」
「それじゃあ運ぶね」
結衣をソファーに座らせてタオルで包んだ保冷剤を持ってくる。
「ほら、内出血しちゃってる所をこれで冷やしてな。そしたら治るから」
「うん…ごめんなさい」
「何も起こってないわよ。ただ…少しはお姉ちゃんを頼ってもいいんだよ?そのために一緒にいるんだから」
「うん…」
「それじゃあご飯の用意するから待っててね!」
今日もやる事はいっぱいあるんだからテキパキ行動しないとね。プレートにパン、スクランブルエッグ、サラダを乗せてテーブルに運ぶ。
「なにかジャム欲しい?」
「いちごジャムが良い!」
「いちごジャムね、結衣はいちごが好きなの?」
「うん!」
「そう、それならいちごジャムいっぱい買っておかないとね」
「「いただきます」」
◇
今日は結衣の部屋に置く家具を買いに行く。
「結衣、準備できた?」
「うん!」
「よし、行こっか」
さっそく家具屋に向かった。そこでは勉強机、クローゼット、ベッドとかを買う予定だ。
「結衣が好きに回って良いよ。‘’これが良い,,って物があったら言って?」
「う〜ん…お姉ちゃんはどんなのが好きなの?」
「そうだな〜お姉ちゃんはやっぱり結衣が良いなって思う物を選んで欲しいな♪」
ここで俺の好みの物を言ったら絶対にそれを選ぶだろうから。やっぱり自分の物は自分の好きな物を選んで欲しい。
「そうなの〜?」
「そうだよ。ほら早く選ばないと、時間無くなっちゃうよ?」
「む〜そんなに急かさないでよー!」
そんな事を言いながらもちょっとだけ早歩きになる結衣。
ベッド売り場を二周ほどした後急に結衣は立ち止まり
「お姉ちゃんやっぱり布団がいい!」
「布団?」
「うん、ベッドだと部屋に合わないな〜って思って、それに今まで布団だったし…」
布団か〜やっぱりあの部屋にベッドは合わないよな〜
「それじゃあ布団を見に行くか!」
「うん!」
少し移動して布団売り場に来た。そこには多種多様な布団が並べられていた。夏場なのにいっぱい種類があるんだなぁ。そんな事を考えながら見て回っていると急に結衣が立ち止まって
「お姉ちゃん、これが良い!」
そう言って指差した方を見ると〈ひんやり涼しい冷感掛け布団(2人用)〉が置かれていた。確かに夏場は熱いからひんやりした物を買うのはわかる。問題は2人用って事だ。なんで2人用なんだ?
「結衣さん?なぜ2人用なんですか?」
「え〜だってこれからお姉ちゃんと毎日一緒に寝るんだよ?だったら2人用買わないとじゃん?」
あれ?俺そんなこと言ったけ?そんな事言った覚えないんだけどな〜
「もしかして忘れちゃったの!お姉ちゃんヒドイ!」
「忘れてないって、お姉ちゃんが忘れる訳ないじゃん!」
あれほんとに俺そんな事言ってたのか。
「…お姉ちゃんってチョロイ」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもない!次見に行こ!」
「そうだな」
布団をカートに入れて次に行く。次は机だ。
「これが良い!」
机は瞬殺だった。子供用の机売り場に来た瞬間に一目惚れしたそうだ。選んだのはよくある勉強机だった、けど普通の勉強机には無い金庫?っぽい物がついてる珍しい机だった。
「よしこれにするか。それじゃあ次はクローゼットだな」
「これは運ばないの?」
「これは重いから会計するときだね」
クローゼット売り場に着いt
「これが良い!」
……さっきから決めるの早すぎない!?ほんとにそれで良いの?
「結衣もう少し見てから決めない?もしかしたらこれより良いのあるかもしれないよ?」
「これが良いの!お姉ちゃんだって『結衣の好きな物を選んで欲しい』って言ったじゃん!」
「そうだけどさ〜」
「これが良いの!!」
「わかったわかった、そんなに大声出さないの。お客さんに迷惑だよ」
「む〜」
「それじゃあ会計しちゃうね〜」
その後に色々あったが無事全部終わった。布団以外は家に送ってもらう事になった、まあ当たり前だな。
「結衣お昼ご飯何が良い?」
家に帰ってる途中で聞く。
「何でも良いよ?」
でた、何でも良い。これ程難しいものは無い。
「それじゃあうどんにしよっかな〜。そうだちょっとコンビニ寄るけど大丈夫?」
「大丈夫だよ」
麺つゆが切れてたから買わないとな。
コンビニに着いて入ろうとしたら店の前でタバコを吸っている金髪で刺青をしている奴に話しかけられた。
「そこの姉ちゃん、今暇?暇だったら俺たちと遊園地で遊ばない?子供も預けられるから姉ちゃんも楽しめるぜ?」
またか。何でこんなにナンパされるのかな?しかも今は結衣もいるからこんな教育に悪そうな人と絡ませたくないんだけど。
「すみませ〜ん今暇じゃないんですぅ。ごめんなさぁ〜い」
いつも通り適当に返して店に入ろうとする。しかしドアの前に男が立ち塞がる。
「そんなこと言わないでさ!俺達と楽しもうぜ〜」
こいつしつこいなぁ。この手の奴らは迷惑ってもんを考えないのか?
「行きません。あなた方と違って私は忙しいんです」
「そんな事言うなよ〜ほらそこのお嬢ちゃんだって行きたいよな?」
そう言って結衣に向かって手を伸ばす社会のゴミ。なにうちの天使に汚らわしい手で触ろうとしてんのよ!急いで男の手を払う
「痛、お前何してくれてんの?」
なんか逆ギレされたんだけど?触れられただけでキレるとかガキかよ。
「汚い手で触らないでくれます?うちの子が汚れちゃうじゃない」
「なんだと!」
そう言って拳を振り上げてくる。馬鹿はすぐに暴力を振るう、勝てもしないくせに。こちらに向けられた拳を受け流し腕を掴む。そして一本背負いをしアスファルトに打ち付ける。
「そこで寝て反省してください。結衣行こっか」
「う、うん」
周りからの目が気になるがそんな事を気にしてたらキリがないからさっさと店で用を終わらせ帰宅する。
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